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  • 2023/02/17 掲載

空飛ぶクルマとは何か?「ヘリコプターとの違い」「機体の種類」をわかりやすく解説

連載:デジタル産業構造論

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次世代のモビリティとして期待されている「空飛ぶクルマ」は、2025年に控える大阪万博での定期運航が発表されているなど、いよいよ実用化に向け動きはじめている。そもそも空飛ぶクルマとは、どのような機体のことを指すのだろうか。見た目がそっくりなヘリコプターとは何が違うのか。さらには、いつ実用化されるのか。本記事では、空飛ぶクルマの特徴を解説しつつ、日本・米国・欧州の空飛ぶクルマに関わる最新動向を紹介したい。

執筆:d-strategy,inc 代表取締役 、東京国際大学 特任准教授 小宮昌人

執筆:d-strategy,inc 代表取締役 、東京国際大学 特任准教授 小宮昌人

株式会社d-strategy,inc 代表取締役CEO、東京国際大学 データサイエンス研究所 特任准教授

 日立製作所、デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所、産業革新投資機構 JIC-ベンチャーグロースインベストメンツを経て現職。2024年4月より東京国際大学データサイエンス研究所の特任准教授としてサプライチェーン×データサイエンスの教育・研究に従事。加えて、株式会社d-strategy,inc代表取締役CEOとして下記の企業支援を実施(https://dstrategyinc.com/)。

(1)企業のDX・ソリューション戦略・新規事業支援
(2)スタートアップの経営・事業戦略・事業開発支援
(3)大企業・CVCのオープンイノベーション・スタートアップ連携支援
(4)コンサルティングファーム・ソリューション会社向け後方支援

 専門は生成AIを用いた経営変革(Generative DX戦略)、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革(プラットフォーム・リカーリング・ソリューションビジネスなど)、デザイン思考を用いた事業創出(社会課題起点)、インダストリー4.0・製造業IoT/DX、産業DX(建設・物流・農業など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ、自動運転など)、スマートシティ・スーパーシティ、サステナビリティ(インダストリー5.0)、データ共有ネットワーク(IDSA、GAIA-X、Catena-Xなど)、ロボティクス・ロボットSIer、デジタルツイン・産業メタバース、エコシステムマネジメント、イノベーション創出・スタートアップ連携、ルール形成・標準化、デジタル地方事業創生など。

 近著に『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP)、 『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社/共著)。経済産業省『サプライチェーン強靭化・高度化を通じた、我が国とASEAN一体となった成長の実現研究会』委員(2022)、経済産業省『デジタル時代のグローバルサプライチェーン高度化研究会/グローバルサプライチェーンデータ共有・連携WG』委員(2022)、Webメディア ビジネス+ITでの連載『デジタル産業構造論』(月1回)、日経産業新聞連載『戦略フォーサイト ものづくりDX』(2022年2月-3月)など。

【問い合わせ:masahito.komiya@dstrategyinc.com】

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空飛ぶクルマとは何か?ヘリコプターとの違い、機体の種類を解説する
(Photo/Getty Images)

空飛ぶクルマとは何か?

 空飛ぶクルマとは、電気により自動で空を飛び、垂直離着陸が可能な飛行機とドローンの間に位置する新たなモビリティを指し、正式には「電動垂直離発着型無操縦者航空機(eVTOL:electric Vertical Take-Off and Landing)」と呼ばれる。

 空飛ぶクルマと呼ばれることが多いが、現在では、車道と空の双方を走行する機体というよりは空の移動を中心に据えた検討が進んでおり、「クルマ」ではなく航空機として分類されている。単に空飛ぶクルマと呼ばれるだけでなく、eVTOL、Flying car、UAM(Urban Air Mobility)などとも呼ばれることがある。

空飛ぶクルマの種類

 形態としては、「翼が回転機(マルチコプター)のタイプ」「固定翼タイプ」に大きく分かれる。下図が空飛ぶクルマの機体の一例だ。

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主な空飛ぶクルマの一例
(出典:各企業HPより)

