• 会員限定
  • 2022/03/24 掲載

ロシアが支援? ウクライナ襲ったマルウェア「HermeticWiper」の脅威

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
ロシアによるウクライナ侵攻に関連して、国内でもサイバー攻撃への注意喚起がなされている。だが、実際に発生している国内インシデントは、ウクライナ侵攻作戦の一部と断定できるようなものはいまのところ存在しない。だが、侵攻のわずか数時間前にウクライナに対して実行されたとされるマルウェア「HermeticWiper」は、ロシア側の関与が強く疑われるものだ。

執筆:フリーランスライター 中尾真二

執筆:フリーランスライター 中尾真二

フリーランスライター、エディター。アスキーの書籍編集から、オライリー・ジャパンを経て、翻訳や執筆、取材などを紙、Webを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは言わなかったが)はUUCPのころから使っている。

photo
ロシア支援が強く疑われる「HermeticWiper」をスロバキアのESETが発見・報告した
(Photo/Getty Images)

今起きている攻撃をすべてロシアがらみとする危険

 現在の不安定な世界情勢下で、日本がサイバー攻撃の標的となるリスクは高まっており、もちろん厳重警戒は必要だ。しかし、いま起きているサイバー攻撃をすべてロシアがらみとするのは危険だ。

 たとえば、一度は撲滅したと思われた「Emotet」が、2021年末あたりから世界中で再び流行している。この流行は現在も続いており、セキュリティインシデント関連の技術的な助言を行っているJPCERT/CCによれば、国内の被害報告は2月にスパイクし、2020年のピークに匹敵する猛威をふるっている状態だという。

 なお、Emotetはマルウェアとしてはダウンローダの一種で、ワームのような自己拡散能力を持つ。ダウンローダーとして感染PC・サーバに別のマルウェアやエクスプロイトをインストールし、同時に感染PCのアドレス帳などの宛先に攻撃メールを拡散する。

 これが爆発的に感染が広がる原因の1つとなっているが、Emotetの“目的”は攻撃ごとに異なる。ダウンロードするのがランサムウェアか、APT攻撃のためのエクスプロイトか、認証情報の盗み出しか、それは攻撃者の素性や目的次第だ。

 マルウェアとしてのEmotetをメンテナンスしているグループは存在するが、特定の攻撃グループや特定の目的との結びつきは弱い。再流行は2021年末からなので、2022年2月以降新聞などをにぎわしている企業のランサムウェア被害やEmotetによる不審メールの拡散だけでは、「欧米に追従してロシア制裁を決めた日本・日本企業を狙ったサイバー攻撃」と断定することはできない。


ESETが発見したHermeticWiperとは

 では、どんな攻撃がロシア政府や軍が関与した攻撃と言えるのだろうか?

 スロバキアのセキュリティベンダーであるESETの研究者が、2022年2月24日に「HermeticWiper」というマルウェアに関する情報をツイートした。一連のツイートと詳細についてはESETジャパンが3月2日にリリースも出している


 ESETのリサーチグループの報告では、ロシア政府や軍との関係は発見されていない、としている。マルウェアの機能や攻撃の概要は以下のとおりだ。

 2月23日、ESETはHermeticWiperというワイパー型マルウェア(データを破壊・消去するマルウェア)を利用した攻撃キャンペーンを確認した。標的はウクライナの組織で、攻撃はロシアによるウクライナ侵攻の数時間前とされる。

 HermeticWiperは、HermeticWizardとHermeticRansomという別の悪意のあるモジュールを含んでいる。HermeticWizardは、ローカルネットワーク内で別のホスト(PCやサーバ)に拡散するワーム機能を担当する。HermeticRansomは名前のとおりランサムウェアだ。

 最初の攻撃確認は2月23日だが、翌24日にはIssacWiperという別のワイパーによる攻撃も始まった。ESETでは、最初に攻撃では目的を十分に果たさなかった、ターゲットデータの破壊・消去に失敗した可能性を指摘する。IssacWiperは、これより前、2021年10月にESETが活動を確認しているマルウェアだ。

 つまり2月24日の攻撃は、IssacWiperの2度目の活性化を意味する。しかも24日の攻撃に利用されたIssacWiperはバージョンアップされており、21年10月の攻撃では対象としていなかったログファイルを消去対象としていた。

画像
大まかなタイムラインを整理すると上図のようになる

【次ページ】ランサムウェアとは毛色が違う? HermeticWiperが普通とは思えない点

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます