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- 2020/10/07 掲載
コロナ対策で自治体財政ひっ迫、予算確保のために“先送り”した事業とは?
大阪府は447事業、静岡県は新野球場など見直し
「通常の予算編成から頭を切り替え、コロナ対策予算を執行する。非常事態であることを全庁で意識したい」。大阪府の吉村洋文知事は副知事ら府幹部を集めた戦略本部会議で大幅な事業見直しを決めたあと、記者団に対して狙いを語った。新型コロナ対策の長期化が見込まれるのを受け、先送りが可能な事業や三密対策を取りにくい事業を見送るとともに、予算縮小を進め、重症者向け医療施設の整備や中小企業向け融資、失業者の雇用対策などに充てる内容。見直しは447事業、1,050億円規模に上る。
見送る事業は府立高校の老朽化したトイレの改修や訪日外国人旅行者のおもてなし事業、開催が延期されたドバイ万博での大阪・関西万博PR活動など。住宅密集地の解消を目指す自治体への補助事業や上方演芸資料館の魅力発信事業などは予算を縮小する。
静岡県は県税収入の大幅な減少が予測されることを踏まえ、浜松市西区の遠州灘海浜公園篠原地区で計画している新野球場や静岡市駿河区で整備を予定している県立中央図書館など6事業の見直しを決めた。
川勝平太知事は県議会9月定例会の所信表明で「今後、大幅な財源不足に陥る可能性がある」と理由を説明した。今後については「アフターコロナ時代にふさわしい施設のあり方を再検討するほか、優先順位をつけて事業を進める」と述べた。
香川県は今後、東京五輪の事前合宿やクルーズ客船の誘致など緊急性に乏しい事業を見直し、その予算を新型コロナ対策に充てる。浜田恵造知事が県議会代表質問に答え、明らかにした。
山梨県は行政改革推進本部会議を開き、県の全事業2000件近くを対象に見直しに入ることを決めた。長崎幸太郎知事は慣例化している事業の効果を点検し、質の高い行政サービスに転換するよう指示している。
荒川区は駅前再開発のホールを断念
横浜市の林文子市長は記者会見で2021年度予算に970億円の収支不足が見込まれていることを挙げ、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致や新たな劇場整備事業について、当初予算に計上した関連費の減額、2021年度の事業費見直しの可能性を示唆した。横浜市は2020年度予算でIR推進に4億円、新たな劇場の整備計画検討に2億円を計上している。林市長は「いろいろな事業に対してもう一度見直しをしていく。(予算を)減額することはありうる」と述べた。
東京都荒川区は荒川区西日暮里の西日暮里駅前地区市街地再開発準備組合に地権者として参画し、再開発ビルの商業・ホール棟に約190億円かけて1500席規模のホール整備を計画していたが、区の財政がリーマン・ショック以上の打撃を受ける恐れがあるとして断念した。
荒川区防災街づくり推進課は「区の財政が回復するまで先送りすると、再開発事業に遅れが生じる」と説明した。再開発準備組合は代替施設として民間のコンベンション施設誘致などを検討する方向だ。
【次ページ】湖南市、静岡市は新庁舎建設を先送り
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