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- 2024/06/11 掲載
ITアウトソーシングはなぜ失敗するのか? ガートナーが教える必須3要件とスイカSLA
ITアウトソーシングの「半分は失敗」する?
同手法はまた、委託範囲の拡大を行うことで業務効率化のために用いることもできるほか、自社になかった知見や技術を借りることで、デジタルビジネスの加速にも活用できる。
しかし、そんなITアウトソーシングについて、過信は禁物であると警鐘を鳴らすのはガートナー バイス プレジデント アナリストのギャビン・テイ氏だ。
「当社が2021年に実施した調査では、2024年までにITアウトソーシング契約の半数でコストや効率、俊敏性、変革に関する企業の期待に応えられなくなると予測しています。その後のデジタル化の急進などの環境変化を勘案すれば、現段階で少なからぬ企業がアウトソーシング契約に不満を抱えていると判断したほうが自然です」(テイ氏)
では、そうした状況において効果を出せるITアウトソーシングを行うには、どのようなことを意識する必要があるのだろうか。
テイ氏が重要性を訴えるのが、以下の3ステップからなるガバナンス・フレームワークに基づいてITアウトソーシングを行うことだ。
- 関係管理
- オペレーション管理
- 価値創出/イノベーション
「関係管理」は企業とMSP(Managed Service Provider)との適正な関係性構築を行うこと、「オペレーション管理」は一連の管理プロセスを確立することを意味する。そして「価値創出/イノベーション」ではビジネス目標に基づく新しい価値を作り出すことを目指す。
では、これらの各ステップについて、具体的にどう実践していけばいいのかを見ていこう。
関係管理で求められる「3つのポイント」
まずは「関係管理」についてである。ここで実施が求められるのは、企業とMSP双方の「役割と責任の明確化」、「ガバナンス委員会の設置」、「タッチポイントマップの作製」の3つだ。「契約では役割と責任の明確化と合意が重要です。しかし、現実には双方とも『相手がやってくれる』と考え、明確な取り決めがなされていません。ボタンの掛け違いによる無駄な議論をなくすために、まずは十分に協議し、互いに納得の上で契約を結ぶことから始める必要があります」(テイ氏)
時間の経過とともに環境は変化し、企業が求める契約内容も変わり続ける。このことを踏まえた上で大前提となるのが、MSPを巻き込んだガバナンス委員会の設置だとテイ氏は話す。
ガバナンス委員会では、ITアウトソーシングに関する戦略と戦術、オペレーションの各領域に委員会を設置し、会社として一貫した判断が行えるよう委員会間で常に連携を取りつつ、各委員会で契約内容の見直しを協議する。開催頻度は実務に近くなるほど必然的に多くなる。
「MSPからガバナンス委員会の運営の申し出を受けることもあるでしょう。受けるかどうかは自由ですが、重要なのはミーティングの主導権を必ず握ることです。MSPに握られては自社に良いことなどありません」(テイ氏)
さらに、このガバナンス委員会の構造を基に、各委員会とMSPとの接点を定めるタッチポイントマップを策定し、ベンダーとの適切なコミュニケーションチャネルを確保することが重要になる。
ベンダーとの適切なコミュニケーションチャネル確保がいかに重要かについて、テイ氏はある国内企業の例を挙げる。米国に本社があるMSPと契約を結んでいたこの企業は、従来から戦略レベルでの支援の不十分さをMSPの国内カントリーマネジャーに訴えていたが、状況は長らく変わらなかったという。しかし、ガートナーのアドバイスの下、MSP本社のCEOとCIOも話に巻き込んだことで、状況は一気に改善したとテイ氏は話す。 【次ページ】実は危ない「スイカSLA」の怖さ
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