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- 2022/12/02 掲載
PLCとは何かをマンガでもわかりやすく解説、シーケンサとは? 種類やメーカーは?
PLCは「あらゆる機械の制御装置」
PLCは「Programmable Logic Controller(プログラマブルロジックコントローラ)」の略称(注)で、日本語に直訳すると「プログラム可能な論理回路の制御装置」といったところです。三菱電機が提供するPLCである「シーケンサ」がPLCの代名詞として呼称されることも多く、PLCが通じなくてもシーケンサなら通じることもあります。一言で「機械を制御する」といっても具体的にイメージはつかみにくいかもしれません。しかし、難しく考える必要はなく、基本的には「AをしたらBをする」「CになったらDをする」といった命令の組み合わせで制御します。
この制御方法は「シーケンス制御」とも呼ばれます。これを行うのがPLCです。機械制御は複数のシーケンス制御の組み合わせで行われることが多いので、PLCが非常に重要な役割を担っていることがわかるでしょう。
PLCが行うシーケンス制御とは?
シーケンス制御について、もう少し具体的な例で説明しましょう。機械が動作を行うためには、常に電流・圧力・時間・状況の変化などある種の「きっかけ」が必要です。このきっかけ部分を3つに分けて「順序制御」「時限制御」「条件制御」と呼びます。シーケンス制御の説明には洗濯機の制御プロセスがよく使われるので、洗濯機の制御を例に挙げ、シーケンス制御の仕組みについて解説していきましょう。
ユーザーが「スタートボタンを押す」と、次にやるべきこととして、順序制御で水栓を開けて「給水」作業が始まります。次に、水が適量入ったことをセンサーなどで検知することで、条件制御によって水栓が閉まり給水作業が終わります。給水作業が終わると、順番としては洗濯槽を回して「洗う」必要があるので順序制御で洗濯槽が回ります。
洗う作業は時間で区切られているため、時間制御によって終了し、排水が始まります。以降は同じように、順序制御で給水、条件制御で排水、時間制御で洗濯槽の回転が繰り返され、すすぎや脱水の作業が行われるのです。
複雑なように見えてその仕組みはかなりシンプルなことがわかるのではないでしょうか。PLCが無かったころには、こうした機械の制御には専用の回路(有接点・無接点リレー回路)を用意して、その回路に対して1つひとつ技術者が調整をしながら制御を行っていました。
先ほどの洗濯機の例で言えば、時間制御用のタイマー、条件制御用のセンサー、順序制御用の回路それぞれに適切な調整を加え、配置する必要があったのです。
PLCでは、そうした操作がプログラミング言語を使って入力するだけで可能になります。機械を簡単に制御できるようになるだけではなく、従来の回路を使った方式ではできなかった複雑な制御もできるようになります。
PLCの欠点といえば、物理的な装置を伴う有接点回路に比べてノイズに弱かったり、専用の半導体を伴う無接点回路に比べて反応速度がわずかに遅かったりするぐらいです。ほんのわずかな遅延やミスも許されないような制御でない限りはPLCで問題ありません。
PLCはどこで使われているのか?
では、具体的にPLCはどのような場面で使われているのでしょうか。実は、周りを見渡してみると本当にあらゆるところで使われています。たとえばエレベーターは良い例です。ボタンを押せばドアが開いて所定の階に着き、何かがドアに挟まりそうになったら開き、重すぎたらブザーを鳴らす。これら一連の動作の制御が、PLCの仕事です。
エアコンや電子レンジのような家電の操作や自動車の制御、ゲームセンターや遊園地の遊具にも使われています。そのほかにも、工場で動く工業用・産業用機械、水道やガスのようなインフラ設備、道路に無数に立つ信号機などもPLCで制御されています。
逆に、パソコンやスマホのような「コンピューターや周辺機器」にPLCは使われていません。パソコンそのものが制御装置なので、パソコンが関わるものにはPLCが不要なのです。
パソコンは機械制御ではなく膨大な情報の管理に使われるものであるため、汎用性と柔軟性が優先され、反応速度においてはPLCに劣りますが、誰でも使えるのでPLCの代わりに使われることも増えてきました。用途に応じて、さまざまな使い分けがなされています。
ただ、最近の家電を見ればわかるように、機械は年々、より複雑になっています。それに応じてPLCにもできることが増えてきており、アナログ変換、無線通信、データ収集・分析までこなすようになりました。パソコンがPLCの代わりをするのではなく、PLCがパソコン並の情報処理をするようになっているのです。
特にPLCが通信機能を持つことは、生産・インフラのIIoT化を進める上で必要不可欠な要素です。暗号化された通信を素早く処理し、膨大なデータを扱う能力に対する需要は日々高まっています。今後は今まで以上にPLCの多機能化が進んでくるでしょう。
PLCの仕組みは? 理想の動作を実現する「機械の脊髄」
PLCの構造は大きく分けて、信号の入力装置と出力装置、演算装置と記憶装置、電源装置、それに加えて通信装置等で構成されています。基本構造はコンピューターと似ていますが、PLCはコンピューターに比べてシンプルな方式で動いています。具体的にいうと、コンピューターが命令を順次実行していく「チューリングマシン(ノイマン型)」と呼ばれる方式で動いているのに対して、PLCはあらかじめ指定された状態に変化していく「ステートマシン」と呼ばれる方式でシーケンス制御を行っています。
ポイントとして、万能型のチューリングマシンはステートマシンを内部で再現できるので、コンピューターがPLCの代わりをすることができる一方で、PLCが完全にコンピューターを代替することはできないということです。
また、PLCはハードウェアのほかに、機械の制御プログラムを管理するソフトウェア(コントローラ)が内部に存在しています。このソフトウェアの仕様や使いやすさも、PLCの性能を分ける大きな要因となります。
このPLCソフトウェア自体をコンピューターやPLCを問わず使えるようにすれば、使い勝手は変わらないまま状況に応じてPLCやコンピューターを使うことも可能です。
PLCの機能自体はコンピューターで代用できるものの、前述のようにPLCは反応速度に優れるほか、安価で信頼性が高いという特徴があります。機械は長時間動き続ける都合、信頼性は機械制御装置として非常に重要な要件になります。
最近はコンピューターの価格が下がり信頼性も向上していますが、PLCもコンピューター並みに高性能化しているため、機械制御の基盤としての座はいまだにゆらぎません。
巨大な工場では膨大な機械が同時に動き続けているため、それを一括して管理する必要が生じます。そうした場面ではPLCではなくコンピューターが使われ、それぞれの機械の制御をPLCが担当し、PLCから送られてくる情報処理をコンピューターが担うことも増えてきました。生産管理に特化したPC上で動作するシステム「SCADA」なども普及するようになっています。
人間の体で言えば、全体の管理を行うコンピューターやSCADAが「大脳」で、PLCが自律神経や体の動きをコントロールする「脊髄・小脳」と言えるかもしれません。
【次ページ】PLCの3つの種類(パッケージ型、ビルディングブロック型、ソフトウェア型)
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