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  • 2021/12/28 掲載

SDGsとロボットの「切っても切れない」関係、つながる世界で「全体最適」の知見活かせ

森山和道の「ロボット」基礎講座

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世界が取り組むべき目標をまとめたSDGs。社会課題を解決するための技術の一つであるロボットはどう関わり、貢献できるのだろうか。そこにはどんなビジネス機会があるのか。まだまだ新型コロナウイルスの影響が続く世界の今後を考えてみたい。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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実はSDGsとロボットは切っても切れない関係にある
(Photo/Getty Images)

より良い社会と環境を目指す行動目標「SDGs」

 今回は前置きが長くなることをご容赦いただきたい。SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際社会の共通目標のことで、2015年に国連総会で採択された。SDGsは17のゴール・169のターゲット(具体的な目標)から構成されている。環境保護と結び付けられて語られていることが多いが、実際には貧困や飢餓、ジェンダーギャップ解消、経済成長や技術革新、教育や雇用、まちづくり、平和と公正、パートナーシップなど幅広く、包括的に、先進国が取り組むユニバーサル(普遍的)な目標が取り上げられている。普遍的であるがゆえに多くのプレーヤーが関連する。

 SDGsは突然生まれた考え方ではない。2015年を目標として、2000年に国連で採択されたミレニアム開発目標「MDGs」を下敷きとしつつ、より発展した形として、途上国だけではなく先進国も対象として設定された目標がSDGsだ。重要なことだが、各国政府はこれに合意している。

 日本政府も2016年にSDGs推進本部を設置。2020年末には「SDGsアクションプラン2021」を発表している。単なるプランではない。SDGs関連予算は約6.5兆円となった。今後、さらに多くの事業機会、雇用創出があると考えられている(経産省の資料などを参照)。

 これらを受けて、ビジネス領域でもSDGsの存在感がどんどん増している。大企業の記者会見では、最後のスライドに「この技術はSDGsの目標○番に貢献するものです」という記載が増えた。

 そこらへんのSDGs関連本をめくってみると「大企業だろうが中小企業だろうが、SDGsに取り組むことはコストではなくビジネスチャンスだ」「社会や環境により良い影響を与えることが収益にもつながる」といったことが必ず書いてある。たとえば、SDGsを経営理念に取り込むことで、取引先との関係性が向上し、ブランディングやリクルートにもつながる。それどころか今後はSDGsに取り組んでいない会社は社会から求められなくなる。いま取り組まないと収益はやがて先細り、取り残されるぞ、というのが、それらの本の主張だ。ただし、目指さないからといって何か罰則のようなものがあるわけではない。

 繰り返すが、SDGsは国連総会で採択された世界を持続可能にするための目標である。つまり背景には、これらを重視しないと世界全体が持続可能ではなくなってしまうという強い危機感がある。またSDGsは経済発展も目標の一つに掲げているので、各企業の成長戦略のためにも、むしろ当然のように取り込んで重視しなければならないというのは正当な理屈ではある。

 だが、そうは言われても今ひとつピンと来ない。そういう人も多いのではないだろうか。実は、私自身もその一人だった。社会的責任(CSR)の観点からは取り組むべきかもしれない。だけど、結局は経済的価値が重視されるのがビジネスの世界なのではないか、と。

 しかし最近になってようやく、この潮流の意味が理解できるようになってきた。もともとビジネスとは社会課題を解決するためのものだ。地球規模の困りごと、環境や社会への負の影響を減らすための取り組み、課題解決がビジネスになるのは当然だ。課題解決力を持つ企業にとっては今後のビジネスの方向を見定めることもできる。皆が健康かつ豊かになったほうが市場も安定する。CSRよりもむしろCSV(社会共通価値の創造)のほうがSDGsには近いのかもしれない。いずれにしても、それらの延長線上にあるのだろう。

 これらは、企業がSDGsを経営戦略と整合するための指針を示す「SDGs Compass」に書いてあることなのだが、そういう話がようやく徐々に理解できるようになってきた。

 同時に、本連載のテーマであるロボットとSDGsの関わりも強く感じるようになってきた。というよりも、これまでロボット産業が目指していたことのくくり方がちょっと変わる、と思ったほうがいいのかもしれない。そんなふうに感じるようにもなってきたのである。私のなかでもまだおぼろげで、くっきりと形になっているわけではないのだが、今回は、それについて皆さんと共有して一緒に考えたいと思って本稿を書いている。


「ウェディングケーキモデル」で理解するSDGs

 SDGsの17のゴールを理解するために、しばしば5つのP(People(人間), Planet(地球), Prosperity(豊かさ), Peace(平和), Partnership(協調))、また、3つの階層(生物圏、社会、経済)にわける「ウェディングケーキモデル」というものが取り上げられている。要するに、17のゴールをそれぞれ異なる形で分類したものだ。

 私見だが理解しやすいのはウェディングケーキモデルだと思う。ストックホルム・レジリジエンス・センターによって提案されたウェディングケーキモデルは、一番下に生物圏や環境があって、その上に社会があり、さらにその上に経済があるという階層構造モデルである。それぞれ、下の土台の部分が基盤としてないと成立できない。それぞれの階層はまったく分離しているわけではなく関わりあっている。上の階層が下の階層に影響を及ぼすことも多々ある。影響は正と負、それぞれがあり得る。そういうモデルである。

 このモデルで言えることは要するに以下のようなことだ。環境、社会、経済の課題はわけて考えることはできない。経済成長なしでは環境保護も豊かな社会も実現できないし、環境が良くなければ人間社会はそもそも存続できない。全ては相互作用する。どれか一つのゴールや目標だけを重視しても、持続可能なかたちでは実現できない。SDGsのためにはバランス、調和が重要である。特定セクターの利益や成長だけを重視することはSDGsに反するし、そもそも持続可能ではない。

【次ページ】SDGsで捉え直すロボットへの見方

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