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  • 2021/03/01 掲載

【単独】DMMの新旧CTOを直撃、これからのテクノロジー担当役員の「新常識」

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動画配信プラットフォームとして約20年前に誕生し、今ではゲームやアニメ、英会話などのオンラインコンテンツのほか、太陽光発電、3Dプリント、水族館など、リアル領域も含め50以上のサービスを提供するDMM。同社では3月、これまで技術部門を牽引してきた松本勇気CTO(最高技術責任者)が退任する。それに併せて、新CTOとして就任する渡辺繁幸氏、執行役員 兼 VPoE(Vice President of Engineering)に就任する大久保寛氏を合わせた3名に、新体制に移行する狙いはどこにあるのか、テクノロジー担当トップとしてのCTOと新設されるVPoEの役割とは何かを単独インタビューした。

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:岡崎勝己、撮影:濱谷幸江

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:岡崎勝己、撮影:濱谷幸江

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(右から)CTOを退任する松本勇気氏、執行役員 兼 VPoEに就任する大久保寛氏、新CTOの渡辺繁幸氏


若くして就任したCTOを退任する理由

──今回、DMMグループの技術戦略を牽引してきた松本氏がCTOを退任されます。その理由をまずはお聞きできますか?

松本氏:発端は、当初の想定以上にDMMのDXが早く進んだことにあります。全社的なテクノロジー活用の旗振り役として私がCTOに就任したのは2年半前の2018年10月です。

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松本 勇気 氏
(退任前の肩書:合同会社DMM.com CTO 兼 EXNOA(DMM GAMES)CTO)

 DMMでは600人程度のエンジニアを抱えていますが、ビジネス部門から企画を受けて作る社内受託型の開発組織から、上流も含めて自分たちで考える開発スタイルへのテクノロジー部門の変革を目指しました。

 就任と同時に策定した「技術」「データ」「(技術者の)人事」「社外貢献」の4つを重点領域とする3カ年のテクノロジー計画「DMM TechVision」の下、達成に必要な仕組みや環境の整備/導入に取り組んできた形です。


 その指揮は大変ですが非常にやりがいがありました。私は大きなものを作り変えること、そして、その過程での自身の成長に達成感を感じるタチです。

 その意味で、今回の取り組みはいくつものビジネスを抱えるDMMの、これからを見据えた(技術)組織とシステム基盤の双方の変革という大きな挑戦と言えました。

 幸いなことに、成果はすでにいくつも上がっています。代表的なものが機械学習用の運用基盤「MLOps」や新卒向け教育カリキュラム、サービスの安定性向上のためシステム管理の方法論である「SRE(Site Reliability Engineering)」の担当組織立ち上げで、それらがITエンジニアの養成機関「42 Tokyo」などの新規立ち上げにもつながっています。


 ただ、予想外だったのが、新型コロナを奇貨にDMMでも業務のデジタル化が急進し、DMM TechVisionが想定より前倒しで進展してしまったことです。この過程で私自身、十分すぎる手応えを感じており、おのずと新たな目標を模索するようになりました。

DMMの経験を社会のDXに生かすために

松本氏:DMMの改革の傍ら、この1年では、日本CTO協会の理事としての活動や個人宛のさまざまな相談を受けることが増えました。そこで強く感じたのは、新型コロナによりDMMと同様、社会にもDXの大波が自分の想定よりも早く押し寄せているということです。

 私自身はもともとこうした潮流が2025年前後あたりで本格化するだろうと踏んでいたのですが、それよりも4年も早かった。その急さから対応の“解”を持ち合わせていない大企業も現時点で少なくありません。

 そこで浮かんだ想いが、DMMでのテックカンパニー化、組織改革の経験を日本企業、さらには社会全体の変革に役立てられるのではということでした。そして、この社会におけるソフトウェア活用の意義や貢献したいという思いの大きさから、企業や行政と行った組織を支えることが次の目標となり、その考えを行動に移すべく、最終的にCTOの退任を申し出たのです。

大久保氏:私はこれまで松本とエンジニアの採用・育成・評価に取り組んできたのですが、比較的早いタイミングで松本から相談され友人としては応援したいけどDMMの大久保としては困るという話をしました。それと同じぐらいのタイミングで渡辺と知り合う機会があり、CTOがという話ではなく優秀な方なので是非一緒に働きたいという話をさせてもらいました。

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合同会社DMM.com
執行役員 兼 VPoE
大久保寛氏

渡辺氏:面談はたしか5月です。私はアイスタイルで長年、CTOを務めてきたのですが、50代を目前にここからさらに挑戦できることを探していました。

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合同会社DMM.com
CTO
渡辺繁幸氏

 そんな折、大久保から「DMMは変わったらよりよくなることがたくさんある」「松本とやっているが手が足りない」「一緒にやってくれる人材が欲しい」と申し出があり、「3人で苦労を共にして」という言葉に心を打たれ、DMMへ行くことを決意しました。実際に入社したのは昨年9月になります。

──では、CTOを引き継ぐことを前提に移られたということでしょうか?

渡辺氏:その時にそういう話はありませんでした(笑)。ただ、それから社内で話を聞いて回り、次第に分かったのは、松本は社内で広く実力が認められ、頼られ、社外にも広く知られる、DMMにとって非常にシンボリックな存在だということでした。DXを始め、非常に広い範囲を一人で受け持つ一極集中で取り仕切ってきました。

CTOとVPoEの二頭体制を新たに採用した理由

渡辺氏:すべてを兼ね備えているような、有能な人材はそうはいないものです。なので、今後についていろいろ協議したのですが、結論を出すのに2か月以上かかりました。

 最終的に決まったのはCTOと今回新設されるVPoE(Vice President of Engineering)による一極集中からの脱却です。これにより負担を分担し、2人がかりで視野を広げることで今後の会社の成長も加速させられるはずだと。そのうえで、松本からの引き継ぎの話もあり、それならと私がCTOを、大久保がVPoEをそれぞれ引き受けることにしたのです。

松本氏:9月からの短い間ですが一緒に仕事をし、そこでの体験から渡辺なら安心してCTOを任せられると確信しています。 改革のただ中で渡辺に引き継ぎましたが、まだ全体像が不確定な中にあって現場を直視し、隠れていた問題も含めて洗い出すことで、どう変えるべきかの具体的な議論にまでつなげてくれたのです。

渡辺氏:それは私のキャリアも関係しているかと思います。お金を稼ぐ部署のシステムの見直しは難しいものですが、私は前職でそれを何度かやってきた実績があり、成功に加え失敗も幾度となく経験してきました。

 大久保との面談時にも、失敗経験は山ほどあると伝えていますし(笑)、だからこそ私を誘ってくれたのでしょう。それゆえ、3人での苦労が本当に楽しみでした。松本と一緒に働けないのは残念というのが偽りのない本音です。

──CTOとして改革を加速させるうえで、現状をどう捉えていますか。

渡辺氏:松本と大久保が先回りして技術者のスキル向上における課題対応に尽力してきたこともあり、すでにDMM内の技術スキルは高いレベルにあると感じています。

 たとえばクラウドと言ってもAWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)などいくつかあり、特性は実際に触ってみないと分かりにくいものですが、すでに一通り試せる環境が社内に存在します。

 エンジニアが勉強にかける費用も会社負担ですし、誰もが社内外を問わず技術的な発表を行えるようになっています。それらが文化として根付いている点で、大手企業にも環境は決して引けをとらないと断言できます。

【次ページ】CTOの役割とは何か?VPoEとはそもそも何か?

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