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  • 2020/09/30

日本のサービスロボットの残念すぎる現状、「やっただけ」の実証実験になっていないか

森山和道の「ロボット」基礎講座

サービスロボットの実証実験が続いている。9月には東京都内で2つの大型ビルが開業し、それぞれでロボットの実証実験も行われた。「ロボット」という存在が、明るい未来や先進性の象徴として扱われているからだろう。しかし、実証実験の枠を超えて活用される例はいまだに少ない。実際の活用例を増やすためにはロボットの使い方を把握しているSIerの活用ももっと必要だ。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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東京ポートシティ竹芝で実証実験を行ったTHKの自律移動型ディスプレイロボット

週末ロボットショーケースとなった新商業施設「HANEDA INNOVATION CITY」

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「HANEDA INNOVATION CITY」の足湯スカイデッキ

 羽田空港から一駅の「天空橋」駅直結の「HANEDA INNOVATION CITY」が9月18日に本格稼働した。先端技術や日本文化発信拠点とされており、ホテル、日本食体験レストラン、飛行機を見ながらのんびりできる無料の「足湯スカイデッキ」のほか、ビジネスマッチングセンターや研究拠点も入っている。グランドオープンはまだ先で2022年とされている大型開発だ。

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avatarinのアバターロボット「newme(ニューミー)」。遠隔操作体験もできた

 開業直後の18日から22日までの週末連休中はオープニングイベントとされ、筆者も初日に足を運んでみた。各種ロボットの実証実験が行われると聞いたからだ。清掃、警備、配送・移動、観光案内などをテーマに実に30種類以上のロボットが集められた。これだけの数のロボットが実際の商業施設で、一般の方も大勢いる中で動き回る機会はあまりない。東京モノレールと京浜急行電鉄が新設した新改札口「HICity 口」を出ると、さっそく、警備ロボットが出迎えてくれた。

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セントラル警備保障による警備ロボット「Perseusbot」

 無人運転車やアバターロボット、清掃ロボット、人やロボットのあとを追従する搬送ロボットなどが人目を集めていたが、中でも大人気だったのが、鹿島建設の「Spot」だった。Boston Dynamicsが開発し、ソフトバンクロボティクスと一緒にプラットフォームとしての用途を探索中の4足歩行ロボットだ。最近は福岡ソフトバンクホークスの応援団として人型ロボット「Pepper」と「いざゆけ若鷹軍団」などを一緒に踊っている姿も、少なくともネット上では話題になっている。

 「Spot」は胴体の上には10kg程度のものを乗せて動くことができる。アームやカメラなどを搭載することで、鹿島建設では遠隔操作による計器点検やトンネル工事の巡視など、現場での用途を探索している。Spotには決められたルートを自動巡回するなど自律歩行の能力もあるが、HANEDA INNOVATION CITYでは、ラジコン操作で歩行者用デッキの上をただ歩いているだけだった。しかし見事な安定性で多種多様な動きを見せ、もうそれだけで多くの人を魅了し、注目を一身に集めていた。エンターテイメントもロボットの用途の1つではあるし、「これを使って何かできないか」と少なからぬ人に用途開拓を考えさせてしまう力があるロボットだ。


 個人的にはNECネッツエスアイが代理店販売を行っている自律走行型配送ロボット「YUNJI DELI」が気になった。合計50kgまで収容できる三段のトレイを持つ配送ロボットで、デュアルカメラとLIDARを使って自律走行ができる。ほとんどの自律配送ロボット同様、マップは最初に人が操作して作成し、その中でウェイポイントを指定して各目的地とするかたちで運用する。インフラへの磁気テープ等は必要ない。特徴は前後両方向に進めること。つまりUターンする必要がないので、70cm程度の通路でも走行できる。金額はリースで、3年契約月額11万円からとなっている。


 「HANEDA INNOVATION CITY」開業で多くのロボットが実証実験をしていたのは東京都立産業技術研究センター(都産技研)と中小企業が開発した各種ロボットに加えて、東京都が実施しているサービスロボットの実証実験「Tokyo Robot Collection」が行われていたからだ。「社会実装モデルをショーケース化する」こと、そして技術と未来の姿を発信することが「Tokyo Robot Collection」の目的とされているので、多くの人が来館して「ロボットがいる風景」を体験したこと自体が成功ということなのだろう。



ロボット警備や品出しを行うスマートビルも登場

 「Tokyo Robot Collection」は、9月14日に開業した「東京ポートシティ竹芝」でも17日までの3日間、行われていた。こちらのテーマは「都市型複合施設のニューノーマル実現に向けた実証」。6種類のロボットが館内を動き回って発熱検知や人の呼び込み、ロボットによる搬送や消毒のデモなどを行っていた。本社が入居するソフトバンクのロボットのほか、avatarin社の「newme」はこちらでも使われていた。

 実証実験だけではなく、「東京ポートシティ竹芝」には警備や清掃においてロボットが活用されることも決まっている。SEQSENSE社の警備ロボット「SQ-2」は立哨だけでなく、三菱電機製のエレベーターとも連動して複数フロアをまたいだ動哨を行う。三菱電機の「スマートビルサービスプラットフォーム」を使った仕組みで、ロボットとエレベーターの連携にはMQTT(Message Queuing Telemetry Transport)を用いている。ロボットと人間の相乗りは原則としてできない。ロボットがエレベーターを呼び出すと、そのエレベーターはロボット専用となる仕組みだ。


 また、ビル1Fのローソンは「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」として、Telexistence社の遠隔操作ロボット「Model-T」が店舗バックヤードでドリンクなどの品出しを行う様子をガラス越しに見ることができた。「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」はTelexistence社が直接、加盟店オーナーとして運営している店舗だ。遠隔操作ロボットの使い方としては、最も難しい分野に対して、最も難しい形状で挑んでいるとは思うが、今は今後の発展を期待している。

 ロボットとしては、左右それぞれで異なる機能を持った腕の使い方が見どころだ。せっかくガラス越しで見えるようにしてくれているので、機会があれば見に行ってもらいたい。ただし、作業自体が品出しなので、そのタイミングと合わなければ、なかなか見ることはできないかもしれない。


【次ページ】「やっただけ」になっていないか?実証実験の先を見据えてSIer活用を

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