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  • 2020/10/23 掲載

レイヤーマスターとは何か? 図と事例でわかりやすくBCG提案フレームワークを解説する

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特定の業務に特化することで優位性を築く「レイヤーマスター」。このビジネスモデルは、既存のバリューチェーンを再構築して生産性を高めたり、新たな価値提供の仕組みを考えたりするためにBCGが提案したフレームワーク「デコンストラクション」の1種です。今回はこのレイヤーマスターについて、『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』を上梓する根来 龍之氏、富樫 佳織氏、足代訓史氏の3氏に、iPhone製造などで有名なフォックスコンなどの事例をもとに解説してもらいます。

早稲田大学ビジネススクール 根来龍之、愛知淑徳大学 富樫佳織、拓殖大学 足代訓史

早稲田大学ビジネススクール 根来龍之、愛知淑徳大学 富樫佳織、拓殖大学 足代訓史

根来龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授
京都大学文学部卒業(哲学科)。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、現職。早稲田大学IT戦略研究所所長。早稲田大学大学院経営管理研究科長、米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、経営情報学会会長、エグゼクティブ・リーダーズフォーラム代表幹事、CRM協議会副理事長、国際CIO学会副会長(同学会誌編集長)などを歴任。主な著書・共著に『集中講義 デジタル戦略』、『プラットフォームの教科書』、『ビジネス思考実験』、『事業創造のロジック』(以上、日経BP)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)など。監訳書に、『対デジタル・ディスラプター戦略』、『DX実行戦略』(M・ウェイド他著)、『プラットフォーマー 勝者の法則』(B.レイエ他著)(以上、日本経済新聞出版)などがある。

富樫佳織(とがし・かおり)
愛知淑徳大学准教授
学習院大学法学部卒業。早稲田大学商学研究科修了(MBA)。NHK(日本放送協会)ディレクター、放送作家(フリーランス)、WOWOWでのプロデューサーを経て2017年から現職。放送局勤務時代に携わった主な番組は、『世界一受けたい授業』『世界遺産』『十八世中村勘三郎ドキュメンタリーシリーズ』『WOWOWオリジナルドキュメンタリーシリーズ ノンフィクションW』など。受賞歴に、高柳財団第41回科学放送高柳賞企画賞、第2回衛星放送協会オリジナル番組アワード中継番組部門最優秀番組、WOWOWで放送された『Blueman Group Connect to Japan』で第40回国際エミー賞アート番組部門ファイナリスト等。著書に『やわらかロジカルな話し方』。メディア企業のデジタル戦略、ビジネスモデルとマーケティング戦略を研究分野としている。

足代訓史(あじろ・さとし)
拓殖大学商学部准教授
早稲田大学商学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。日本総合研究所(研究員・経営コンサルタント)、早稲田大学商学学術院助教、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)アジア研究所客員准教授などを経て、現職。早稲田大学IT戦略研究所招聘研究員、企業家研究フォーラム幹事。専門は、競争戦略とイノベーション、アントレプレナーシップ(ビジネスモデル、プラットフォームビジネス、デジタル化)。企業の事業創造プロセスやデジタルビジネス分野の経営戦略についての研究を行っている。大手企業・スタートアップにおける社内研修講師もつとめる。主な著書(共著)に『1からのアントレプレナーシップ』(碩学舎)、『モバイルバリューの社会システム』(経済産業調査会)などがある。

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レイヤーマスターとは、バリューチェーン内の“特定の業務や機能(レイヤー)”に関する活動に特化し、そこでの競争優位を構築する戦略だ

レイヤーマスターの基本コンセプト

 「レイヤーマスター」というビジネスモデルは、既存のバリューチェーンを再構築して生産性を高めたり、新たな価値提供の仕組みを考えたりするためにBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が提案したフレームワーク「デコンストラクション」の中の1種です。

 レイヤーマスターとは、ある産業におけるバリューチェーン内の“特定の業務や機能”に関する活動に特化し、そこでの競争優位を構築する戦略です。“特定の業務や機能”のことを「レイヤー(層)」と呼びます。

 レイヤーマスターが特化するレイヤーは、「製造に特化」「販売に特化」など、バリューチェーンの主業務のいずれかになることが多いです。

 また、製造や販売といった「業務」ではなく、ある製品において特定の機能を担う「部品」にも、レイヤーマスターが存在します。たとえば、パソコン産業においては、CPU、メモリ、ハードディスク、OS、パソコンの本体(ハード)、アプリケーション・ソフトウェアといった、パソコンに必要な機能を果たす部品が存在しますが、これらの部品のいずれかに特化することでも競争優位を構築できます。

 主なレイヤーマスターには、CPUのレイヤーに特化するインテルや、OSに特化するマイクロソフトなどが挙げられます。つまり、レイヤーマスターとは「バリューチェーン内の特定の業務」や「産業内の特定の機能(部品)」に特化することで技術や経験を蓄積し、市場内でのドミナントを形成しようとする企業のことを指します。

●レイヤーマスターのキーポイント
  1. バリューチェーン内の特定レイヤーでの活動に特化し、競争優位を築く方法
  2. バリューチェーンを分離しやすい業務や産業において成立する
  3. 同一レイヤー内では、技術やノウハウ、規模などで他社と差別化することが重要


事例1:Foxconn Technology Group

 Foxconn Technology Group(フォックスコン)は、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を中核とする企業グループです。フォックスコンが手がけるのは、電子機器を受託生産する「EMS(Electronics ManufacturingService)」と呼ばれるビジネスです。

 同社は世界中のエレクトロニクス・通信機器メーカーを顧客とし、それらの企業が扱う製品の製造業務を受託しています。たとえば、AppleのiPhoneや、各種メーカーのスマートフォン、タブレット、あるいは任天堂のNintendo SwitchやソニーのPlayStationなどの製造を行っています。

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 製造工場の多くは中国に置かれています。フォックスコンのEMS事業は、エレクトロニクス・通信機器メーカーのバリューチェーンの「製造」レイヤーに特化したものであるといえます。

 レイヤーマスターは製造業以外にも存在します。たとえば、コンサルティング業界において「デザイン」というレイヤーに特化するアメリカのIDEOや、「ウェブサイトやアプリのユーザエクスペリエンスデザイン(使いやすさ)」のレイヤーに特化するbeBitなどが該当します。

【次ページ】レイヤーマスターの他の事例、成立条件や落とし穴とは?

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