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  • 2021/11/02 掲載

スペースXの評価額「ユニコーンの100倍」11兆円に、期待を集めるスターリンク計画とは

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イーロン・マスク氏が創業した電気自動車メーカー、テスラの時価総額は1兆ドル(約113兆円)を突破。短期間でトヨタ(32兆円)の3倍以上に成長し、多くの投資家を驚かせた。しかし、このテスラを凌ぐ可能性を秘めるのが、同じくマスク氏が立ち上げた宇宙開発企業のスペースXだ。未上場ながら、すでにその評価額は11兆円を超えたといわれている。スペースXがなぜ注目されるのか、その理由を探ってみたい。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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イーロン・マスク氏のスペースX社の評価額が11兆円を超えた。その理由は?
(Photo/Getty Images)

評価額11兆円、ユニコーンの100倍のスタートアップ「スペースX」

 日本ではGAFAM企業関連の報道が多いが、米国ではイーロン・マスク氏のビジネス動向を報じるニュースのほうが多い印象だ。

 マスク氏といえばいくつか事業を手掛けているが、その筆頭は電気自動車(EV)メーカーの「テスラ」だろう。

 欧米市場におけるEVシフトの追い風を受け、テスラの収益は順調に伸びている。このほど発表された709月期の決算では、売上高が137億6000万ドル(約1兆5698億円)と前年同期比で56%増、前期比で15%増と好調だ。また純利益も16億2000万ドル(約1848億円)と前年同期の3億3100万ドル(377億円)から5倍に拡大した。

 2021年10月21日時点のテスラの時価総額は8571億ドル(約97兆円)と、トヨタ(約32兆円)の3倍ほどに拡大している。

 テスラの躍進には誰もが目を見張るところだが、そんなテスラを超える可能性があるとみられているのが、マスク氏の宇宙事業「スペースX」だ。

 CNBCが2021年10月8日に報じたところでは、スペースXは既存の投資家に対し2回目の株式販売を実施。情報筋によると、一株560ドルで、7億5500万ドル分の株が販売され、同社の評価額は2月時点の740億ドル(約8兆4424億円)から1000億ドル(約11兆4000億円)に上昇したという。

 評価額10億ドル以上で未上場のスタートアップは、その希少性、将来性や期待の高さなどから「ユニコーン」と呼ばれ注目されるが、スペースXはすでにその100倍の規模となっているのだ。

 モルガン・スタンレーがこのほど実施した投資家意識調査でも、多くの機関投資家や産業専門家らがスペースXの価値はテスラより高くなるだろうと予想していることが明らかになった

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スペースXにはテスラ以上のポテンシャル
(Photo/Getty Images)

スターリンク、地球全体をデジタル化

 スペースXの最近の動向を見ていれば、なぜ同社がテスラを超える可能性があるといわれるのか、その理由が見えてくる。

 理由の1つは、スペースX社が最近矢継ぎ早に展開させる宇宙インターネット事業「スターリンク」だ。

 これは地球の周回軌道に張り巡らせた小型衛星によるネットワーク(コンステレーション)によって、地球全体でインターネットを利用できるようにするという壮大な事業。現時点で、すでに1740基の衛星が打ち上げられ、米国やカナダなどでベータ版サービスの提供が開始されている。月額99ドルで、サービス利用者は10万人以上と報告されている。

 現在までに明らかにされている計画によると、衛星の数は最終的に1万2000基となり、その費用は約100億ドル(約1兆1412億円)に達するという。

 インターネットは、既存のプロバイダを使えば、十分な速度で利用できる。スターリンクのネットは、既存サービスに比べ、どのようなセールスポイントがあるのか。

 スターリンク・インターネットの最大の利点は「場所を選ばず」に高速・低レイテンシーのネットが利用できる点にある。既存の通信インフラがカバーできない山間部や過疎地、また通信インフラを持たない途上国・新興国などで高速インターネットを提供できるようになる。

 主権国家においては、当該国当局の許可が必要となる。日本では、2022年にKDDIを通じて、スターリンクのネットサービスが利用できるようになる見込みだ。

 途上国・新興国への高速インターネット提供は、グーグルやフェイスブックが長年取り組んできた領域でもある。アフリカなどで通信機器を載せたバルーンを飛ばし、ネットを提供するという試みが実施されてきたが、最近の報道ではプロジェクトの手仕舞いが進められている模様。スターリンクの登場が影響したのかもしれない。

 スターリンク・インターネットは現在、米国、カナダ、英国、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、フランス、オーストリア、オランダ、ベルギー、アイルランド、デンマークなど18カ国でベータ版サービスが提供されている。このほか、2021年10月にメキシコ、2022年に日本とインドでのベータ版提供が予定されている。

 マスク氏によると、2021年内にはユーザー数50万人に達する見込みだ。

【次ページ】飛行機、船、トラックでも高速インターネットが利用可能に

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