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  • 2019/08/29

コミュニケーションロボット活用の道筋は?ユカイ工学、PLEN Roboticsらの例から探る

森山和道の「ロボット」基礎講座

コミュニケーションロボットの実用化は難しい。多くのプレーヤーがひしめく「レッドオーシャン」であり競争環境は厳しい。しかしながら、画期的なアプリケーション、誰もが「これだ!」と納得する使い方は登場していない。だからこそなのか、今も多くのトライアルが続いている。それだけ人と接する機械のインターフェースとしての役割が「ロボット」という存在に求められているということだろう。最近、ベンチャーから発表されたコミュニケーションロボットへの取り組みを通して、考えてみたい。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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PLEN Roboticsの「PLEN Cube」

スマートスピーカーブームに後れを取ってしまった「PLEN Cube」

 1つ目はPLEN Roboticsの「PLEN Cube」だ。カメラによる顔認識と音声認識を行う、一辺が7.4cmの立方体型小型ロボットである。通信機能も内蔵しており、Webサービスとの連携も可能だ。「ビジネス版」と「デベロッパー版」の予約受付を開始しており、開発者向けにはSDK(ソフトウェア開発キット)も用意されている。ロボットとしては、上半分(首)を動かし、振ったりすることができる。ちょっとした動きができるところが、最近のスマートスピーカーとの違いだ。

 2019年7月31日に量産開始の記者会見を行った。2019年内の販売目標台数は1000台。3年間で1万台の販売を目指す。当初は2017年末に量産開始の予定だったこのロボットの話からは、スタートアップならではの教訓も読み取れる。

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「PLEN Cube」。外部機器と連携することができる

 「PLEN Cube」は、もともとはモバイルなAIアシスタントとして、パーソナルユースを想定してコンセプトが発表された。2016年3月には自社ブランドのロボットを欲しがっていた中国GoerTek(ゴアテック)と、合弁会社PLENGoer Roboticsを設立して量産のための製品開発を始めた。その後、2017年2月からはKickstarterとMakuakeでクラウドファンディングを行った。当時は中国市場を中心に、一気に数万台を発売する計画を、彼らは持っていた。ラスベガスで行われた「CES 2017」ではプロトタイプ実機の展示とデモを行った。

 しかし、2017年7月には合弁を解消。新たに設立されたPLEN Roboticsの完全オリジナルとしてスタートを切りなおした。ビジネス面での可能性を再検討した結果と報じられた。

 また当時、CPU(中央演算処理装置)として使うつもりだった「Joule」など組み込み向け製品の製造をIntelが中止したことにより、PLEN Cubeの開発スケジュールは再検討を余儀なくされた。ファームウェアも含めてすべて開発しなおしとなった。

 だがそれでも、当時は2018年前半には出荷を予定していた。PLEN Cubeはロボットなので、駆動部分がある。それもあって音声認識や画像認識などの精度を上げるためのトライ&エラーなど1つひとつの技術要素の開発にとにかく想定以上に時間がかかってしまったという。

 筆者は、かなり早期の段階で代表の赤澤夏郎氏から「PLEN Cube」のイメージスケッチを見せてもらった1人である。

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「PLEN Cube」とPLEN Roboticsの赤澤夏郎氏
 赤澤氏は前回のロボットブームだった2005年ごろにもロボット事業に参入していた。ロボット再参入を決めたのは、2012年ごろからの、いわゆるメイカー・ムーブメントの勃興、小規模製造文化の誕生を感じ、それに応じたCOO(最高執行責任者)の富田敦彦氏らとの出会いがあったからだと2016年ごろに伺った。

 そのあとの動きが遅かったのが残念だが、ともかく今回、2019年8月から量産開始となった。赤澤氏は量産を迎えるまでに「数々の想定外トラブル」があったと記者会見で改めて語っていた。ハードウェアの量産は難しい。そうこうしているうちに、市場ではPLEN CUBEのコンセプトが発表されたころにはそれほどでもなかった「スマートスピーカー」が本格的に普及したのはご存じのとおりである。

パーソナルアシスタントからBtoBの顔認証ロボットへ

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 コンセプト発表当初はノンバーバル、つまり身ぶりだけでコミュニケーションする、パーソナルなアシスタントだったPLEN Cubeは、今回のビジネスモデルでは、音声で人とやり取りする、BtoB製品となった。コンセプト発表後、業務用途での問い合わせが多かったことが、コンセプトを切り替えた理由の1つだという。

 具体的な仕事内容は、顔認証機能を使ったメニュー紹介と注文受付と、スマートロックと連携した入退館管理である。ファブラボ「おおたfab」のほか、学童保育の「ウィズダムアカデミー」などで試験導入されており、顔認証サービスの実現を目指す。最初は子供たちの入退出管理と滞在時間の記録に用いるが、将来的には職員の勤怠出管理も目指す。

 このほか、医療・介護分野でコミュニケーションロボット・AI活用ソリューションを開発するシャンティによるロボットと連携する業務支援(受付・問診・説明)システム「パラメディS」を使ってPLEN Cubeが定型的な説明をするというデモも行われた。

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「PLEN Cube」と「パラメディS」の連携

 今後、PLEN Cubeが居場所を見いだすことができるのか。デモそのほかを見る限りでは、なかなか困難な道のりなのではないかと思ったが、入退出管理について「タブレットでいいんじゃないか」という質問に対しては、「ちょっとした動きがあるところがいい」とウィズダムアカデミー代表取締役の鈴木良和氏は語った。

 このように、ロボットに価値を見いだしてくれるユーザーがいれば、そして、ロボット自体も何らかの役目を果たすことができれば、社会に居場所を見つけることができるかもしれない。

【次ページ】「シーマン」の技術も投入、共感を重視するユカイ工学

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