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- 2020/07/21 掲載
リカーリングビジネスとは? ソニーの“ヒットなき復活”の仕組みから解説
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「リカーリング」は古くて新しいビジネスモデル
「リカーリング(Recurring)」は、英語で「繰り返し」「循環」という意味。ビジネス用語としては、モノを売ったりサービスを提供したらそれ1回きりで終わりなのではなく、繰り返し利用されることで収益をあげるビジネスモデルを指す。また、オフィス用のコピー機本体の価格を下げ、インクや用紙の販売で継続的に収益をあげる「ゼロックスモデル」もリカーリングだ。どちらも、替え刃やインク、用紙の提供を通じ、ユーザーがカミソリやコピー機と長期的な関係を築くビジネスである。
日本でも、家庭に薬を置いて使った分だけ後で集金する「富山の置き薬」は、顧客と長期的な関係を築いて収益を得るリカーリングの考え方に基づいていると言える。また、茶道の師範が茶道具を、華道の師範が花器や花を、日舞の師範が着物や和装小物の推奨販売で収益をあげるのも、弟子との長期的な関係を基盤とするリカーリングビジネスだ。
さらに例を挙げれば、マンションデベロッパーの子会社にマンション管理会社がある背景には、分譲後に月々の管理費からリカーリング収益を得ようという意図がある。リカーリングビジネスの範囲は非常に広く、電気・ガス・水道・電話代も、ロボットやエレベーター、医療機器の保守料金も「長期的な関係に基づく継続的な収益」に相当する。
前途洋々のサブスクもリカーリング
「定額制」でモノやサービスを利用する「サブスクリプション(サブスク)」は、日常生活でかなり定着してきたが、これもリカーリングビジネスに含まれる。たとえば、「Spotify」「Apple Music」のような定額ストリーミング音楽配信サービスは、ユーザーがCDや楽曲データのダウンロードで楽曲を「所有」していなくても、定額料金で好きな曲を好きな時間に何度も繰り返し聴いて「利用」できる。
そんな「所有から利用へ」というコンセプトは、サブスクリプションやシェアリングのコンセプトであるとともに、リカーリングの本質的な価値だ。
ICT総研が2020年2月に発表した「2020年 サブスクリプションサービスの市場動向調査」によると、2017年に8,720億円だったサブスクリプションサービスの国内市場規模は、2年後の2019年には31.1%増の1兆1,440億円に伸びた。
さらに2023年までの4年間で25.6%成長し、市場規模は1兆4,370億円に達すると予測されている。中でも伸びが大きいのは音楽配信、動画配信などのデジタルコンテンツで、2019年の4,050億円から2023年の5,570億円へ、37.5%成長すると見込まれている。
「所有から利用へ」で現代人の心をつかんでいるサブスク、シェアリングを含むリカーリングビジネス全体も、将来の成長性があることは疑いないだろう。すでに、リカーリングによって業績が回復した有名企業がある。それは他ならぬ、世界のソニーだ。
【次ページ】ソニー復活の原動力2つとは? ゲーム部門の大きな柱は「会費収入」
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