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  • 2021/05/24

家庭用コミュニケーションロボットは、性能ではなく「人の変化の物語」で魅力を伝えよ

森山和道の「ロボット」基礎講座

各企業がそれぞれの戦略で家庭用コミュニケーションロボットへの挑戦を続けている。だが、家庭用ロボットの魅力は機能やスペックのアピールだけでは伝わらない。家庭にロボットが入ることで、それぞれのユーザーの考え方や暮らしがどのように変化するのか、その物語を語ることが必要なのだ。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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コミュニケーションロボットへの挑戦再び

 家庭用のコミュニケーションロボットが、再び少し盛り上がっている。4月にはmixiが「Romi(ロミ)」を出し、ヤマハは5月に「Charlie(チャーリー)」を、パナソニックはクラウドファンディングでの好評を受けて来年に「NICOBO(ニコボ)」を発売する予定だ。ユカイ工学からはクッション型尻尾ロボット「Qoobo(クーボ)」の新シリーズ「Petit Qoobo」が2020年末に、「BOCCO emo(ボッコ エモ)」が2021年3月に発売された。


 もちろん既存のソニー「aibo(アイボ)」、GrooveX「LOVOT(ラボット)」、シャープ「RoBoHoN(ロボホン)」、講談社「ATOM(アトム)」等も、それぞれまだまだ頑張っている。多くは基本料金に加えて月額料金がかかる。加えて、ロボット向けの服やアクセサリーを展開している会社もある。


 以前も本コラムのバックナンバーで述べたが、筆者個人はコミュニケーションロボットのビジネスにはあまり肯定的ではない。現状の技術ではコミュニケーションロボットの要件を満たすことは難しいと考えているからだ。家庭用コミュニケーションロボットのニーズとされている市場の欲求を満たすには、現状では他の手段のほうがいいと考えている。

 だが、それはそれとして、現状の技術でビジネスをしたい、現状のロボットで市場を盛り上げたいという人たちの気持ちも理解はしている。「ロボット」は機械のサブカテゴリーの1つだが、これまでの機械とは何かが違うものがあると期待させる。この「ロボット」という言葉の魔力に惹きつけられてしまう人たちの気持ちも分かる。自分も基本的にロボットが好きだからだ。

深層学習を使った対話や歌、「弱いロボット」など各社それぞれの戦略

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 さてそれを踏まえて、家庭用コミュニケーションロボットの話だ。筆者には、各社の宣伝戦略・戦術を見ていて、いつも「足らない」と思うところがある。今回はそれについてお話しておきたい。

 本題に入る前に基本的なことをおさらいしておこう。家庭用コミュニケーションロボットは一般にバーバル型、ノンバーバル型の2種類に分けられる。要するに言葉を喋るか、言葉を発するのではなく身ぶりでのコミュニケーションを優先しているか、だ。ソニー「aibo」やGrooveX「LOVOT」などは後者である。

 各社はそれぞれの戦略でコミュニケーション方法を選択し、機能をアピールしている。たとえばmixi「Romi」には主に自然言語処理で用いられる深層学習モデル「Transformer」をもとに会話データを学習させた「Cooper」なる会話botが使われている。軽量高速に動作するbotで、9割の会話に「Cooper」が用いられることで、自然な対話ができるとされている。ちなみに残りの1割にはシナリオベースの会話ボットなどが用いられる。

 「Romi」は蔦屋家電などに動態展示されているので、興味がある方は店頭で会話を試してみるといい。筆者も試してみた。なるほど、返答はそこそこ返してくれる。雑音にも比較的強いようだ。ウェイクアップワードはいらない。mixiという会社がゲームを経てロボットに乗り出したことは確かに面白い。


 ヤマハ「Charlie」は「言葉をメロディーにのせて会話する」コミュニケーションロボットだ。つまり歌うロボットである。ヤマハのボーカロイド技術や自動作曲技術を活用したロボットで、とにかくなんでもミュージカルのように歌って返す。「ポップスからボサノバまで歌える」そうだ。対話エンジンはジェットラン・テクノロジーズの「Steer AI」である。

 「歌うロボット」と聞くと「子供がいる家庭向けなのかな」と思う方も少なくないと思うが、「ペット以上恋人未満のうたロボ」とされており、ヤマハの想定ターゲットは働く女性だそうだ。コンセプト動画を見ると分かるように、働いて疲れて帰ってきたあとの癒やしという想定だ。相手が歌うロボットで良いか悪いかはとりあえず別として、誰かに何かを喋ることがストレス解消につながることは確かだ。


 この2つは喋るロボット、バーバル型のコミュニケーションロボットで、ユーザーと会話が楽しめる点を売りにしている。いっぽう、パナソニック「NICOBO」はもごもごと片言しか喋らない。豊橋技術科学大学の岡田美智男教授が提唱する「弱いロボット」というコンセプトに乗ったロボットだ。撫でると喜んで尻尾を振るが、基本的にマイペースな同居人的な存在として設定されている。

 それなりの価格なのだがクラウドファンディング「Makuake」で試験的な販売が行われたところ、開始数時間後に終わってしまったことも話題となった。実際に申し込んだ人たちがどんな人たちかは知る由もないが、大企業であるパナソニック初の家庭用ロボットとはどんなものかという興味で申し込んだ人も少なくないだろう。

 なお、パナソニックの中にはロボット開発を行っているグループが複数あり、それぞれ独立に開発を行っているようだ。それが吉と出るか凶と出るかも興味深い。


【次ページ】家庭用ロボットの魅力は「人の変化の物語」でしか語り得ない

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