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  • 2021/02/24

「グローカル6Gビジネス」に取り組むべきワケ、日本の再浮上にはこれしかない…

篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(第131回)

経済社会のモビリティ化は、電波の経済価値を高めると共にヒト、モノ、カネの国境を越えた移動を一段と活発化させる。したがって、総務省の「デジタル変革時代の電波政策懇談会」が目標とする電波の有効利用を通じた「経済と社会の活性化」では、グローバルな観点からの議論が欠かせない。今回は、「グローカル」「人材ネットワーク」「ナショナルセキュリティ」をキーワードにこの点を考えてみよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
■研究室のホームページはこちら■

インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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総務省の「デジタル変革時代の電波政策懇談会」が、目標とする電波の有効利用を通じた「経済と社会の活性化」では、グローバルな観点からの議論が欠かせない
(Photo/Getty Images)

モビリティ化とグローバル化

連載一覧
 前回前々回は、ますます「経済価値」を高める電波について、プライマリー・マーケット(新規の周波数割当)とセカンダリー・マーケット(割当済み周波数の再配分)で今何が課題となり、今後どのような取り組みが求められるかを考察してきた。

 これらを受けて、今回はグローバルな観点からいくつかのポイントを考えてみよう。これは、連載の第129回で言及した今後の電波政策で重要と考えられる5つの論点のうち、(3)ローカル5Gを梃子にしたユーザーイノベーション、(4)高周波数帯の技術開発における国際貢献と人材ネットワークの形成、(5)情報通信市場における「2つのセキュリティ問題」に該当するもので、「デジタル変革時代の電波政策懇談会」の目的である「経済と社会の活性化」を実現する道筋にも繋がることだ。

 経済社会のモビリティ化は、電波の「経済価値」を高める同時に、ヒト、モノ、カネなどの経済要素が国境を越えて活発に移動する状況を生みだしている。

 それゆえ、基地局などのインフラ設備、世界各地で利用される端末機器、提供される通信サービス、その上を流通するデータやコンテンツなど、電波に関連する財・サービスは、グローバルな舞台での利活用が大前提となる。

 つまり、はじめからグローバル市場を視野に入れ、標準化戦略や知財戦略など国際的な連携を含めた取り組みが重要になるのだ。この「グローバル」な観点は、逆説的だが、新たに始まった「ローカル5G」の取り組みにも深く関わってくる。

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グローバル市場を視野に入れた検討では、ローカル5Gの取り組みも大きく関係する…?
(Photo/Getty Images)

ローカル5Gとユーザーイノベーション

 「ローカル5G」とは、通信事業者以外の多様な主体が免許を取得して電波利用できる制度のことだ。

 5Gで利用する電波は周波数帯域が高く光に近い性質となるため、電波の直進性が高まる。電波の直進性が高まると、建物などの障害物を回り込むことが難しくなり、基地局やアンテナを密に設置しなければならない。

 その結果、投資負担が一段と増大することから、設備を稠密(ちゅうみつ)に整備していく従来型の面的展開だけに頼ることは難しい。工場、物流拠点、商業施設、スタジアムなどを局所的、スポット的に飛び地型で整備する選択肢も必要になるのだ。

 それを可能にするのが「ローカル5G」という制度だ。これにより、製造業など通信事業者ではない経済主体が免許を取得し、さまざまな領域で電波を生かせるようになった。通信事業者(供給側)を介さないこの仕組みがうまく機能すると、利用側の創意工夫による多様な「ユーザーイノベーション」が創出されると期待できる。

 重要なのは、この仕組みを国内だけではなく、グローバルに展開していく発想だ。たとえば、日本に強みがある製造業で5Gや6Gを導入したスマートファクトリーを展開する際、国内工場だけでなく、世界に広がる製造拠点にも展開していく取り組みだ。

 日本に強みのある領域に特化して、スポット的ながらグローバルに展開していく戦略で、ローカル5Gのグローバル版、すなわち「グローカル5G」「グローカル6G」と言える。これは、技術開発における国際貢献と標準化戦略における仲間づくりにも貢献できる一石二鳥の戦略だ。

技術開発における国際貢献と人材ネットワーク

 使い勝手の良い低周波数帯が逼迫する中にあって、5G以降(Byond5G、6G)の電波利用では、高周波数帯域の技術開発が重要なテーマだ。だが残念なことに、昨年から運用が開始された5Gでは、世界における日本の存在感は薄れている。

 この現実を踏まえると、次世代の技術開発で一気に世界をリードすることは困難だが、ある領域に特化して強みを生かせば、日本の存在感を高めることは可能だ。上記の「グローカル6G」は1つの手がかりになると考えられる。

 なぜなら、この取り組みがうまく展開できれば、日本の技術、手法、仕組みを使って、世界各地の人材がオペレーションの技法を学んでいくことになるからだ。たとえば「6Gのスマートファクトリーは日本が強い」となれば、その領域で日本の仕組みが次第にデファクトを形成していく道も拓かれる。

 すべての技術領域ではなく、ある領域に特化して日本の強さが発揮できれば、そのオペレーションを通じた人材育成で現地の雇用と所得を創出するため、日本企業と協働しようという連携の力も生まれるはずだ。

 このように、次世代の技術開発では、途上国などグローバル市場での実装と運用(オペレーション)を視野に入れて、中長期的な人材ネットワーク形成を実現できれば、ひいては、それが国際標準化に向けた取り組みで大きな資産となるだろう。

 尖った強みを生かす「グローカル6G」の展開は、人材育成、ノウハウの共有、標準化の仲間づくり、という観点から日本の底力を発揮する戦略の1つになるわけだ。

【次ページ】グローバル展開に向けた、セキュリティ問題とは

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