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- 2018/03/26 掲載
ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)という新常識、車はソフトウェアが決める
現代とシスコが「次世代の車」を発表
このような自動車メーカーとIT企業の提携は珍しいことではない。マイクロソフトは以前からフォードと提携し、同社の車載コミュニケーションシステムであるSYNCのプラットフォームにWindowsを提供している。
また2017年9月には同社のホロレンズシステムを採用し、フォードが車のデザインの現場にミックスド・リアリティ(MR)を導入することで、新車デザインのスピードアップを図る、という計画も発表された。
では「次世代」とわざわざ銘打つ現代とシスコとの提携は何が新しいのか。
車作りの中心がソフトウェアに置き換わる
両社が共同で開発する車には「ソフトウェア・デファインド・ビークル・アーキテクチャー(SDV)」というプラットホームが採用される。文字通り、車作りの中心がエンジンなどのメカニカルな部分ではなくコミュニケーションを行うためのソフトウェアに置き換わるのだ。これまでの車載コミュニケーションシステムはどちらかというと後付け、つまり車の骨格が出来上がったところに、フロントコンソール部分に、たとえばインテルやパナソニックのコミュニケーションシステムが組み込まれる、という形だった。
しかし、現代とシスコは車のデザインの段階でコミュニケーションシステムをインテグレードし、それによりマルチレイヤーのセキュリティ、エンド・ツー・エンドのネットワークが実現できるという。
たとえば、SDVプラットホームには1Gbpsのイーサーネットが組み込まれている。これにより車載コミュニケーションのスピードは格段に向上し、コネクテッドカーに関連するサービスの幅を広げ、かつコストの低減にもつなげられる。
何より業界を驚かせたのは、両社がこの新しいコンセプトをわずか3年で実現させることに成功したという事実だ。
両社が次世代コネクテッドカーについてのコンセプトの話し合いを開始したのが2016年。「よりフレキシブルで安全なコネクテッドカーのプラットホーム」作りで合意し、そこから3年で市販モデルにまでこぎつけた。
通常自動車メーカーが新車をコンセプトから開発し市販化するまでに要する時間は4~5年、と言われる。
高速インターネットでソフトウェアがリアルタイムで更新
また車の開発段階から関わることで、シスコが提供するコミュニケーションシステムはケーブルなどを軽量化することに成功し、従来のOEM製品と比べて30~40%のコストが節約できるという。高速インターネットが車内に完備されることで、ソフトウェアアップデートがリアルタイムのオーバー・ザ・エア(OTA)で行え、時間とコストの節約になる。
なお、従来型のシステムの場合、ディーラーなどでアップデートを行う必要がある場合もあった。こうしたことから、シスコと現代のハイパーコネクテッド・カーは業界の「ゲームチェンジャー」になる、と言われる。
マッキンゼー、IHSなどの予測によると2030年には80%の車がコネクテッドカーとなり、2030年に販売される車の15%、2040年には90%が自動運転システムを組み込んだものとなる。
またOTAでのソフトウェアアップデートの普及により、OEMのコスト節約は2022年には世界中で350億ドルに達する。今回のシスコと現代の動きはこうした予測にのっとったもので、予測をより早めることにもつながる可能性がある。
【次ページ】次世代車をめぐる課題と現代のユニークな着目点
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