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  • 2020/06/17

コロナ禍で暴かれた、フリーランスやダブルワーカーの致命的な問題点

ギグ・エコノミーはオワコンか?

ほんの少し前まで「これからの働き方」として脚光を浴びていたギグ・エコノミー(ギグ=単発の仕事をネットを通じて受注する働き方のこと)。ところが新型コロナウイルスの流行により、その脆弱性がさらけ出された。もちろん、Uber Eatsのようにコロナ禍の中で成長したギグ・エコノミーも存在するが、その継続性には疑問が持たれているものも少なくない。さまざまな問題を考慮すると、ギグ・エコノミーの隆盛は早くも終焉を迎えたのだろうか。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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コロナ禍で食品デリバリーサービスは大活躍したが…
(Photo/Getty Images)

ギグ・エコノミーは大きく2種類に分類される

 ギグ・エコノミー、ギグ・ワーカーという言葉がポピュラーになったのは恐らく2016年頃と思われる。世論調査会社、ギャロップによると2018年の時点で何らかの形でギグ・ワーカーとして働いていると答えた米国人は36%に上っていた。内訳を見ると、フルタイムの仕事をしながらサイドワークとして働いている人が24%、パートタイム・ワーカーでは49%がギグ・ワークに携わっていた。人口にすると、米国ではおよそ5700万人だ。

 ただし、ギャロップではギグ・ワーカーには2通りのものがあるとしている。

 1つは独立したギグ・ワーカー、すなわちフリーランスと呼ばれる働き方をしている人々だ。小規模の起業をしている人、映画などのエンターテインメント産業で働く人、IT関連などが多い。もう一つは偶発的ギグ・ワーカーと呼ばれる、生活のためにダブルワークをしたり、あるいは正規の雇用が得られるまでのつなぎとして働く人々を指す。ここにはUberなどのライドシェアのドライバーなどが含まれる。

 ギャロップがそれぞれのギグ・ワーカーと普通に雇用されている人々の職に対する意識をまとめた表が興味深い。

 「自分の職場に属している意識」「仕事への情熱」「自立性と権威」「クリエイティブ・イノベーティブ」「フィードバックの受け取り」「管理されたパフォーマンス・メトリック」「目標設定の共有」「安定と安心」「報酬への動機づけ」「報酬への満足度」「ヘルシーなワークライフバランス」「時間の融通」「柔軟性」というすべての項目において、独立系ギグ・ワーカーの数値が最も高い。

 唯一伝統的なワーカー(一般的な雇用者)が高いのは「報酬のタイミングと正確さ」であり、サラリーを確実に受け取れることが雇用されるメリットであることが明らかだ。一方で偶発系ギグ・ワーカーはすべての数値が低めになっている。

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2種類のギグ・ワーカーと伝統的なワーカーの各項目に対する満足度(2018年8月実施調査)

 つまり、そもそもとして、ある程度能力があり、独立して好きな時間に働き、それなりの報酬を得ることができるギグ・ワーカーと、生活のために仕方なく行うギグ・ワーカーの間には大きな差があったことになる。


コロナ禍で最もダメージを受けたのはギグ・エコノミー

 しかし、ここで興味深いのは、このどちらもコロナウイルスにより大きな打撃を受けているという点だ。

 まず、両者とも雇用されていないという点で失業保険の申請などが不利になる。多くが個人事業主であり、店舗などを構えていることがまれであるため、小規模ビジネス向けの低金利ローンなども申請しにくい。健康保険についても雇用者が提供する保険を持たないため、中には無保険のままの人もあり、コロナウイルスに罹患(りかん)した場合の医療費が高額となる。疾病休暇などにも当然、該当しない。

 もちろん、一部のギグ・ワーカーはコロナウイルスにより仕事が急増している。Uber Eatsなどの食品デリバリー、アマゾンその他のデリバリーの個人請負、さらにスーパーマーケットやウォルマートなどの一部小売店の臨時職員などだ。

 ただし、これは一時的なもので、ロックダウン緩和が進み、レストランなどが再開されれば食品デリバリーの需要は激減すると考えられる。一般デリバリーは米国ではネットショッピングが急増したため遅延が生じるなど、今後も需要が見込まれるが、徐々にドローンや自動運転によるデリバリーが普及すればやがてその需要も消滅するだろう。スーパーの臨時職員も同様だ。

 WEF (World Economic Forum)によると、コロナ禍で最もダメージを受けたのはギグ・エコノミーという。対象は米国だけではなく世界中だが、68%もの人が「収入を失った」と回答した。また仕事そのものを失った人は52%、仕事はあるが働く時間が大幅に減少した、という人が26%。そして全体の89%が「あらたな収入源を求めている」としている。しかもある程度の蓄えがある、と答えた人は23%に留まっている。

【次ページ】増えたギグ・ワーク、減ったギグ・ワーク

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