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  • 2021/07/05

2021最新「遠隔操作ロボット」まとめ ソニーや川崎重工、スタートアップの取り組みも

森山和道の「ロボット」基礎講座

顧客とのタッチポイントは多ければ多いほど良いサービスなのだという時代はようやく終わりつつある。むしろ非接触のほうがうれしいと考える人たちは以前からいたはずだが、新型コロナ禍が起きて一年余りが経過し、サービス業での非接触ニーズへの対応はコロナ後もデフォルトとなりそうだ。当然、省人化ニーズにも応えられる。製造業においても同様だ。それらのニーズを受けてか、遠隔操作系ロボットの発表が止まらない。川崎重工とソニーのような大企業同士の連携も始まっている。ここでいったんまとめておこう。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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東京ロボティクスによるロボットの遠隔操作(2019)

シンプルな、ロボット遠隔操作のメリット

 「ロボットを遠隔操作する」と聞くと、少なからぬ人がアニメや漫画に出てくる「人型ロボットの操縦」をイメージするらしい。ああいうロボットの操作のためには、人間とロボットのあいだで相互に情報をやりとりするための高度なインターフェース技術や、様々な力や座標の変換技術が必要だが、将来はおそらくは可能だろう。だが、今回考える遠隔操作するロボットの対象としては、基本的には人型ではなく、作業を行うアームや移動ロボットを考える。

 ロボットを遠隔操作することで得られるメリットは単純だ。通信品質やタイムラグの問題はとりあえず横に置いておくと、現在の自動化技術・知能化技術だけでは不可能なことが、人の目と知能を加えることで実現できるようになる。つまり、ロボットのセンサーやアクチュエーターに、主に「判断力」を加えるのが遠隔操作のメリットである。

 たとえば、手術ロボットはその一例だ。手術ロボットによって高解像度の目と狭い領域でも器用に動ける手を得た外科医は、これまでは不可能だった手術を行うことができるようになった。これはロボット側から見ると、医師の判断力と操作力を得て初めて真価が発揮できるということになる。

 使い捨て部品で高利益を上げている Intuitive Surgical社の内視鏡手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)」に続けとばかりに、川崎重工業とシスメックスの共同出資によるメディカロイド「hinotori(ヒノトリ)」など、国産の手術ロボット開発も進んでいるのはご存じの通りである。「hinotori」は2020年9月から保険適用になり、泌尿器科を対象として市場投入を目指している。2021年4月には5Gを使った遠隔操作実証実験を行った。

一時的に、ちょっとだけ手動で遠隔操作するだけで

 もっとも、手術ロボットはそもそも自律してないし、作業者は基本的にはロボットのすぐ横にいるので、ロボットというよりも高度な機器のようなものだと考える方もいらっしゃるだろう。

 では、より一般的な例を挙げよう。現在のロボットが行っている作業の大半は、屋内や屋外を移動して何かを運ぶか、「ピックアンドプレース」と呼ばれる類の、要するに何かを掴んで別の場所に置きかえる作業だ。いずれの作業にしても、現状のロボットは、対象のちょっとした位置ずれや、想定外の障害物の出現によって、動けなくなってしまうことがある。ごく軽いダンボールがフラッと動いただけで困ったことになってしまうのだ。それに対して人間が遠隔から介入できれば状況は変わる。ちょっと動かしてやればいいのだ。

 意外と、ほんのちょっとの手伝いでロボットが稼働し続けるようにできたりする。あるいは、障害物を回避したいなら、回避のために設定されているロボットの横の余裕幅の設定を一時的にゆるめるだけで、ロボットが横をすり抜けたりすることも可能になる。もちろん物理的に通れなくなっていたら無理だが、人ならば、「これはダメだな」と即座に判断して、別の手段を取ることもできる。ループにはまってウロウロし続けるようなことはない。

 こういったコンセプトを提案しているのはスタートアップのキビテクだ。同社は遠隔オペレーターによるアシストシステムを「高度自律型遠隔制御システム(HATS)」と名付けて、市場投入を狙っている。まずは物流を対象にしているようだ。たとえば自律移動していたロボットが、覚えていた地図と大幅に環境が変わって自己位置を見失ったときに、オペレーターが遠隔から一時的に操作して復帰できる場所までロボットを持っていくといったデモが動画で公開されている。


 普段は決まり切った繰り返し動作しかしないロボットであっても、一時的に、ほんの少しだけ自由に動かせることができれば、わざわざ人間が修正しなくても良かったりする。あるいは不具合が発生したときにも、再起動ボタンを自分で押すだけで復旧させられるかもしれない。これらのニーズは高く、現在では多くのロボットの遠隔モニタリングの機能がトレンドになっている。これまでネットワークに接続することなど考えてもいなかったような機器が、ネットワークに繋がり始めている。

遠隔操作なら安全・快適環境からも作業が可能に

 ただ、ロボットが注目されている理由の1つは省人化ニーズの高まりだ。遠隔操作だろうがなんだろうが、一人の人が一台のロボットを操作したり面倒みたりしなければならないのなら、省人化効果はない。むしろ人手が取られてしまうこともありえる。

 しかし、そう思うのは早計だ。ロボットがどういう環境で何の作業をするものであれ、ロボットの遠隔操作なら、エアコンの効いた部屋で椅子に座ったままでもできる。つまり、少なくとも労働環境は大きく改善可能だ。間接的には離職率も下がる可能性がある。こうして結果的にメリットを生むことはできるだろう。

 たとえば、建機の操作の遠隔操作への取り組みも増えている。スタートアップのARAVは、スマホなどさまざまなマルチデバイスで建機が遠隔操作できるシステムを開発している。6月にはレガシーな建機にも後付けで装着が可能な遠隔操作システム「Model V」を発表した。エッジコンピューターやアタッチメントなどのハードウェア、遠隔操作組み込みプログラムのソフトウェア、操作時のインターフェースを含むシステムで、最新建機ではなくても遠隔操作が可能になる。


 ARAVのシステムでは最長1,141km離れた土地からも遠隔操作が可能で、実際に富士建と行った共同実証実験では東京-佐賀間での建機の遠隔操作に成功している。どこからでも操作できるのであれば、これまでは使えてなかった労働力を活用することも可能だ。国内に眠っている労働力は多い。

 国内に限る必要はない。用途次第、やり方次第だろうが、ネットワークの通信遅延の問題が解消できるのであれば、海外の労働力も使える。日本国内から海外のロボットにアクセスすることもできるかもしれない。先ほど述べたキビテクもカンボジア市場への参入を発表している。

【次ページ】遠隔操作を入り口とし、後で自動化していくやり方も

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