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- 2023/09/08 掲載
【本格調査】生成AIの市場規模は?トヨタやみずほ7社事例、ただのブームか本物か?
【世界】生成AIの市場規模
生成AI(ジェネレーティブAI)は、まったく人手を介さない、あるいは一部のみ人手を介すだけで、コンピューターがテキストやオーディオファイル、ビデオファイル、画像、さらにはコードなどの既存のコンテンツを参照しながら、マーケティングメール、ソーシャルメディア広告、契約書、交響曲などの新しいオーガニックコンテンツを作成してくれます。また、深層学習(ディープラーニング)を使用して特定のトレーニングデータセットからモデルを構築します。これらのモデルはデータ内のパターンを認識し、それらのパターンに基づいて新しいデータを生成するようにトレーニングされています。データへ簡単にアクセスできるクラウドストレージの革新、AIとディープラーニングの進化、およびコンテンツ作成とクリエイティブなアプリケーションの増加が、生成AI市場の成長に寄与していると考えられています。
冒頭の図1は、2023年から2030年における生成AIの世界での市場規模を示しています。MarketsandMarketsによると、生成AIの市場規模は、2023年に113億米ドル(約1.6兆円)、2028年には518億米ドル(約7.5兆円)に達し、この期間の年間平均成長率(CAGR)は35.6%にも上ると予測されています。
市場は成長中であり、今後10年間にわたって大きく成長できる可能性を秘めています。企業は、生成AIのエコシステムを構築するために、そのソリューションとサービスに多額の投資を行っています。そしてチャットボットや会話型AIなどの隣接市場(後ほど詳しく解説します)は、生成AI市場に新たな収益をもたらす可能性を有しています。
こうした要因から、MarketsandMarketsは、2030年までに市場規模が750億~850億米ドル(約10.9兆~12.3兆円)に達すると予測しています。
【日本】生成AIの市場規模
日本では過去数年間、AI技術の著しい普及が見られました。日本の生成AIの成長を促進する主な要因としては、AIとディープラーニングの進化、コンテンツ制作やクリエイティブ・アプリケーションの増加などが挙げられます。生成AIにおいて、日本はアジア太平洋地域で3番目に大きな市場です。2023年から2028年までのCAGRは41.9%にも達し、2028年には28億米ドル(約4,070億円)の収益を生み出すと予測されています。
トヨタやみずほ銀行ら7社の活用事例
日本は技術的に高度な産業基盤を有し、革新的な市場において先行者利益を得る条件を備えています。生成AIの発展が進むにつれて、日本はさまざまな産業への応用において主導的な役割を果たすことになるでしょう。たとえば医療分野では、生成AIを新薬の開発や治療法の確立などに活用しています。■武田薬品工業
武田薬品工業は生成AIを利用して新しいがん治療薬を設計しています。
■インタープロテイン社
日本のインタープロテイン社は、生成AIを使ってがんの治療に使える新しい分子を設計しています。同社のAIシステムは、既知の分子における膨大なデータセットで学習されており、このデータを使うことで、既存の治療法よりも高い効果が期待できる新しい分子を生成することができます。
インタープロテイン社はすでに、AIシステムを使って複数の新分子を設計しています(現在臨床試験中)。最も注目すべき進歩の1つは、DeepMind AlphaFoldタンパク質折り畳みモデルの開発です。AlphaFoldは、アミノ酸配列からタンパク質の立体構造を予測することができる機械学習モデルです。この画期的な技術は、新薬や病気の治療法の設計に利用できる可能性があり、生物学の分野に革命を起こす可能性を秘めています。
■アストラゼネカ
アストラゼネカが日本政府の支援を受けて2018年に設立したイノベーションハブ・ジャパン(i2.JP)は、医療従事者、自治体、学術研究機関、民間企業をつなぎ、医療分野の課題解決に向けて、AIを活用しながら集団的かつ実践的な最適解をともに導き出そうと取り組んでいます。同社は東京に拠点を置き、製薬会社、病院、研究機関、スタートアップなど、100社以上のパートナーとのネットワークを有しています。
■三井物産×NVIDIA
日本を代表する総合商社の三井物産は、高解像度の分子動力学シミュレーションや創薬のための生成AIモデルといった技術において、日本の製薬業界のリーダーたちを支援促進する取り組み「Tokyo-1」を通じてNVIDIAと協業しています。
NVIDIA GTCグローバルAIカンファレンスで発表されたTokyo-1プロジェクトでは、日本の製薬会社やスタートアップ企業がNVIDIA DGX AIスーパーコンピューターにアクセスできるようになります。この取り組みは、米国、中国に次ぐ世界第3位、1,000億米ドル規模(約14.5兆円)の収益を生む予測で、日本の製薬産業の発展を加速させるものとして期待されています。
■みずほ銀行
金融分野では、日本のみずほ銀行が、クレジットカード取引における不正の兆候を検出するために生成AIを使用しています。同行のAIシステムは、過去のクレジットカード取引の膨大なデータセットに基づいて学習されており、このデータを使用して詐欺に関連するパターンを特定することができます。みずほ銀行は、すでにAIシステムを活用し、いくつかの不正取引の検知に成功しています。
■トヨタ自動車
自動車分野では、トヨタ自動車が新しい自動車部品の設計に生成AIを活用しています。同社のAIシステムは、既存の自動車部品の膨大なデータセットで学習されており、このデータを使って、より効率的で軽量な新しい設計を生成することができます。トヨタはすでに、現在生産中のいくつかの新しい自動車部品の設計にAIシステムを使用しています。
日本は、生成AIの活用において、他の分野でも進歩を遂げています。たとえば、東京大学の研究者は、テキスト記述から画像を生成する新しい手法を開発しました。これは映画やビデオゲームなどで使用されるリアルな画像の作成に利用することができます。
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