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  • 2022/05/18 掲載

新視点でみる「カントリー・リスク」、ロシアでのビジネスは継続不可なのか? 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第146回)

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経済安全保障を巡る議論では、サプライチェーンの強靭化、基幹インフラ機能の安全性・信頼性、重要技術の育成・支援、特許や機微な発明の流出防止が重視されている。いずれもICTが深く関わる分野だ。これまでICTの分野でセキュリティ問題と言えばサイバー・セキュリティが想起されたが、今後は、これに加えてナショナル・セキュリティを強く意識することが求められる。今回は、ICTを巡る2つのセキュリティ問題とカントリー・リスクについて考えてみよう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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ウクライナは若手の人材が主導してIT軍を創設し、動画を用いてSNSで効果的に情報を発信している
(Photo/Getty Images)

国際環境の激変とICTの役割

 前回みたとおり、過去数十年間にわたって世界規模で情報化が進展し、途上国を巻き込む経済発展が実現した背景には、冷戦終結に伴う「平和の配当」があった。それから約30年、世界の景色は一変した。

 ロシア軍のウクライナ侵攻は、国際秩序の破壊と混乱を招き、その影響は長期化が避けられない見通しだ。国際社会は、今、歴史に刻まれるであろう深刻な岐路に直面しており、ICTはこの事態に深く関わっている。

 ウクライナ危機ではハイブリッド戦が繰り広げられ、プロの戦場カメラマンやジャーナリストだけでなく、スマホを手にした多くの一般市民が緊迫感のあるリアルな情報を発信している。この状況は、まさにCGM(Consumer Generated Media)そのものだ。

 当初、軍事的には圧倒的に不利とされたウクライナ側は、若手人材が主導して創設したIT軍がSNSで動画などを用いた情報を効果的に発信している。ITを駆使した戦略による対抗措置は、21世紀の安全保障におけるICTの役割と重要性を改めて浮き彫りにした。

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ウクライナ戦ではSNSでの情報発信が世論に大きな影響を与えた
(Photo/Getty Images)

グローバル化と2つのセキュリティ問題

 こうした動きを視野に入れると、今後の議論で欠かせないのは、情報通信市場における「2つのセキュリティ問題」、すなわち「サイバー・セキュリティ」と「ナショナル・セキュリティ」だと言える。

 連載の第141回142回では、今後の情報通信政策を考える際には、技術開発と制度設計の両面から「国際社会との連携」が重要だと指摘した。市場開拓、研究開発、人材育成の面で、グローバルな戦略が欠かせないのは言うまでもないだろう。

 また、モビリティ化が進む中で価値を高める電波の利用では、ITUなど国際機関との連携は不可欠で、現在日本で検討されている「周波数オークション」の制度設計でも、これまで約四半世紀にわたって制度の改善が積み重ねられてきたグローバルな知見を活かすことは極めて有益だ。

 その一方で、企業を取り巻く調達・供給環境が「平和の配当」を享受できた過去30年間とは大変貌していることも見落としてはならない。グローバルな市場取引で盲点となっていた「ナショナル・セキュリティ」の問題が再浮上しているからだ。

 これまで当たり前だった前提条件が根本から覆えってしまうような新たな課題が生まれているのだ。

【次ページ】経済安全保障の4分野とICT

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