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- 2024/06/21 掲載
薬剤師は本当に“いらない”のか? 実は「医療DXの主役」と言える意外な理由
薬剤師の「主な仕事3つ」
薬剤師は不要──そう思われてしまう事情は次のようなものでしょう。医師から「今回はこの薬を出しましょう」と処方薬の説明を受けた後で、患者は薬剤師からも再び同じ説明を受けます。ここで「あーハイハイ」と聞き流す患者は少なくありません。そもそも医師の指示で薬を出すだけの薬局で、なぜ待ち時間が発生するのか? 右から左へ薬をわたせばいいのでは?……など、利用者目線で考えると不可解な点があるのです。
ここでまず、薬剤師の仕事について整理します。薬剤師は決して「処方箋どおりに薬をわたす存在」ではありません。患者から見るとそう受け取られてしまうかもしれませんが、薬剤師も「人の命を預かる」重要な使命を背負っています。この使命を果たすために、薬剤師は主に次の3つの仕事を行います。
- 処方箋の確認
医師が記載した処方箋を確認する段階で、薬剤師は「薬の名前、用量、用法」などが正確に記載されているかをチェックします。 - 患者情報の確認
患者の既往症やアレルギー情報、そしてほかに服用している薬との相互作用などを確認します。処方された薬が、その患者にとって本当に安全かどうかを評価するのです。 - 薬の調剤
処方された薬を正確な量で準備し、場合によっては薬を分割したり、特定の形で個包装をしたりします。この工程は正確さを要するため、時間がかかることがあります。
薬剤師の仕事はIT開発でたとえるなら、既存のシステムに追加開発をするとして、「1.要件の検証」→「2.既存部分への影響確認」→「3.実装」のような流れであると言えます。
医師と薬剤師の関係は?
医師は一般的に「治療のすべてを行う人」と考えられがちですが、実際にはさまざまな専門分野に分かれており、各分野で異なる役割を担っています。たとえば、内科医や外科医、麻酔科医、研究医など、それぞれの専門領域に応じて診断、治療、手術、研究などの役割を果たします。また医師は治療の全体像を把握する役割を持っており、IT開発で言うならばPM(プロジェクト・マネージャー)のような立場に相当するでしょう。
医師と薬剤師の関係は、薬剤に関するPMとエンジニアのそれと似ています。PMは技術に関する知識をある程度は持っていますし、それゆえにプロジェクトを円滑に進めることができます。ですが、より専門的な内容は、エンジニアのほうが最新の技術情報も踏まえて詳しく知っています。
これと同じで、医師は薬剤のすべてを知っているわけではないのです。多忙な環境では、新しい薬剤や副作用に関する最新情報をキャッチアップすることは難しい場合もあります。一方で薬剤師は、薬物治療の専門家ですから、最新の薬剤情報や薬の相互作用についての知識が豊富です。
ただ、「PMと同じ内容をエンジニアが話しているじゃないか、薬を調剤してただわたしているだけじゃないか」などと思うかもしれません。この点についても解説します。 【次ページ】薬剤師は本当に「調剤してわたす」だけなのか?
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