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  • 2021/09/16

「AI覇権」を本気で狙う中国、AI企業の8割が集まる「AI先導区」では何が起きている?

中国は2019年、AI企業を集約し競争力を高めることを目的に、上海など3都市を「国家人工知能創新応用先導区」(以下、AI先導区)と指定した。そして2021年2月、中国工業情報化部は北京などの5都市を追加で指定し、AI先導区は合計8カ所となった。この8つのAI先導区には、すでに中国のAI企業の約8割が集まり、激しい競争を繰り広げている。国家戦略の「中国製造2025」とも連動するこのAI先導区は今後、どのような場所へと育ち、中国のAI産業はどう成長していくのか。カギを握るのはビジネスへの応用だ。

ITジャーナリスト 牧野武文

ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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中国は必ずAI覇権を取りに来る
(Photo/Getty Images)


AI企業を集約する8つの「AI先導区」とは

 2021年2月、中国工信部は北京市など5都市を、国家人工知能創新応用先導区(AI先導区)に指定した。2019年に、すでに上海など3都市が指定済みであるため、AI先導区は合計8カ所となった。この8カ所にAI企業を集約し、競争とシナジー効果の両方を狙う戦略だ。

 このAI先導区は、中国の国家戦略である「中国製造2025」とも連動している。2025年までに中国を製造強国とするために、さまざまな促進策を打ち出している。テーマは「製造大国から製造強国へ」で、量から質への転換が求められ、「イノベーション主導型国家建設」「チャイナドリーム」などという言葉が並ぶ。人工知能(AI)は、中国製造2025にとっても重点分野とされ、2025年に4,000億元(約6.7兆円)の市場を創出することを目標としている。

 どこの国にもある華々しい言葉が並んだ産業促進政策だが、中国を恐れなければならないのは、こういう絵に描いた餅のような計画を公表すると、結果がどうなるのであれ、実行するということだ。


 AI先導区の公表とほぼ同じ時期に、国務院は「国家総合立体交通網規画綱要」を発表している。これは中国を4つの経済圏を中心として、その他の都市と結ぶ交通網を2035年までに整備するというものだ。

 4つの経済圏とは、長三角(上海、杭州など)、京津冀(北京、天津など)、粤港澳(広州、深セン、香港、マカオなど)、成渝(成都、重慶など)。8つのAI先導区も、この4つの経済圏に設置されている。

4つの経済圏と8つのAI先導区
経済圏 AI先導区 焦点領域
長三角 上海 製造、医療、交通、金融
杭州 知能都市、製造、金融
京津冀 北京 製造、自動運転、智能都市、オリンピック
天津 製造、智能港湾、智能社区
済南・青島 製造、医療、家庭、軌道交通
粤港澳 広州 IoT、ソフトウェア、インフラ
深セン 医療健康、金融、ブロックチェーン、交通、製造
成渝 成都 医療、金融


 このような経済圏や都市を結ぶ交通は「123交通」と命名されている。すべての人が1時間で通勤でき、すべての都市間は2時間で移動でき、すべての経済圏は3時間で移動できるというものだ。経済圏間を3時間で結ぶのは、現在の高鉄(中国版新幹線)の高速化だけでは難しいとして、リニア新幹線を新たに敷設する計画まで検討されている。

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国務院は、4つの経済圏、各都市をリニア新幹線、高鉄、鉄道などで3時間以内で往来ができる交通網を2035年までに整備をする計画を公表している。AIだけでなく、中国の製造業は4つの経済圏が中心となり回っていくことになる

 「国家人工智能創新応用先導区発展特色」(賽迪顧問)によると、AI先導区として指定された8都市のAI産業規模は、中国全体の80.9%を占め、AI関連企業数では83.2%を占めている。つまり、中国のAI産業のほとんどがこの8つのAI先導区に集約されていることになる。

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現状、中国のAI産業の約8割をAI先導区となった都市が占めているが、AI先導区の指定によってさらに集約化が進むことになる
(出典:「国家人工智能創新応用先導区発展特色」(賽迪顧問))

【次ページ】AI先導区は高速でユニコーン企業を生み出す?

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