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  • 2020/10/09 掲載

マス・カスタマイゼーションとは何か? アディダスら事例でわかるモノづくりの新常識

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マス・カスタマイゼーションとは、生産や販売のボリュームを活かしつつ(大量生産)、個々の顧客のニーズに合わせた製品・サービスを販売すること(カスタム化)です。今回は『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』を上梓する根来 龍之氏、富樫 佳織氏、足代訓史氏の3氏に、アディダスやフクルらの事例をもとに同キーワードを解説してもらいます。

早稲田大学ビジネススクール 根来龍之、愛知淑徳大学 富樫佳織、拓殖大学 足代訓史

早稲田大学ビジネススクール 根来龍之、愛知淑徳大学 富樫佳織、拓殖大学 足代訓史

根来龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授
京都大学文学部卒業(哲学科)。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、現職。早稲田大学IT戦略研究所所長。早稲田大学大学院経営管理研究科長、米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、経営情報学会会長、エグゼクティブ・リーダーズフォーラム代表幹事、CRM協議会副理事長、国際CIO学会副会長(同学会誌編集長)などを歴任。主な著書・共著に『集中講義 デジタル戦略』、『プラットフォームの教科書』、『ビジネス思考実験』、『事業創造のロジック』(以上、日経BP)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)など。監訳書に、『対デジタル・ディスラプター戦略』、『DX実行戦略』(M・ウェイド他著)、『プラットフォーマー 勝者の法則』(B.レイエ他著)(以上、日本経済新聞出版)などがある。

富樫佳織(とがし・かおり)
愛知淑徳大学准教授
学習院大学法学部卒業。早稲田大学商学研究科修了(MBA)。NHK(日本放送協会)ディレクター、放送作家(フリーランス)、WOWOWでのプロデューサーを経て2017年から現職。放送局勤務時代に携わった主な番組は、『世界一受けたい授業』『世界遺産』『十八世中村勘三郎ドキュメンタリーシリーズ』『WOWOWオリジナルドキュメンタリーシリーズ ノンフィクションW』など。受賞歴に、高柳財団第41回科学放送高柳賞企画賞、第2回衛星放送協会オリジナル番組アワード中継番組部門最優秀番組、WOWOWで放送された『Blueman Group Connect to Japan』で第40回国際エミー賞アート番組部門ファイナリスト等。著書に『やわらかロジカルな話し方』。メディア企業のデジタル戦略、ビジネスモデルとマーケティング戦略を研究分野としている。

足代訓史(あじろ・さとし)
拓殖大学商学部准教授
早稲田大学商学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。日本総合研究所(研究員・経営コンサルタント)、早稲田大学商学学術院助教、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)アジア研究所客員准教授などを経て、現職。早稲田大学IT戦略研究所招聘研究員、企業家研究フォーラム幹事。専門は、競争戦略とイノベーション、アントレプレナーシップ(ビジネスモデル、プラットフォームビジネス、デジタル化)。企業の事業創造プロセスやデジタルビジネス分野の経営戦略についての研究を行っている。大手企業・スタートアップにおける社内研修講師もつとめる。主な著書(共著)に『1からのアントレプレナーシップ』(碩学舎)、『モバイルバリューの社会システム』(経済産業調査会)などがある。

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マス・カスタマイゼーションとは、大量生産でありながら、顧客のニーズに合わせたカスタムオーダーの製品・サービスを販売することだ

マス・カスタマイゼーションの基本コンセプト

 マス・カスタマイゼーションとは、生産や販売のボリュームを活かしつつ(大量生産)、個々の顧客のニーズに合わせた製品・サービスを販売すること(カスタム化)です。

 たとえば、コンピューター販売大手のデル(デル・テクノロジーズ)は、PCの部品ごと(CPUやハードディスクなど)にいくつかのパターンを用意し、直販モデルによる受注生産(BTO:Build to Order)の仕組みを用いることで、顧客のニーズに合わせたカスタムオーダーの製品を販売しています。

 また、ドイツのBMWは、乗用車「MINI」の内外装部品をユーザー自身がWebサイト上でデザインを変更できる、「MINI Yours Customized」のサービスを提供しています。カスタマイズされた部品は、BMWの工場で3Dプリンタやレーザー加工機を用いて製造されます。

 企業のマーケティングにおいては長らく「マス・マーケティング」が用いられていますが、近年は個々の顧客のニーズを満たそうとする「ワン・トゥ・ワンマーケティング」が意識されています。マス・カスタマイゼーションは、こういった企業の個別対応を効率的に行おうとするものであるといえます。


大量生産のメリットとカスタム化のメリット

 マス・カスタマイゼーションは、大量生産(マス・プロダクション)のメリットと、カスタム化のメリットを一定程度両立できるビジネスモデルです。

 上記のデルやBMWの事例からもわかる通り、マス・カスタマイゼーションでは組み合わせを行う部品の「パターン」をいくつも用意することで、パターン単位での生産ボリュームを確保します。

 結果として、まず、大量仕入れ・大量生産によって製品原価や生産コストを下げることができます。また組み立てにかかる時間を短くすることで、出荷までのリードタイムを縮めることができます。これは、マス・プロダクション(大量生産)のメリットといえるでしょう。

 同時に、マス・カスタマイゼーションでは、顧客のニーズに応じた仕様変更が可能となったり、多様な部品を抱える場合に比べて在庫の発生リスクを下げたりすることができます。顧客が手にする製品には、画一品ではない付加価値もあるでしょう。これらは、カスタム化のメリットといえるものです。

事例1:フクル

 フクルは、繊維産業の集積地である群馬県桐生市に拠点を構える衣類製造販売企業です。同社では、自動化された生産システムを用いることで、価格を抑えたオーダーメイドのワンピースと女性向けスーツを提供しています。

 フクルでは、顧客が生地やサイズを見本の中から選んで発注すると、以降はCADを用いて自動で設計図を作成したり、製造に用いる生地やボタンなどのパーツも自動で用意されたりする仕組みを構築しています。

 また、生地は桐生市の機屋にある残反を活用したり、縫製に関しては同社の創業者の家族が経営する縫製工場やその他の中小工場、職人と組んだりすることによって製造コストを抑えています。

【次ページ】事例2:アディダス、そのキーポイントとは?

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