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  • 2020/07/12

『ジョブ理論』をやさしく解説、イノベーションには「成功のパターン」がある

イノベーション創出に苦しむ企業は多いが、幅広い企業・団体の新規事業開発支援を行う永井 孝尚氏は「イノベーションは顧客ありき」と強調し、まず顧客理解を徹底する必要性を説く。そして、同氏がその顧客理解のヒントとなる書籍として挙げるのが『ジョブ理論』だ。著者のクレイトン・クリステンセン氏は『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』を著したイノベーション研究の第一人者である。イノベーションの成功パターンを示した本書のエッセンスを、永井氏が解説する。

ウォンツアンドバリュー 代表取締役 永井 孝尚

ウォンツアンドバリュー 代表取締役 永井 孝尚

慶應義塾大学工学部(現・理工学部)を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。さらに仕事で役立つ経営戦略を学ぶための「永井塾」も定期的に主宰している。 主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)ほか多数。

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「イノベーションのジレンマ」の著者が記した名著を解説
(Photo/Getty Images)

※本記事は『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』を再構成したものです。


顧客はどんな「ジョブ」を片付けたいのか?

 世の常識を次々と破壊する人を「イノベーター」と呼ぶことが多い。中には「オレはイノベーターだ。常識外れのむちゃな挑戦をする」と考え、そう振る舞う人もいる。しかし単にむちゃをするだけでは、成功確率は低い。実はイノベーションには、成功パターンがある。これが分かれば成功を運任せにする必要がなくなる。

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『ジョブ理論』
クレイトン・クリステンセン
※画像をクリックすると購入ページに移動します

クリステンセンはハーバード・ビジネス・スクール教授。「破壊的イノベーション」の理論を確立させた、企業におけるイノベーション研究の第一人者。ハーバード・ビジネス・レビュー誌の年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社など複数の企業の共同創業者でもある。「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50) の1位に2度選出。
 本書でクリステンセンは、運任せにせずにイノベーションを起こす方法を紹介している。それが「ジョブ理論」。「ジョブ」とは「顧客が片づけなければいけないこと」だ。

 ジョブ理論は「ジョブ」「雇用」「解雇」という独特の言葉で商品を買う理由を考える。わが家はマンションの1階だ。庭の雑草は生え放題。管理人さんからは「手入れしてください」と言われている。この「庭の手入れをしなければならない」が「ジョブ」だ。

 しかし私は庭仕事が大の苦手。私が庭の手入れをやらないので、見かねた妻が専門の庭師にお願いしたら、短時間できれいサッパリ雑草がなくなった。しかも庭一面を人工芝でカバーし、草が生えないようにしてくれた。わが家では草むしりの「ジョブ」から私はめでたく「解雇」され、庭師が「雇用」されたのだ。ジョブ理論ではこのように、顧客の立場に立って次の質問を問い続けていく。

「どんな『ジョブ(用事)』を片づけたくて、あなたはその商品・サービスを『雇用』するのか?」

 この「ジョブ・雇用・解雇」というたとえは、日本人には馴染(なじ)みにくいものだ。米国企業では、新しい仕事が発生するたびに、そのスキルを持つ人を雇用する。その仕事が終わると、解雇される。ジョブ理論は、この米国流の仕事方法にたとえたものだ。


イノベーションには成功パターンがある

 事例で考えると分かりやすい。米国のある大学は、全米2番手グループの大学だった。「美しいキャンパス、手頃な学費、充実した教育」という売り文句で生徒を募集したが、反応は今ひとつ。ジョブ理論を学んだ学長は、「学生がこの大学を雇用して片づけたいジョブは何だろう?」と疑問を持った。

 入学希望の高校生に聞くと、キャンパスや学費、教育には関心はなく「応援できるスポーツチームはあるか?」「人生の意味を話し合える先生と交流する機会はあるか?」という質問ばかり。ここにはライバルがたくさんいる。競争が厳しいのは目に見えている。

 一方で、大学にはオンライン通信課程もあった。ほぼ放置していたのに学生が来ていた。さまざまな事情で大学進学せず社会人になった人たちで、仕事や家庭と両立して学んでいた。平均年齢30歳。彼らの声はこうだった。

「生活レベルを向上させるために、立派な学歴がほしい」

 彼らは、利便性・サポート体制・資格取得・短期終了を求めていた。同じ悩みを持ったまま教育を受けずにいる人も多かった。そこでこの大学は、オンライン通信課程を強化した。それまで問い合わせが来ても放置していたが、24時間以内に担当者が折り返し電話するように変えた。通信課程の学生ごとにアドバイザーを付け、社会人が学ぶ必要性を訴える広告も出した。

 10年後の2016年、この大学の売上は5億4000万ドル(600億円)。年平均売上成長率は34%。「米国の中でもイノベーションに富んだ大学」と評されるまでになった。顧客の「片づけたいジョブ」を見つけ、解決策を提供して「雇用」され成功したのだ。

【次ページ】「ジョブ」と「ニーズ」の違い

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