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  • 2020/10/30 掲載

経験価値マーケティングとは何か? スタバなどの事例から「コト消費」の本質を知る

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モノがあふれかえる昨今、製品やサービスを購入したことで得られる「経験」や「体験」に価値を見い出す消費スタイル「コト消費」が根付いてきました。実際に経験できるイベントやサービスといった「コト消費」を通じて、その企業の認知度や好感度を高める手法のことを「経験価値マーケティング」と言います。ここでは、コロンビア大学ビジネススクールのバーンド・H・シュミット教授らが提唱した「経験価値マーケティング」について、『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』を上梓する根来 龍之氏、富樫 佳織氏、足代訓史氏の3氏に解説してもらいます。

早稲田大学ビジネススクール 根来龍之、愛知淑徳大学 富樫佳織、拓殖大学 足代訓史

早稲田大学ビジネススクール 根来龍之、愛知淑徳大学 富樫佳織、拓殖大学 足代訓史

根来龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授
京都大学文学部卒業(哲学科)。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、現職。早稲田大学IT戦略研究所所長。早稲田大学大学院経営管理研究科長、米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、経営情報学会会長、エグゼクティブ・リーダーズフォーラム代表幹事、CRM協議会副理事長、国際CIO学会副会長(同学会誌編集長)などを歴任。主な著書・共著に『集中講義 デジタル戦略』、『プラットフォームの教科書』、『ビジネス思考実験』、『事業創造のロジック』(以上、日経BP)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)など。監訳書に、『対デジタル・ディスラプター戦略』、『DX実行戦略』(M・ウェイド他著)、『プラットフォーマー 勝者の法則』(B.レイエ他著)(以上、日本経済新聞出版)などがある。

富樫佳織(とがし・かおり)
愛知淑徳大学准教授
学習院大学法学部卒業。早稲田大学商学研究科修了(MBA)。NHK(日本放送協会)ディレクター、放送作家(フリーランス)、WOWOWでのプロデューサーを経て2017年から現職。放送局勤務時代に携わった主な番組は、『世界一受けたい授業』『世界遺産』『十八世中村勘三郎ドキュメンタリーシリーズ』『WOWOWオリジナルドキュメンタリーシリーズ ノンフィクションW』など。受賞歴に、高柳財団第41回科学放送高柳賞企画賞、第2回衛星放送協会オリジナル番組アワード中継番組部門最優秀番組、WOWOWで放送された『Blueman Group Connect to Japan』で第40回国際エミー賞アート番組部門ファイナリスト等。著書に『やわらかロジカルな話し方』。メディア企業のデジタル戦略、ビジネスモデルとマーケティング戦略を研究分野としている。

足代訓史(あじろ・さとし)
拓殖大学商学部准教授
早稲田大学商学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。日本総合研究所(研究員・経営コンサルタント)、早稲田大学商学学術院助教、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)アジア研究所客員准教授などを経て、現職。早稲田大学IT戦略研究所招聘研究員、企業家研究フォーラム幹事。専門は、競争戦略とイノベーション、アントレプレナーシップ(ビジネスモデル、プラットフォームビジネス、デジタル化)。企業の事業創造プロセスやデジタルビジネス分野の経営戦略についての研究を行っている。大手企業・スタートアップにおける社内研修講師もつとめる。主な著書(共著)に『1からのアントレプレナーシップ』(碩学舎)、『モバイルバリューの社会システム』(経済産業調査会)などがある。

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経験価値マーケティングとは、顧客が製品・サービスを購入する際の経験や体験(コト消費)にコミットすることで、顧客価値の増大を目指す手法だ

経験価値マーケティングの基本コンセプト

 従来、顧客が消費を行う際に重視するのは、製品・サービスの基本的機能や価格であると考えられてきました。

 たとえば、化粧品を購入する際には顧客が重視するのは保湿力や値段であるという考え方です。このような、基本的機能や価格といった製品の属性を重視したうえで購入し、所有することに価値を見いだす消費スタイルのことを「モノ消費」といいます。

 このような消費スタイルに対して、近年は「コト消費」という言葉を耳にすることが増えました。コト消費とは、製品やサービスを購入したことで得られる「経験」や「体験」に価値を見いだす消費のスタイルのことです。

 たとえば、自然に触れたいと考える人々が農業体験の旅行ツアーに参加したり、スキルアップを目指すビジネスパーソンが英会話レッスンに通ってそこの人々とコミュニケーションを行ったりするのが、コト消費のイメージです。上記の化粧品の購買をコト消費で考えるなら、保湿力や価格に加えて、

  1. 化粧品の外観が自身のライフスタイルや気分に適合しているか
  2. 百貨店において化粧品を購入する際に、普段の自分とは違う「特別な自分」になれるようにメーキャップしてもらえるか

といったことに価値を感じて消費行動を行うことを指します。

 コト消費は、マーケティングの世界では「経験価値マーケティング」という考え方で捉えられてきました。経験価値マーケティングとは、顧客が製品・サービスを購入する際の経験や体験を意図的にマネジメントすることで、顧客価値の増大を目指す手法です。

 より具体的には、製品・サービスの基本的機能や価格に加えて、情緒的価値や自身のライフスタイルとの関連といった要素を考慮するマーケティング手法です。つまり、経験価値マーケティングでは、消費というのは、単純にニーズを充足させるための行動ではなく、その過程(あるいは結果)で得られる経験や体験も含めた行動であると捉えます。

●経験価値マーケティングのキーポイント
  1. 顧客が消費する際の「経験」や「体験」を重視する
  2. 経験には「SENSE」「FEEL」「THINK」「ACT」「RELATE」の5つがある
  3. 5つの経験のすべてを満たさなくても、経験価値を生み出すことができる


事例1:スターバックス

 コーヒーチェーンのスターバックスは、経験価値を意識したビジネスの代表的な成功例の1つです。スターバックスは、旧来の喫茶店やコーヒーチェーンのように「純粋にコーヒーを飲む」ことのみならず、「スターバックスでコーヒーを飲むこと自体が顧客の価値になる」ことを意識しています。

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スターバックスの経験価値マーケティング

 同社はこのコンセプトを「第三の場所(サードプレイス)」として位置づけることで、職場や家庭ではない非日常的な「第三の」空間として、顧客にくつろぎや楽しさを与える場所となることを目指しています。そのため同社は、出店地域のライフスタイルにあった店舗(内装や什器など)をデザインしています。

【次ページ】経験価値マーケティングの5つの成立条件

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