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  • 2020/06/24

なぜ「Tik Tok」は広告収入の効率が良いのか? その秘密は「おすすめ」

連載:中国イノベーション事情

今や世界中にユーザーを抱えるショートムービー投稿アプリ「Tik Tok(ティックトック)」の提供元である中国の字節跳動(ByteDance:バイトダンス)の勢いが止まらない。同社の中国国内のネット広告市場におけるシェアは拡大中で、阿里巴巴(Alibaba:アリババ)に次ぐ第2位へと躍進している。バイトダンスはなぜ、莫大な広告収入を生み出せるのか? その秘密に迫る。

ITジャーナリスト 牧野武文

ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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バイトダンスの原動力とは
(Photo/Getty Images)

バイトダンスを中心に回り始めた中国ネット広告業界

 日本では、ショートムービー投稿アプリ「Tik Tok(ティックトック)」で名前が知られるようになった中国の字節跳動(ByteDance:バイトダンス)のネット広告収入が1,200億元(約1.8兆円)に達した。中国のネット広告市場では、検索広告大手の百度(Baidu:バイドゥ)を抜き、阿里巴巴(Alibaba:アリババ)に次ぐ第2位へと躍進している。

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中国のネット広告市場のシェアを2016年と2019年で比較したグラフ。バイトダンスの2016年のシェアはわずか3%だったが、2019年は21%にまで拡大している。一方、検索広告大手の百度(バイドゥ)はシェアを大きく落としている
(出典:「現象級流量、現象級商業化効率」(国盛証券)より筆者作成)

 バイトダンスは、中国版Tik Tok「抖音(ドウイン)」やニュースキュレーションアプリ「今日頭条(Jinri Toutiao:ジンリートウティアオ)」などのヒットアプリを連発していることもあるが、広告コンバージョンが頭抜けて高い。広告収入効率は、中国の動画共有サイト「bilibili(ビリビリ)」の9倍以上だ。

 なぜ、バイトダンスの広告コンバージョンはそれほど高いのか? その秘密は、バイトダンスが核心技術としている「リコメンド技術」にある。


バイトダンスが成功した礎

 日本のTik Tokは、「若い女性や著名人がダンス系の映像を披露するサービス」というイメージが強いが、中国本家のドウインは、ニュース映像やグルメ映像、スポーツ映像、ビデオブログ系映像なども投稿され、老若男女が利用するショートムービーのプラットフォームになっている。ドウインのキャッチフレーズは「美しい生活を記録しよう」だ。

 バイトダンスは、Tik Tok以前にもジンリートウティアオがヒットし、こちらも老若男女が利用する国民的なアプリになりつつある。バイトダンスの広告収入が大きく伸びた要因は、このようなアプリのヒットだけではない。ネット広告の仕組みを大きく変革し、高効率で必要な人に必要な広告を配信することを可能にし、驚異的なコンバージョンを生み出していることも大きい。

バイトダンスの主要プロダクト
中国版 MAU(億人) 海外版
ニュース 今日頭条 2.6 TopBuzz
動画 西瓜視頻 1.3 BuzzVideo
SNSショートムービー 抖音 4.8 Tik Tok
SNSショートムービー 火山小視頻 1.0 Hypster

 バイトダンスでは「ユーザー流量×コンバージョン」という方程式の両方の項を大きくすることに成功をしている。この領域でイノベーションを起こしたことが、同社の成功の礎となっているのだ。では、その革新的な「リコメンド技術」とはどのようなものか、説明しよう。

従来のリコメンド技術の限界

 リコメンドの最もシンプルな実現方法は「統計情報に頼る」ものだ。アマゾンの「おすすめ商品」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」、音楽や映像のストリーミングサービスの「あなたにおすすめ」などが該当する。

 しかし、この手法には「ヒット精度に限界がある」という問題点がある。なぜなら、生活必需品を買う時と趣味の商品を買う時ではサイト内での行動が変わってくる。その違いを認識することは難しく、利用者から見ると、見当外れの商品が薦められてしまうことがしばしばある。

 そこからさらに進んで「SNSによるソーシャルグラフを利用する」という考え方も登場した。SNSのフォロー・フォロワー関係は、趣味やライフスタイルが似ていることから、そのソーシャルグラフに沿って適切な広告を配信すれば、高いコンバージョンが得られるはずだった。

 しかし、必ずしも理想的には進んでいかないのが現状だ。人がフォローする人を選ぶ時は、趣味やライフスタイルだけでは選ばないからだ。「有名人だから」「会社の同僚だから」など、さまざまな理由でフォローするため、ソーシャルグラフの冗長度が高くなってしまい、広告の最適配信にも限界が生まれる。

 バイトダンスは、この「人に商品を薦める」という発想を、「商品に人を薦める」という発想に変えた。

【次ページ】バイトダンスの「商品に人を薦める」という逆転の発想

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