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- 2024/09/19 掲載
自民党総裁選2024「候補者9名の経済政策」を徹底比較、どこが違う?やさしく解説
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
「高市・小林」「林」「小泉」各氏の違い
総裁選の候補者は、届け出順に、高市早苗氏、小林鷹之氏、林芳正氏、小泉進次郎氏、上川陽子氏、加藤勝信元氏、河野太郎氏、石破茂氏、茂木敏充氏の9名である。高市氏は、「総合的な国力の強化が必要」としており、そのためには「何よりも経済成長が必要。経済成長をどこまでも追い求める」と強調した。小林氏も「特に急ぐのが経済力の強化だ。経済が財政に優先するのが基本で、経済成長で税収を増やしていく」と述べている。
高市氏と小林氏は、自民党の中で最も保守的な立場とされ、高市氏の推薦人の多くが旧安倍派となっている。小林氏も表に出ている推薦人名簿こそ各派にバラけたものの、旧安倍派の福田達夫氏の支援が立候補のきっかけとなっているほか、安倍元首相と縁の深い人物が多数支援を表明するなど、やはり旧安部派と関係が深い。
こうした背景があるため、両氏の主張は基本的にアベノミクス継続であり、低金利政策を持続し、国債を発行して財政出動によって成長を実現するという考え方に立脚している。
林氏は旧岸田派に属しており、同派は自民党内で最も結束力が固いとされる。派閥解消後もグループとして行動する傾向が顕著であり、林氏の推薦人も岸田派が多数を占める。当然だが経済政策も岸田政権を引き継ぐ形となっており、「最低賃金の引き上げなどで格差の是正を図るとともに、稼ぐ力を高める」政策を掲げる。
財政については、「必要な財政出動はためらわない」としつつも、金利上昇局面に入る中でも日本国債への信認を維持するため、「債務残高対GDP比」を安定的に引き下げていく」との考えを示した。林氏が首相になった場合には、岸田政権と同様、財政に配慮した政権運営が続くと予想される。ちなみに財政規律重視という点では、河野氏や石破氏もスタンスは似ている。特に石破氏は、財政を検証する第三者的な機関設立にも言及している。
積極財政を主張する高市、小林両氏、あるいは財政規律を重視した上での成長路線を主張する林氏と、方向性の異なる議論を展開しているのが小泉氏である。小泉氏は、労働市場改革を前面に掲げており、いわゆる構造改革を進めることで経済を成長させると主張している。改革の本丸として解雇規制を主張する一方、同時にリスキリングや学び直しの環境整備も進めるという。ライドシェアの容認など、産業の各種規制緩和にも積極的である。 【次ページ】まったく異なる方向性を打ち出した茂木氏の真意とは?
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