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- 2020/11/26 掲載
住友商事CDOに聞くDXでの成長戦略、5Gやスマートシティ、ジョブ型雇用への取り組みとは
前編はこちら(この記事は後編です)
DXとSDGsの関わり
──従来、貴社のセグメントで言えば、金属、輸送機・建機などが商社の主力だったとのことですが、デジタル時代における商社の役割をどのように捉えていますか。南部氏:昔も今も、時代に合わせたソリューション・プロバイダーだと思っています。商社は、かつて日本が豊かになってきた過程で、日本の競争力のある製品を海外に売りに行くことで富を還流させました。また、それら製品を作るために海外へ資源を取りにも行きました。
プラザ合意以降、輸出が伸びなくなったら、今度は技術と仕組みを海外へ移転して、その周辺に事業網を作りました。そうして各国で雇用を生み、事業を営んできたわけです。その時々の課題を解決してきた商社の役割は、これからも同じだろうと考えています。
ただ、これからの社会で、恐らく絶対的に必要な考え方は、サステイナブル(持続可能)な、地球環境を意識した事業だと思います。
今まで我々は、石炭火力など資源開発・エネルギー関連の事業も行ってきましたが、これからは、同時に地球温暖化を意識しないわけにいきません。国の発展に尽くすことは前提としつつ、資金を投じて環境への対応を両立する方向に運用していくということです。
DXも同様で、国連が定めた国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)との交わる地点で「社会のためになる事業とは何なのか」を考え、一つ一つ選んで実行していくことになると思います。
我々は我々の得意であった産業で機能を求め、ここまで来ましたが、今はデジタル技術による変化を背景に方向転換する局面であることを理解していますし、さまざまな変化を恐れていません。むしろ、このような社会の変化に背中を強く押してもらっている感覚です。
コロナで直面したリスクと、見えてきた強み
──社会の変化といえば、新型コロナも社会に大きな影響を及ぼしています。住友商事への影響はどうだったのでしょうか?南部氏:コロナ以降、今まで見たことのない事業上のリスクが発現しました。
たとえば、「アンバトビー・プロジェクト」というマダガスカルで進めている世界最大規模のニッケル生産事業があります。これは、これからの蓄電池社会に欠かせないニッケルの採掘から精練を一貫して現地で行う事業です。
しかし、努力を重ねてようやくオペレーション体制が整ったという時に、コロナ禍に見舞われ、3月末以降操業を停止せざるを得ませんでした。事業を始めた時は、そのような事態はまったく想定できませんでした。
また、当社では飛行機のリース事業も多数行っています。コロナ禍では旅客を運ぶ長距離の便はしばらく減じざるを得ない代わりに、物流のための中距離を中心とした飛行機のニーズは戻ってくる可能性が高いので、必要な機体の仕様も変わってくるでしょう。
自動車も一時的に落ち込みましたが、今後はおそらくパーソナルな空間での安全な移動が柱になってくるかもしれません。いずれにせよ、歴史的に積み上げてきたアセットを見直さなければならず、影響は小さくありません。
コロナによってあらゆる変化のスピードが圧倒的に早まった
──その反面、デジタルに対する期待値が高まった面もあると思います。南部氏:住友商事グループのジュピターテレコム(以下、J:COM)やSCSKなどが提供するような、非接触を前提としたリモート型社会において、利便性の高い社会インフラには、期待の高まりを感じます。
コロナで出社自粛が始まる以前から、リモートワークにほとんど支障の無い体制をSCSKが築いてくれました。グループ内の話ではありますが、感謝していますし、誇るべきことです。
サミットやトモズなどの流通、それからティーガイアの携帯電話ショップのような通信関連の事業も、コロナのおかげで社会インフラとしての強みが際立ったと思います。
振り返ってみると、中期経営計画の中で、DXと社会インフラに注力することで、期せずしてコロナの時代に備えてきたとも言えるかもしれません。コロナによって、あらゆる変化のスピードが圧倒的に早まったと感じます。
【次ページ】5G・ローカル5Gへの関わり方
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