再生医療市場の最新動向

　再生医療分野は2005年に始まって以来、重要なマイルストーンの設定と画期的なブレークスルーを繰り返してきました。その方向性は、内因性の成長または修復プロセスの利用・刺激・誘導・置換といった、具体的な技術の進歩度合いに依存しています。

　絶え間ないイノベーションによって形作られる時代において、再生医療分野は、さまざまな健康上の課題に対して、新しい解決策を提供する希望の光として浮上しています。Mordor Intelligence社のレポート「世界の再生医療市場 2024-2029」によると、この市場は2024年に386億5,000万米ドル規模に到達し、2029年には1,157億5,000万米ドル規模に急成長する見込みです。

　この急速な成長は、再生医療分野が計り知れない成長の可能性を秘めていることを意味しています。バイオテクノロジーの進歩と細胞メカニズムの解明は、医療の提供に革命をもたらすと期待されているのです。

　組織工学のための3Dバイオプリンティング技術の導入から個別化再生療法の台頭まで、市場は個別化された高度な治療法へシフトしつつあります。その中でも特に、整形外科・心血管系・神経変性疾患における幹細胞の研究とその応用が、市場拡大の主要な推進力として関心を集めています。

　再生医療革命の中核には、最先端技術と急成長する研究イニシアチブの融合があります。さらに、幹細胞技術・遺伝子治療・組織工学は、政府による支援政策や技術革新を促進する規制によって後押しされ、この急成長市場の柱となっています。

　ここでは、進化を続ける再生医療市場において、その軌道を形成している注目すべきトレンドと主要な企業について見ていきます。

再生医療市場の最大の柱「幹細胞治療」

　幹細胞治療は、神経疾患や造血器疾患の治療を大きく変える治療法です。

　幹細胞移植は、失われた細胞を置き換えるだけでなく、生体組織にシームレスに統合することを目的とした細胞の移植を含みます。この革新的な治療法は市場を席巻し、再生医療市場の中でも最大の柱として、2024年までに152億米ドルの規模に達すると予測されています。

　研究チームは幹細胞治療について、神経疾患や造血器疾患に対する新たなアプローチを提供する治療法であることを明らかにしています。また、共同研究により、市場の拡大や治療アプローチの再構築においては、成体幹細胞が大きなカギを握っていることが明らかになっています。

　何十年もの間、幹細胞治療といえば骨髄移植や表皮移植が中心でしたが、近年では実験的な治療法が臨床において飛躍的に進化しています。今では幹細胞に基づいた医療が確立され、より広範囲の疾患に対する治療法としての発展も期待されています。

　幹細胞移植は、脳神経細胞や膵臓のβ細胞などの損傷した細胞を置き換えることを目的としており、移植された細胞は、分化した組織にシームレスに統合される必要があります。

　あるいは、幹細胞は栄養を補助したり、免疫を調節したり、可塑性を媒介したりする場合もあります。なお、これらの機能は多くの場合、特に実際の患者においては定量化することが困難です。

　特に、同種細胞移植は、広範囲に拡大・拡散できるため、潜在的にスケールメリットがあります。従来の製薬モデルに似たこのバイオマニュファクチャリングのアプローチは、過去10年間に製薬業界から多額の投資を集めました。


　その結果、カリフォルニアに本社を置くGeron社や英国に本社を置くReNeuron社など、有名企業がこの方法を採用しています。ただし、同種細胞移植では移植患者がドナーの細胞を「自分のもの」と認識しないため、免疫拒絶の反応を示すリスクが高まるのも特徴です。

　こうした動きから、同種細胞移植のモデルの進化は難しく、比較的緩やかに成長する分野ともいえるでしょう。

【次ページ】J＆J、アステラス製薬など幹細胞治療をリードする企業は？