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- 2020/12/03 掲載
テンセントの人工都市「ネットシティ」とは? BATH始め注目企業が深センに集まるワケ
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近未来を生きる都市、深セン
広東省深セン市が、経済特区になり40周年を迎えた。2020年10月14日に行われた40周年の記念式典には、習近平国家主席も出席した。深センが市に昇格をしたのは1979年。翌1980年に、改革開放政策の目玉として経済特区に指定された。当時の中国は、自由港がある香港が世界への窓口になっていた。その香港に接する深センは、香港への窓口の役割を担って経済特区に指定された。改革開放が進むと、香港の製造業はこぞって、人件費の安い深セン、東莞(トウカン)などに工場を作り始めた。90年代までは、深センは香港経済の恩恵を受けながら成長をしてきた。しかし、2000年代になり、テンセントやファーウェイというテック企業が頭角を現すと、深センは自ら光を放ち始めた。現在では、3万社のハイテク企業がひしめき、深セン市のGDPの34%を占めている(2019年)。
深センを拠点とするテンセント、ファーウェイだけでなく、アリババ、小米(シャオミ)、百度(バイドゥ)、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)などの主要テック企業が深センにも拠点を置いている。深センには証券取引所があり、電子部品の取引市場があり、人材も集まってくる重要拠点だからだ。これらの企業の特徴的な社屋については、後半で紹介する。
さらに、深センは急速に成長した都市なので、市民の年齢が若い。30、40代が中心で、少子高齢化から最も縁遠い1400万人都市だ。消費欲は旺盛で、新しいテクノロジーを利用したサービスにもすぐに反応する。深センは、他都市と同じ時間軸にありながら、近未来を生きている都市なのだ。
テンセントが計画する新都市「ネットシティ」とは
その深センが、さらに大きく変わろうとしている。テンセントは、深セン大鏟湾に「Net City(ネットシティ)」と呼ばれる新都市を建設する計画を発表している。面積は200万平方メートル(東京ドーム40個分)で、2027年に完成予定だという。このネットシティが注目されているのは、米国シアトルの設計事務所「NBBJ」が手掛けるということも大きな理由になっている。NBBJは、グーグル、アマゾン、サムスンなどのテック企業の社屋の設計を行い、中国でもテンセントグローバル本部やアリババ国際運営本部などを手掛けている。
多くのテック企業がNBBJに設計を依頼する理由は、NBBJの設計手法にある。同社が用いる「コンピュテーショナルデザイン」は、その施設の人の移動データに基づき、シミュレーションをしながらデザインをしていくデータ駆動型の設計手法で、その合理性がテック企業に歓迎されている。ネットシティもこの手法が存分に活かされた都市になる予定だ。
一般的に都市設計を行うときは、道路から始める。道路が都市の骨格となり、建築物が肉となり、都市ができあがる。しかし、このような機能的な都市は暮らしづらいことが珍しくない。仕事や生活をするためには、車を利用するか、長い距離を歩かなければならなくなる。景観も無機的で、威圧感や虚無感を感じてしまう。
そこで、ネットシティでは、自動車や鉄道はすべて地上と地下に収納し、上層は歩道と自転車だけで構成される。人の動きは緻密にシミュレートされ、住居、オフィス、商業施設間の歩行距離が最小になるように配置される。また、建築物は1階建てから30階建てまでが意図的に配置され、有機的な景観を作り出す。
つまり、日常生活は徒歩だけで済むようになり、ネットシティの外に出る場合には地上や地下に下りて、自動車や地下鉄を利用することになる。
【次ページ】BATHも勢ぞろい、ザハなど有名設計事務所が手掛ける「オフィス建築」を写真で紹介
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