• 2025/08/16 掲載

ユニクロ柳井社長も警告「デジタル改革はCEOの使命」、知ったかぶりでもやるべき理由

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「うちの会社もデジタル化を進めてるよ」と胸を張る経営者は多いが、実際は部署を作っただけで終わっていることがほとんどだ。ユニクロの柳井氏のように「デジタル改革はCEOの使命」と言い切れる経営者がどれだけいるだろうか。IT投資で成功する経営者の4つのマインドを知れば、なぜ多くの企業が失敗するのかが見えてくる。特に日本企業がハマりがちな3つの落とし穴とは。『全社デジタル戦略 失敗の本質』を上梓したボストン コンサルティング グループ(BCG) マネージング・ディレクター&パートナーの北川寛樹氏と有本憲司氏が解説する。
執筆:BCG マネージング・ディレクター&パートナー 北川 寛樹

BCG マネージング・ディレクター&パートナー 北川 寛樹

同志社大学商学部卒業。複数のグローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。BCG オペレーション・プラクティスの日本リーダー。大阪オフィス管掌。産業財、消費財、ヘルスケア、運輸物流業界を中心に、オペレーション改革、デジタル改革のプロジェクトを多く手掛けている。共著書に『BCGが読む経営の論点2025』『BCGが読む経営の論点2024』(日本経済新聞出版)。

  執筆:BCG マネージング・ディレクター&パートナー 有本 憲司

BCG マネージング・ディレクター&パートナー 有本 憲司

東京工業大学工学部卒業、同大学大学院修了。グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。BCG テクノロジー&デジタルアドバンテッジ・プラクティスのコアメンバー。金融、保険、通信、エネルギーなど、さまざまな業界の企業に対して、主にデジタル戦略・IT戦略を中心とした支援を行っている。共著書に日経MOOK『BCGデジタル経営改革』(日本経済新聞出版)。

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IT・デジタル投資において、日本企業が陥りがちな3つの落とし穴とは…?
(Photo/Shutterstock.com)

IT・デジタル投資を成功させる経営者に共通する4点

 IT・デジタルを活用して自社の成長につなげていくために、経営者に求められる重要なマインドがある。もちろん、業種や業態、規模などによって求められるレベルは異なってくるが、共通して言えるのは次の4つだ。

■IT・デジタル投資を成功に導く4つのマインド
  1. 常に事業ストーリーと連動させて考える
  2. 常に学び、常に関心を示す
  3. 任命が最重要、任命責任こそ経営責任
  4. 大胆な意思決定と細心の状況判断

(1)常に事業ストーリーと連動させて考える
 IT・デジタル投資にいくつかのKPI(重要業績評価指標)を当てはめて成果をチェックするという視点ではなく、自社の事業ポートフォリオ構成や競合との差別化、市場の状態などを見極めながら、ストーリー化する発想が重要だ。IT以外の、通常の事業成長ストーリーと同様、IT・デジタル投資もそれらに連動させて戦略を作り上げる。

(2)常に学び、常に関心を示す
 テクノロジーの世界は常に進化しているため、最新知識を学ぶことは非常に難しい。それゆえに敬遠しがちだ。しかし、経営者が関心のない、学んでもいない領域に従業員は真摯に取り組むだろうか。特に、現場が乗り越えなければならない壁の大きさやリスクを経営者がまったく理解しない状況では、チャレンジも知恵も判断も生まれない。

(3)任命が最重要、任命責任こそ経営責任
 経営者が自ら旗を振って、IT・デジタル領域のプロジェクトを戦略の検討から実行まで行うことは不可能といえる。そこで、責任を持ってもらう担当役員の任命は非常に重要だ。担当役員をどのようなポジションに位置付けるかも経営者の意思を示すものであり、事業ストーリーとの連動と経営陣としての関心を示すことが重要である。

(4)大胆な意思決定と細心の状況判断
 石橋をたたくのも重要だが、IT・システム投資は効果が証明されていない段階で判断を迫られることが一般的なため、ビジネスの状況や仮説に基づく大胆な決断が必要である。一方、プロジェクトの実行段階においては、当初想定していなかった環境の変化が起こっているなどの情報を敏感に把握し、細かな判断を行っていくべきである。そのためには、関心を持ち続けること、信頼できる人材を任命することだ。これらがないと、部下に負荷のかかる報告書を作らせるだけといった状況に陥ってしまう。

日本企業は特に注意すべきポイント3つ

 これら4つのマインドは、通常の事業を行う上で必要なマインドと大して変わらない。だが、IT・デジタルは事業を進める上で必要不可欠な要素になっているにもかかわらず、経営者にとっては本業ではないため、事業を拡大するためのIT・デジタルというストーリーは後回しになりがちであり、関心も低い。

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事業を進める上で必要不可欠な要素にもかかわらず、関心が低い
(Photo/Shutterstock.com)
 続いて、4つのマインドを念頭に置きつつ、日本企業が特に注意すべきポイントを3つ挙げる。

■(1)箱だけつくって満足していないか
 「弊社は中期経営計画にもビジョンに基づいたアクションにおいても、IT・デジタルを活用した改革を中枢に置いています」。こういったコメントをよく耳にする。しかし、「デジタル推進室」などの「箱」をつくって、そこに人をあてて満足していないだろうか。その部門のポジションややるべきこと、投資判断、優先順位、事業トップの思考とそのギャップ、現場のやりたいことと抵抗、そういったことを、「箱」にあてた人材に丸投げしていないだろうか。何か問題が起こったときにだけ、「どうしてそうなるんだ!説明してほしい!」と言ってしまっていないだろうか。

 これでは何も変わらないし、変わるはずもない。優秀なCIOやCDOがいてくれれば……と嘆きたくなるかもしれないが、優秀なCIO・CDOは、意志と思いを持ったCEOのもとでこそ有能な右腕となり活躍してくれるものだ。

 また、人事の実態が伴っていないケースも多い。IT・デジタルの全体戦略を描く人材と、その戦略を実行していく人材の特性はまったく異なる。経営企画という箱とデジタル推進という箱を設ければ何とかなるわけではない。そこには、事業特性、事業環境を理解し、投資と成果のバランスが取れた戦略的思考力に優れたリーダーと、実行力もしくは調整力に強みを持つリーダーの2種類の人材が必要である。そういう人材はなかなかいないのも事実だが、育成していくことが経営者の役割だと言える。 【次ページ】日本企業は特に注意すべきポイント、残り2つは…
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