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  • 2020/12/03 掲載

テンセントの人工都市「ネットシティ」とは? BATH始め注目企業が深センに集まるワケ

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南に香港と接する深センは、金融、電子産業の都市であり、「深セン速度」と呼ばれる卓越したスピードで発展してきた。その深センで、テンセントが人工都市「ネットシティ」を建設する計画を進めている。東京ドーム40個分の敷地に、オフィス、住居、商業施設などが建設予定だ。さらに、この地域にはアリババを始め主要テック企業が続々と拠点を設けている。いずれもユニークな外観デザインの建物で、街全体が“建築デザインの美術館”とも言える姿になりそうだ。深センが経済特区になって40年。再び深センの変貌が始まろうとしている。

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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テンセントが計画する人工都市「ネットシティ」とは?
(出典:NBBJより引用)


近未来を生きる都市、深セン

 広東省深セン市が、経済特区になり40周年を迎えた。2020年10月14日に行われた40周年の記念式典には、習近平国家主席も出席した。深センが市に昇格をしたのは1979年。翌1980年に、改革開放政策の目玉として経済特区に指定された。当時の中国は、自由港がある香港が世界への窓口になっていた。その香港に接する深センは、香港への窓口の役割を担って経済特区に指定された。

 改革開放が進むと、香港の製造業はこぞって、人件費の安い深セン、東莞(トウカン)などに工場を作り始めた。90年代までは、深センは香港経済の恩恵を受けながら成長をしてきた。しかし、2000年代になり、テンセントやファーウェイというテック企業が頭角を現すと、深センは自ら光を放ち始めた。現在では、3万社のハイテク企業がひしめき、深セン市のGDPの34%を占めている(2019年)。


 深センを拠点とするテンセント、ファーウェイだけでなく、アリババ、小米(シャオミ)、百度(バイドゥ)、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)などの主要テック企業が深センにも拠点を置いている。深センには証券取引所があり、電子部品の取引市場があり、人材も集まってくる重要拠点だからだ。これらの企業の特徴的な社屋については、後半で紹介する。

 さらに、深センは急速に成長した都市なので、市民の年齢が若い。30、40代が中心で、少子高齢化から最も縁遠い1400万人都市だ。消費欲は旺盛で、新しいテクノロジーを利用したサービスにもすぐに反応する。深センは、他都市と同じ時間軸にありながら、近未来を生きている都市なのだ。

テンセントが計画する新都市「ネットシティ」とは

 その深センが、さらに大きく変わろうとしている。テンセントは、深セン大鏟湾に「Net City(ネットシティ)」と呼ばれる新都市を建設する計画を発表している。面積は200万平方メートル(東京ドーム40個分)で、2027年に完成予定だという。

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東京ドーム40個分の敷地に建設されるテンセントの人工都市「ネットシティ」。データ駆動型のデザイン手法が用いられ、徒歩移動だけで、生活と仕事が可能になる都市になる予定
(出典:NBBJより引用)

 このネットシティが注目されているのは、米国シアトルの設計事務所「NBBJ」が手掛けるということも大きな理由になっている。NBBJは、グーグル、アマゾン、サムスンなどのテック企業の社屋の設計を行い、中国でもテンセントグローバル本部やアリババ国際運営本部などを手掛けている。

 多くのテック企業がNBBJに設計を依頼する理由は、NBBJの設計手法にある。同社が用いる「コンピュテーショナルデザイン」は、その施設の人の移動データに基づき、シミュレーションをしながらデザインをしていくデータ駆動型の設計手法で、その合理性がテック企業に歓迎されている。ネットシティもこの手法が存分に活かされた都市になる予定だ。

 一般的に都市設計を行うときは、道路から始める。道路が都市の骨格となり、建築物が肉となり、都市ができあがる。しかし、このような機能的な都市は暮らしづらいことが珍しくない。仕事や生活をするためには、車を利用するか、長い距離を歩かなければならなくなる。景観も無機的で、威圧感や虚無感を感じてしまう。

 そこで、ネットシティでは、自動車や鉄道はすべて地上と地下に収納し、上層は歩道と自転車だけで構成される。人の動きは緻密にシミュレートされ、住居、オフィス、商業施設間の歩行距離が最小になるように配置される。また、建築物は1階建てから30階建てまでが意図的に配置され、有機的な景観を作り出す。

 つまり、日常生活は徒歩だけで済むようになり、ネットシティの外に出る場合には地上や地下に下りて、自動車や地下鉄を利用することになる。

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自動車道路と徒歩エリアは階層で分離され、日常の移動は徒歩だけで可能になるように、オフィス、住居、商業スペースが配置される。建物は1階建てから30階建てまでを景観を主眼にして配置される
(出典:NBBJより引用)

【次ページ】BATHも勢ぞろい、ザハなど有名設計事務所が手掛ける「オフィス建築」を写真で紹介

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