- 2025/12/24 掲載
決算好調「花王」の凄すぎる開発力の根源、「地味に見える」微生物学を超重視するワケ
連載:基礎科学者に聞く、研究の本質とイノベーション
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典(理事長)が2017年、科学賞の賞金1億円を拠出し、日本の基礎科学振興を目的に設立した。
<財団の活動>
・現在の研究費のシステムでは支援がなされにくい独創的な研究や、すぐに役に立つことを謳えない地道な研究を進める基礎科学者の助成
・企業経営者・研究者、大学等研究者との勉強会・交流会の開催
・市民及び学生を対象とした基礎科学の普及啓発活動
本シリーズの特設ページ:https://www.ofsf.or.jp/SBC/2310.html
花王の開発を支える「基盤技術研究」
花王の研究開発は、商品の設計や技術の実用化を担う「商品開発研究」と、物質や現象の仕組みを探る「基盤技術研究」の2本柱によって進められている。基盤技術研究は商品開発研究を支える土台であり、たとえば洗剤の洗浄力を高める際には、界面活性剤や酵素の働きを分子レベルで理解する必要がある。こうした知見の蓄積が持続可能なものづくりの基盤となる。研究開発部門 バイオ・マテリアルサイエンス研究所 所長の瀧村 靖氏は、同社の研究開発の特徴を次のように語る。
「花王の研究は『本質を理解すること』を重視しています。人や物質の本質を理解した上で、顧客に価値ある商品を提供していく、そのためには科学と技術の融合が欠かせません」(瀧村氏)
さらに瀧村氏は、基盤技術研究は商品開発のためにとどまらないと指摘する。
「基盤技術研究を商品開発のために位置づけつつ、より広い枠組みでとらえる必要があります。土台を作るだけでなく、それを強化する“杭”の部分まで掘り下げることが、本質研究につながるのです」(瀧村氏)
基盤技術研究を進める上では、原理や理論といった基礎研究の領域にまで踏み込む必要がある。すなわち、アカデミアが主導してきた基礎科学の世界と向き合うことを意味する。
こうした背景から、花王はアカデミアとの連携を強化してきた。その1つが近年、産学連携の新しい枠組みとして注目されている「微生物機能探究コンソーシアム(以下、微生物コンソーシアム)」への参画である。 【次ページ】敵であり味方…「微生物研究」を重視するワケ
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