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  • 2021/10/01

IKEAやネスレも実践、ガートナーが説くサプライチェーン変革で重要な3つのポイント

コロナの世界的流行により、業績の悪化だけではなく、従業員をはじめとしたステークホルダーが疲弊した企業も多い。しかしそうした中でも、サプライチェーンは人々の元に製品やサービスを届けるという役割を果たし続けている。ガートナー社主催「Gartner Supply Chain Symposium/Xpo」で、基調演説を行った同社VP アナリストのダナ・スティファー氏とシニアディレクターアナリストのサイモン・ベイリー氏の両名は、コロナなどで疲弊した企業が立ち直り発展するための3つの要素、サステナブルな利益の追求、従業員と企業との目標の共有、そして価値を構築するエコシステムについて語った。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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混乱するサプライチェーンを再構築する上で重要な3つのポイント
(出典:ガートナー)

※本記事は9月13日~15日開催「Gartner Supply Chain Symposium/Xpo 2021」の内容をもとに再構成したものです。

将来にわたる「サステナブルな利益」を考えるべき

 コロナの世界的流行により、サプライチェーンにはさまざまなフラクチャー(断裂・破壊)が生まれた。業績の悪化だけではなく、従業員のコロナ感染で疲弊した企業も多い。しかしそんな中でもサプライチェーンは数々のイノベーション、AIの導入などにより人々の元に製品やサービスを届けるという役割を果たし続けている。

 人々の命を救うワクチンをこれまでにない速度でデリバリーできたことなど、サプライチェーンは困難な状況の中でも進化を遂げている。

 しかしこうした進化する需要に合わせたサプライチェーンの発展には、相応のコストが必要だ。大型コンテナは今や世界の物流の1割を担うが、それは物流の動脈である運河をせき止めてしまうサイズに成長した。

 サプライチェーンは至るところに伸長し、同時に自然資源にも影響を与えている。世界の気温が1.5度上昇すれば壊滅的な被害をもたらすとされるが、今こうした危機に対応する道義的責任も問われている。

 これらのフラクチャーに対応することなしに、地球環境と企業としての利益を継続させることは不可能だ。どの業種にも共通していることだが、サプライチェーンは特に企業と顧客を結ぶフロントランナーとして機能し続けてきた。

 ガートナー社の調べでは、過去12ヶ月に55%もの従業員が健康の不調を訴えており、短期あるいは長期における雇用のサステナビリティにも影響を及ぼした。

 サプライチェーンのリーダーとして、こうしたフラクチャーを癒やし、継続的な利益につなげるためには何が必要となるのだろうか。

 まず、サステナビリティと利益という2つの言葉を考える必要がある。企業としては利益を最重要視しがちだが、単に今現在の利益、収支上の利益だけではなく、将来にわたる「サステナブルな利益」を考えるべきだ。そしてサステナブルという場合、それが環境問題を指すだけの言葉ではないということも考慮すべきである。

 サステナブルな利益とは、長期に渡る利益であり、変化に対応していくということを意味する。今回のコロナに限らず、ビジネスには思いがけない危機が訪れることもあれば、社会的利益のためにコストを払う必要もある。そうした変化に耐え、対応する力を備え、レジリエンスを持つことこそが長い目で見た成功につながる。

 たとえば、製造を他国でアウトソースする企業が、現地で大気汚染により人々に健康被害を与えるという場合、企業は単に数字上の利益を追求するのではなく、大気汚染を減らすことにより長い目で見た、すべてのステークホルダーにとっての利益を考えるべきなのだ。

デジタライゼーションとESGで記録的な増収を生んだ企業とは

 現在ではこうした株主ではなくステークホルダー全体を考慮していくとする企業が全世界で4000社を超えている。

 例として挙げられるのがシュナイダー・エレクトリック社だ。同社はステークホルダー重視の方針に切り替え、気候変動への対応、機会平等、ローカルコミュニティへのサポートなどによるサステナブルなデベロップメントという目標を打ち立てた。

 主にデジタライゼーションと低カーボン排出の電化に取り組んだ結果、今年7月同社はサステナブル・ソリューションに共感を抱いたカスタマーの増加により、記録的な増収とキャッシュフローの増加を報告した。

 このように、ESG(Environmental Social and Corporate Governance)を特定し、それがビジネス、ファイナンス、オペレーションにどのようなインパクトを与えるのかを分析することは有用だ。大企業の94%はすでにESGメトリックを持つが、肝心なのは具体的な数値を得るという点だ。

 では具体的なアセスメントとはどのようなものか。まずステークホルダーにインタビューし、彼らの懸念をY軸に表し、ビジネスに対する潜在的インパクトをX軸に表す。たとえば地球温暖化効果ガス(GHG)をこのグラフで表してみる。ステークホルダーグループは製品サービスのカーボンフットプリントの透明性を要求する。彼らは企業が実際にどう行動を起こすのかを評価する。

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GHGへの取り組みをアセスメントする。顧客にとって懸念事項なら右上に移動する
(出典:ガートナー)

 ウォルマートは2030年までに同社のサプライヤー網全体で10億トンのGHG削減を打ち出した。この例では、顧客にとって地球温暖化効果ガス削減が非常に大きな懸念事項であれば、GHG点は右上に移動する。なぜなら、もし企業が顧客の期待に応えられない場合、ビジネスロスにつながる可能性があるためだ。ハーバードビジネススクールが最近行った調査によると、1700の黒字企業に対し、環境、メンタル面のコストをフルに換算した場合、15%の企業の利益が完全に帳消しになることがわかった。

 このようにグラフなどで具体化することは大きな助けとなる。ステークホルダー、サプライヤー、自社およびサービスプロバイダーの経営陣、従業員などをY軸に、ビジネス倫理、ビジネスモデル、社会資源から人的資源などをX軸に、さまざまなリスクを考慮することができる。そしてそこから得られた洞察により、ビジネスに変化を生み出すことも可能となる。

 原因の特定から解決に向かうためには行動を起こす必要がある。一つの例がフードプロセス業界だ。大手食品企業のゼネラル・ミルズ社は地球温暖化問題に対応するために、土壌改良に取り組むことにした。食品を生み出す農業の礎となる土壌の問題に関わることが、サステナブルな食料供給につながるという考え方だ。彼らは干ばつや洪水といったリスク要素、人口増に対応する食料供給などを考慮し、2030年までに100万エーカーの農地を再生農業用地とする方針を発表した。土壌への負担を軽減し、作物に多様性を持たせることでサステナビリティを超えて農業の再生を真剣に考えていくという。

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