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- 2024/07/19 掲載
もはやテレビや映画も「AI」が支配…? オワコンによる「TikTok大作戦」の行く末
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
テイラー・スウィフトら“プロ”が「TikTok浸食」

事実、TikTokでは、テレビやムービーシアター、ミュージックアプリ向けなどに製作されたコンテンツが、従来のアマチュア動画を徐々に「侵食」し始めている。たとえばTikTokは、米著名歌手テイラー・スウィフトのコンサート「Eras Tour 2024」とタイアップしたコンテンツページを、6月に立ち上げた。
夏季の11週間にわたり、#TSTheErasTourをクリックすれば、各地で行われたコンサート公演のハイライト動画を「ここだけ」で視聴できるほか、ファンにとって魅力的に写るデジタルアクセサリーがもらえる。さらに公演の曲目をクリックすることで、テイラーのミュージックビデオ再生へ飛ぶことも可能だ。
TikTok体験がその一部において、テレビの特徴である「プロが作ったコンテンツ」「一斉同報性と同時体験」に置き換わりつつあることを象徴する動きだ。これは、ユーザーの趣味や嗜好により細分化・分断化されたアマチュアのコンテンツを、パーソナライズされたアルゴリズムでおススメ視聴するという、従来のTikTokの路線の変質を意味する。
海賊版から始まった、テレビ・映画の「ブツ切り動画」
TikTokに入り込んでいるのは、ミュージックビデオだけではない。元は1時間、2時間の再生時間であるはずのドラマや映画が、3分ほどの海賊版ブツ切りコンテンツに仕立て直され、著作権者に無断でアップロードされていると、米ファストカンパニー誌が報じた。
順番やエピソードはバラバラなのだが、「つかみ」となる面白い場面が集められている。だが、海賊版ブツ切り動画は、コンテンツの売り手にとって収益を食われてしまう著作権侵害だ。
しかしそれと同時に、テレビや映画をあまり見なくなった若年層に、作品の魅力を知ってもらうチャンスにもなり得る。事実、どんどんスワイプすることで、ユーザーは何となくプロット(物語の筋)を理解し、さらに本来のコンテンツサイトで気に入った番組や映画にお金を支払って視聴することもあるという。
この傾向にドラマや映画を製作・配給・配信する企業などが着目し、コンテンツをTikTokで配信する動きが続々と出てきた。 【次ページ】「AI」がテレビ・映画の今後を左右する?
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