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  • 2020/07/15

言葉でも数字でもない、「アート」がなぜ企業の価値を伝えるのか

近ごろ、アーティストのような発想で考える「アート思考」という言葉が聞かれるようになったが、そもそもアートとビジネスの関わりについてイメージのつかない人も多いだろう。なぜ今、「アート」なのか。企業ブランドやビジネスそのものをこれまでにない方向に発展させる「ビジネス×アート」、その現在地と将来を本稿では見ていく。

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現代アートとビジネスの接点は?具体的な事例を挙げながら見ていく
(Photo/Getty Images)

※本記事は2020年3月31日開催「SPARK IGNITION #47 ~ビジネス×アート~(主催:イグニション・ポイント)」の講演を基に再構成したものです。


日本では「アート=資産」が浸透していない

 「ビジネス×アート」をテーマにしたディスカッションに、アートフェア東京 マネージング・ディレクター 北島 輝一氏、SMBC信託銀行 プロダクト企画部 アート企画推進担当 岩崎 かおり氏、アートアンドリーズン アシスタントディレクター 和田 悠佑氏が登壇した。

 メインファシリテーターは衆議院議員の鈴木 馨祐氏、ファシリテーターはイグニション・ポイント Experience Design Unit シニアアートディレクター 久保田 裕菜氏、タレント 黒田 有彩氏が務めた。

 まずは、現在のアート市場の状況を見ていくと、2019年の世界における美術品市場は約6兆7500億円(注1)だが、国内は推計2580億円(注2)にとどまる。自身もコレクターであるSMBC信託銀行の岩崎氏は、「世界と日本とではアート市場に格差がある」と語る。

注1:出典=「The Art Basel and UBS Global Art Market Report 2020」UBS
注2:出典=「日本のアート産業に関する市場調査 2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造

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SMBC信託銀行
プロダクト企画部 アート企画推進担当
岩崎 かおり氏
アートコレクター(コレクション歴:約4年、所有数:115点)。世界のアート関係者とのつながりを通じ、海外市場との格差やアートがもっと活性化する余地が大きい国であることを強く感じ、日本のアート市場を活性化するための活動に励む。2018年社内にて行内有志によるアートクラブ発足。2019年SMBC信託銀行日本橋支店にて「アートブランチ」をスタートさせる。

「国内にはコレクターが少なく、売れる価格帯も100万円以下が半分を占める状況です。海外と違い、“アートは資産”という意識が浸透していないのが大きな理由です」(岩崎氏)

 国内最大級のアートの見本市「アートフェア東京」を手がける北島氏も同意する。

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アートフェア東京
マネージング・ディレクター
北島 輝一氏
1974年生。1999年慶応義塾大学院理工学研究科卒、野村證券入社。以後11年間、債券トレーダーとして東京・ロンドンで日系・外資系証券で勤務。2011年より現職。

「海外では、ここ20年ほどでアートがオルタナティブな資産として認知されるようになり、ギャラリーの巨大化、資産ビジネスの巨大化が起きています。その結果、村上隆や奈良美智といった人気作家の作品は資本力の高い海外のギャラリーが扱うよう、変わってきました」(北島氏)

 そもそも、「アートに興味があっても、日常的に触れる機会が少ない」と黒田氏は自身の経験を振り返る。コレクターが少ない背景には、日本のこうした事情も影響しているだろう。鈴木氏は「この状況を変えていかないと、アートを取り巻くビジネスは活性化していかない可能性がある」と問題点を指摘した。

SMBC信託銀行に「アート」、その理由は?

 こうした中、企業がビジネスの世界にアートを取り入れる試みが始まっている。

 SMBC信託銀行は2019年9月、現代アートが生み出す世界観を体験できる店舗「アートブランチ」を期間限定で日本橋支店に設置。世界で活躍する現代アーティストの作品に触れる機会を提供した。

「顧客体験の提供とアート市場の活性化支援を目的に、誰もが無料で鑑賞できる環境を提供しました。お客さまからは『現代アートを初めて見て感動した』『作家のファンになって作品を購入した』という声も届いています」(岩崎氏)

 自社のビジネスと親和性の高いアート作品をオフィスに導入する企業も出てきている。自社に作品を導入したイグニション・ポイント 久保田氏は次のように話す。

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イグニション・ポイント
エクスペリエンスデザイン
クリエイティブディレクター
久保田 裕菜氏
「私たちのビジネスを拡大する上で、感性の共有は重要ですので、当社のビジョンに通じる作品を選びました。言葉や数字で表しきれないコミュニケーションを担うツールとして、アートの力を借りたいと考えています」(久保田氏)

 一方で、オフィスや商業施設のデザイナーがアートに精通しているとは限らない。この問題を解決するプラットフォームを提供しているのが、もう1名の登壇者である和田氏が運営するアートアンドリーズンだ。

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アートアンドリーズン
アシスタントディレクター
和田 悠佑氏
2015年の立ち上げからスタートアップ企業のHuber.へ参画。新規事業開発、プラットフォーム制作の企画・ディレクションを行ってきた。コミュニケーションに強い感心があり、その究極の媒介として「アート」を捉え、アート作品が世の中にもっともっと送り出される仕組みづくりを目指し、2019年より現職。作品提案プラットフォーム「ArtScouter」の開発に取り組んでいる。

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タレント
黒田 有彩氏
「アートの専門家ではない什器メーカーやインテリアデザイナーが、客観的な視点から作品を選べる『アートスカウター』というWebサービスをつくりました。作品を取り扱うギャラリーにとって作品の価値は機密情報にあたるため、契約事業者のみ閲覧可能なサービスとしています」(和田氏)

 アートのECサービスは世界的にも徐々に広まりを見せているが、価格がオープンにできない場合も多いため一般への普及にはまだ壁がある。また、「実物を見ると、インクの付き方やニュアンスはまた違うのでは」という黒田氏の指摘もある通り、実物を見て確かめたいというニーズにどう応えるかも普及に向けたカギとなっていくだろう。

【次ページ】今、現代アートがブランディングに生かされる理由

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