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  • 2021/03/19

KDDIが語る「5G時代のXR」、コロナ禍で「リッチな体験」をどう届けるのか?

2020年に本格始動した第5世代移動通信(以下、5G)サービスだが、コロナ禍の影響もあり、期待されていた大型イベントでの活用が難しい状況が続く。一方で、個人ユースに目を向けて、ARやMRといったXR技術と組み合わせてリッチな体験を提供しようとする試みも進んでいる。KDDIの取り組みについて、KDDI 5G・xRサービス企画開発部 上月勝博氏が語った。

フリーライター/エディター 大内孝子

フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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5GでXRはどう進化するのか?
(Photo/Getty Images)

※本稿は、2020年12月に8日~10日に開催されたXR Kaigi 2020におけるセッション「5G時代のXR~ついに?! コンシューマ向けスマートグラス、スマホとMobile Edge Computing」を再構成したものです。内容は当時のものが含まれます。


5G普及の鍵を握るのは「個人向けの5G活用コンテンツ」

 5Gというと、「超低遅延」「多数同時接続」といった通信の特性から、工場を含めた複数拠点間のネットワークなど、B2Bでの活用が大きく期待されている。あるいは、スタジアムや大型商業施設、駅などアクセスが集中し接続しにくくなる場所において、従来の通信に対する優位性が注目されている。


 実際、これまで先行事例として紹介されてきた海外、および国内の実証実験などは、これらのメリットを活かすものが多い。

 一方で、キャリア各社を含めプラットフォーマー、コンテンツホルダーが、「5Gでなければ」あるいは「5Gならでは」といった、個人向けの5G活用のコンテンツ/ユースケースをいかに用意できるかが、5Gの本格的な普及における重要なファクターだという議論も早い時期から行われてきた。

 端的にいうと、いま現在、サービスエリアの拡大に向け基地局の開設を進めると同時に、一般のユーザーが普段の生活の中で5Gの特性をどう享受できるか、いかに魅力のあるメリットを打ち出し、市場を作っていくのか、その段階にあるということになる。

 KDDIが取り組んでいる、コンシューマー向けスマートグラス「NrealLight」(エンリアルライト)+5G対応スマートフォンはその事例の1つ。すでに、東京国立博物館の展示(国宝『聖徳太子伝』)における「ARでたどる聖徳太子の生涯」や、横浜市で行われた「バンクシー展 天才か反逆者か」のARガイドなど、一般の来場者への提供が始まっている。

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東京国立博物館・文化財活用センター・KDDI共同研究プロジェクト「国宝 聖徳太子絵伝」
(発表資料より)

 まず、NrealLightについて簡単に触れておこう。NrealLightは対応のスマートフォンと接続することで動作するスマートグラス。KDDIでは、Nrealと2019年5月に戦略的パートナーシップを締結し、半導体メーカーのQualcommを含め3社で商用化を目指し開発を続けてきたという。同年12月には開発者支援プログラム「EVE 2020」を展開し、外部の開発者を巻き込みユースシーンの開発・検証にあたり、2020年12月に一般発売された。

 給電はスマートフォンから行い、左右にマイクロOLEDディスプレイを搭載する。自己位置推定機能(SLAM)、およびセンサーからの値を元に空間を認識する仕組みだ。スマートフォンの画面と同じ画像を見るミラーリングモードと、複数アプリのウィンドウを3D空間上に配置できるホームスクリーン「Nebula」を使ったMixed Realityモードがある。

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NrealLight。重さは約106gという小型、表示は3m先に100インチの仮想スクリーンが現れるイメージだという

 こうしたスマートグラスを5G対応スマートフォンと連動させることで、新たな表現力を獲得できるということになる。

5G+スマートグラス+MEC

 5G、NrealLightを使った事例として、先に挙げたように、東京国立博物館の展示(国宝『聖徳太子伝』)における「ARでたどる聖徳太子の生涯」プロジェクトがある。会期自体はすでに終了している(9月29日から10月25日)ものだが、会期中、かなりの話題となっていた。

 約千年前に描かれた国宝「聖徳太子絵伝」を直観的に体験しようという展示イベントで、東京国立博物館 法隆寺宝物館の中2階で実施された。「聖徳太子絵伝」自体が何かというと、聖徳太子の業績を描いた障子絵で、もとは法隆寺東院の絵殿を飾っていたが、江戸時代になって屏風に改装され、その後10面のパネル装にされた。

 その原寸大の複製画パネルをかつて法隆寺東院にあったときと同じようにコの字型に配置し、「魔法のグラス」(=NrealLight)と「魔法のルーペ」(スマートフォン)の2種類で鑑賞できるというもの。

 複製画パネルの前でARグラスをかけると、聖徳太子が弓を引いたり、黒駒に乗って富士山を飛び越えたりと、15のエピソードをアニメーションで見ることができる。アニメーションは東京国立博物館の監修により専門的な視点で作られており、絵伝の注目すべきポイントがわかりやすくまとめられている。

 また、5G対応のスマートフォン「Xperia 1 II」を複製画パネルにかざすと超高精細画像が重なって表示され、画面のピンチイン/アウトでスムーズに拡大縮小して鑑賞することができる。

 「聖徳太子絵伝」の超高精細なデジタルデータ自体は2018年に文化財活用センターとNHKエデュケーショナルが制作した「8Kで文化財 国宝『聖徳太子絵伝』」の際に作られたもの。ただ、8Kの解像度ということで、1面当たり約18億画素、ファイルサイズは数百ギガとなり、携帯デバイスで扱うのは容易ではない。

 そこで、そのデジタルデータをKDDIの基地局の中にあるエッジクラウドサーバーの中に保存しておくことで、スマートグラスやスマートフォンからのリクエストにすぐに応える形になっている。スマートグラス経由でユーザーが見ている場所を把握し、その部分を高精細なストリームデータでリアルタイムに届けるという仕組みだ。

 ベースになっているのは「MEC(Multi-access Edge Computing, Mobile Edge Computing)」と呼ばれる、ネットワークコンピューティング技術の1つ。「Mobile Edge Computing」は、5Gの超高速、超高信頼・超低遅延、多数同時接続の要件に不可欠な技術として標準化が進められたもの。現在は「Multi-access Edge Computing」として、5Gだけではなく、IoT機器、固定網、Wi-Fi端末などマルチアクセスに対応する規格になっている。

 ざっくりいうと、エッジコンピューティングとは、細かく区切られたエリアごとにエッジクラウドサーバー(MECプラットフォーム)を置き、クラウド上のサーバーの代わりにエリア内の端末へ瞬時にレスポンスを行う。図で示すように、基地局のエッジクラウドサーバーとの通信で済む。

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「ARでたどる聖徳太子の生涯」プロジェクトの仕組み
(発表資料より)

 従来、歴史的に貴重な作品はアクリルケース越しに見るという体験しかなかった。しかも相当年数が経ち、状態が悪い実物を展示すること自体、難しい。今回のような展示手法は新たな価値の提供につながるものといえるだろう。

【次ページ】5G時代のXR、デジタルツインへ

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