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- 2022/01/17 掲載
「電波オークション後進国」という日本の現実、2022年に必須な「国際標準」の議論 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第142回)
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動き出した電波を巡る政策論議
いよいよ2022年がスタートした。今年は電波を巡る政策論議が一段と活発化しそうだ。今夏をめどに新たな電波割当方式を取りまとめる総務省の方針を受けて、大手通信企業のトップもオークション導入の是非について言及し始めている(日本経済新聞[2021])。前回解説したように2021年に取りまとめられた「デジタル変革時代の電波政策懇談会」の報告書では、今後の政策で「電波」と「経済価値」と「経済活性化」が明確に結びつけられ、これまで未整備だった「周波数の再割当」が俎上に載った。
IoTやCASE(Connected、 Autonomous、Shared & Services、Electric)が象徴するように経済社会のモビリティ化が見込まれる中、移動の柔軟性を支える電波は、土地や資本や労働と同じように、経済活動に欠かせない重要な生産要素だ。カギとなる生産要素の有効利用が制約されれば、経済活力は削がれてしまう。
電波を「経済価値を有する有限希少な資源」と位置付けた上で、経済社会の活力を取り戻し成長を促進させるために欠かせない、との認識がなされたとすれば、これからの電波政策では「資源配分の効率性」を考える「経済学の知見」を生かすことが望まれる。
タブー視しない国際標準のオークション議論を
前回述べたとおり、今後の電波政策では有限希少な電波の供給を増やすという観点から、高周波数帯の開発目標が示された。具体的な施策では、標準化問題も含めて国際連携が欠かせず、報告書でもグローバルな連携の意義に言及されている。グローバルな観点からの取り組みが重要なのは、制度設計の議論についてもいえることだ。その1つが既に多くの国々で導入されているオークションを巡る「マーケット・デザイン」の問題で、日本国内に閉じこもった狭い議論から脱することが求められる。
連載の第129回でも触れたように、2020年のノーベル経済学賞は、電波の割り当てに活用されるオークションの研究と実用化に貢献したスタンフォード大学のミルグリム教授とウィルソン教授に授与された。
受賞の理由は「電波の周波数の割り当てなど、従来の方法では売ることが難しかったモノやサービスに使われる新たなオークションの制度設計を行い、世界中の納税者などの利益につながった」点の評価だと報じられている(NHK[2020])。
こうした世界の状況からみると、日本はかなり後塵を拝しているようだ(鬼木[2017])。2017年の規制改革会議では、OECD加盟国の中でオークション導入にためらっているのは日本だけとの指摘もなされている(図表1)。
【次ページ】制度設計の国際的なコンセンサスとは
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