 日本において大阪万博に向けて定期運航が発表されたほか、欧州でパリ五輪に向けて整備が進むなど市場創出に向けた動きが活発化している。

ヘリコプターとの違いは?空飛ぶクルマのメリット

 エンジンで動くヘリコプターとの比較では下記の点が特徴となる。

(1)電動・部品数が少ない(機体コストと整備費用の低下)
(2)騒音の軽減(社会受容性の向上)
(3)自律飛行・遠隔操縦など自動で将来的にパイロットレスとなる(人件費・運用コストの低減)
(4)垂直離着陸(陸のインフラに制約されず小スペースで乗り降りできる)

 空飛ぶクルマは、ヘリコプターと比べて経済性・静粛性・環境性が高く、新たな都市航空交通(Urban Air Mobility)として期待されている。今後、すでに市場が形成されているヘリコプターとともに、併用・補完する形で空飛ぶクルマが普及していくことが想定される。

空飛ぶクルマに期待されている役割

 空飛ぶクルマについては、2018年8月より経済産業省・国土交通省が「空の移動革命に向けた官民協議会」を立ち上げ、産学官連携のもと議論が進められてきた。2025年の大阪・関西万博や、その後の都市部での“次世代空モビリティ(Advanced Air Mobility)”としての活用のみならず、過疎・山間部・離島などの地域の交通手段や災害時の物流・交通手段としての社会実装を目指している。

 現在、産官学で密接なコミュニケーションのもと、2023年を目標に機体の安全基準、操縦者の技能証明、運航の安全基準をはじめとする制度の整備が進められている。

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図表1:空の移動革命 官民協議会 ボードメンバー

 直近、官民協議会が改訂した「空の移動革命に向けたロードマップ」によれば、2025年の大阪・関西万博を起点に空飛ぶクルマの実運用や商用運航を大きく展開していく方針が盛り込まれている。機体が高価であることから、すでに個人所有の航空機市場が形成されている米国を除き、個人所有ではなくサービス企業が所有する形で運航がなされることが想定されている。

 そうした文脈の中で、空飛ぶクルマで想定されているユースケースとして、一例ではあるが下記などの方向性が議論されている。
 
(1)レジャー観光
交通手段が限られる観光地への移動や、観光地でのレジャーやエンタメを目的とした遊覧飛行など。観光の高付加価値化や、富裕層インバウンド観光客への提案などにつながることが期待される。
(2)空飛ぶタクシー
渋滞を回避した高層ビルの屋上同士を結ぶ移動、空港やターミナル駅からの二次交通など。また、都市間アクセスや、交通空白地帯などを結ぶ新しい移動手段。世界中で深刻な課題となっている渋滞への対策として期待される。同様に、本社と工場など複数拠点を持つ企業の拠点間移動に活用するなどのビジネス用途も期待される。
(3)医療・救急医療
交通状況に到着時間が左右されがちな救急車両と空飛ぶクルマを併用すれば、到着時間を大幅に短縮することが可能になる。それにより救急時・災害時などの人命救出が可能となる割合が向上する。機体・運用コストの負荷が大きいドクターヘリとの共用・補完が進むことが期待される。
(4)防災・災害対応
台風・地震などの災害の発生により生活道路が遮断された場合における、迅速な救助活動や物資輸送などに期待される。
(5)山間部・島嶼部における移動インフラ
既存の移動インフラが整っていない山間部・島嶼部における移動インフラとしての機能を果たす。
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図表2:日本が想定している空飛ぶクルマ ユースケース
(出典:国土交通省)

 日本における空飛ぶクルマの進展においては大阪・関西万博が期待されることが大きい。すでに2025年の大阪・関西万博において、空飛ぶクルマの定期運航が発表されている。政府・大阪府・大阪市としても2025年をマイルストーンとして急速に整備が進められている。

 なお、万博のコンセプトは未来社会の実験場としての「People's Living Lab」を掲げており、未来社会のショーケースとして空飛ぶクルマなどの先進技術を掲げている。場所と時期が決まっており、そこをマイルストーンに議論が活発化する土台は大きなドライバーとなっている。

 欧州では2024年パリ五輪を目指した取り組みが進むが、それに伍する形で日本において議論が進んでいる。それとともに万博後の実ビジネスへの展開をいかに行っていくのかが鍵となる。

【次ページ】空飛ぶクルマ、米国・欧州の最新状況を解説

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空飛ぶクルマの実用化に向けた動きは国ごとに異なる。記事の後半では世界の最新動向を解説する

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