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- 2023/07/19 掲載
ポケモンや遊戯王など“異常な熱狂ぶり”のトレカ市場、自治体も続々制作の納得理由
1枚6億円も!? 異常すぎるトレカの価値
日本玩具協会が毎年発表している国内玩具市場規模によると、2022年度のカードゲーム・トレーディングカードの市場規模は2,349億円となった(冒頭の図)。2018年度から増加傾向にあるが、2021年度以降は目覚ましく急成長していることがわかる。この数値にはトランプといったトレーディング要素のないカードなども内包されているが、今や玩具市場の2.5割を占めるほどに、存在感が増している。急成長をけん引しているのがトレーディングカードゲーム(TCG)だ。「マジック:ザ・ギャザリング(MTG)」、「ポケモンカードゲーム(ポケカ)」、「遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム」、「ONE PIECEカードゲーム」などである。
TCGは過去のレアカードなどの価値が上がっており、転売目的の買い占めが増えている。その対策としてメーカーは、すぐに増刷して市場に大量投入するようになり、それが市場急拡大の大きな要因として挙げられている。
たしかに、カードの価格は異常なまでに高騰している。特に過去のTCG公式大会の優勝賞品や、すでに絶版となったカード、第1弾のレアカードなどが顕著だ。ポケカのプロモーションカード「ポケモンイラストレーター」は、2021年に米国のユーチューバーが527.5万ドル(当時のレートで約5.8億円)で購入し、ギネス世界記録に認定された。
手に入りにくい過去のカードに高値がつくだけでなく、新弾でも発売日に高値がつくものもある。5月27日に「ONE PIECEカードゲーム」のブースターパック「謀略の王国」が発売されたが、トップレアが初日の段階で、7~8万円の高額で売買されていたケースもあった。その過熱ぶりはますますエスカレートしていると言える。
転売目的の買い占めが一般ユーザーの購入機会を損ねていることは言うまでもない。本来のターゲットである子どもたちが高額すぎて購入できないことも問題だ。さらに、近年の価格高騰から、カードショップでの高額カードの万引きや空き巣、強盗・恐喝などの犯罪が散見されるようになり、社会問題化してきている。最近はポケカで現行品の品薄対応としてBOXの受注生産をはじめ、買取価格は一時期と比較して低下気味だが、トップレアは依然高いレベルにある。
トレカが人気沸騰の納得理由
カードの価格高騰による過熱ぶりに注目が集まっているが、近年、トレカの人気自体が上昇していることも事実である。カードゲームなので手軽に始められる半面、やり込めば大人も楽しめる戦略性がある。そのため、ユーザーの息が長い特徴がある。近年はユーチューバーがゲーム対戦やカードパック開封などの動画を頻繁に配信しており、動画をきっかけに休眠ユーザーが復帰するケースも見られる。また、ポケカや遊戯王などTCG初期に遊んでいた子どもたちが今は親世代になっており、自分の子どもと一緒に遊ぶ状況も生まれている。コロナ禍による外出自粛期間をきっかけに、親子で遊ぶ機会がより一層促進されたことも市場拡大の一因と言える。
一方、ゲーム要素のないトレカも人気が根強い。元々は食品のおまけや食玩として付いてきたカードが始まりだが、中でもカルビーのスナック菓子に付いてくるプロ野球やJリーグなどのスポーツ選手カードが有名だろう。このスナック菓子は1970年代から販売されており、歴史が長いため、子どもだけでなく大人のスポーツファンやコレクターのコレクションアイテムとなっている。
トレカ(コレクタブルカード)先進国である米国では最近、トレカをNFT化する動きがあり、MLBエンゼルス・大谷翔平選手のNFTのレアカードが1,000万円を超えるような高額で取引された。スポーツ選手のカードはNFTと親和性が高いとされ、さまざまな情報や動画、プレミアムな特典を付けて、付加価値を高めることもできる。新たな収入源、ファンエンゲージメントとして期待されるところだ。
だが日本国内で興味深いのは、地域活性化といった目的で、一般にはあまり馴染みのない意外な分野において、トレカ制作が拡大していることだ。ダムやマンホールをトレカ化したものや、中には上半身裸で漁業カッパを着用した漁師をトレカ化してPRしているものもある。
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