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  • 2009/02/21 掲載

【インタビュー】2008年のIT市場トレンドを読み解く

IDC Japan セキュリティ リサーチ マネージャー 花岡秀樹氏

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年々技術進化は加速し、ビジネスを取り巻く環境も変化を遂げていく。その中でいかに効果的な投資を行うべきか、経営者にとってもIT/IS部門担当者にとっても、頭の痛い課題だ。特に2008年には日本版SOX法の実施も予定されており、企業に求められる責任や対策は大きく変化することが予想される。そんな激動の2008年に何をし、どう対策すべきか。IDC Japan セキュリティ リサーチ マネージャーの花岡秀樹氏を訪ね、市場トレンドとその対策を行うためのヒントをうかがった。
【セキュリティ】2008年のIT市場トレンドを読み解く
IDC Japan
セキュリティ リサーチ マネージャー
花岡秀樹氏
  話の冒頭、花岡氏はIT関連市場に関する展望を次のように紹介した。マーケット全体の市場規模拡大は約1.8%。IT関連市場全体が伸び悩む中、ソフトウェア分野は約6%、アプライアンス分野は約10.9%、サービス分野では約14%と、市場全体の伸びを大きく上回る成長が見込まれている。この背景にあるのは、中小企業へのIT浸透だ。専任のIT技術者が少なく大規模なシステムを自前で構築できない中小企業においては、設置や運用が容易なアプライアンス製品や、必要な機能を必要な規模で利用できるITサービスが人気を得ている。

 続いて2008年のトレンドを占う上で重大な項目を、10項目に渡って挙げた。最も関心の高い話題として挙げたのは、M&Aによる業界再編の加速。メッセージセキュリティ分野の伸びが大きく、大企業や既存ブランドによるメッセージセキュリティ企業の買収が進むのではないかと花岡氏は予想する。参加するプレイヤーもITベンダばかりとは限らない。セキュリティ機能を既存サービスに組み入れるために、ITベンダ以外の企業がM&Aに参入してくることが考えられると指摘。第2のポイントとして挙げたのは、ボットネットマーケットの拡大。高機能化するだけではなく、個人の愉快犯から金銭目的の組織犯罪へと発展しているのも昨今の傾向だ。ターゲットも、オンラインでのみ利用できるポイントなどのバーチャルマネーや、アフィリエイトシステムなど、オンライン犯罪ならではの被害が増えている。

 第3のポイント以降には、内部統制に関連する話題が多く挙げられた。日本版SOX法実施により、企業はさまざまな対応を求められることになる。対応により直接生じる影響と、それへの対処が生み出す2次的影響を含め、企業にもIT業界にも大きな影響を及ぼすことが予想される。中でも花岡氏が懸念を示すのが、IT統制など各種の制約が設けられることによるビジネススピードの低下だ。直接的には生産性低下という形で、2次的には新しいビジネスプロセスになじめない従業員による内部エラーという形で影響が現れるだろうと予想する。


内部統制の実施は中小企業市場の拡大につながる

 日本版SOX法により内部統制を求められるのは、上場企業約3800社とその連結子会社数万社に上る。完全な対応ができている企業は少ないのだが、達成できていないことに対して罰則があるのではない。しかし、虚偽の報告をすれば罰則があるので、できていない現状を報告し、改善策を示すという企業が続出するだろう。内部統制は、予防的コントロールと発見的コントロールに分けられる。予防的コントロールを実現するためには、職務分掌を進めなければならないが、職務の数だけの人員を確保できないだろうと考えられる。発見的コントロールの実践にはログ記録や管理のために多大なコストが必要となり、そこにセキュリティソリューション活用の機会がある。もちろん、それに対応するためのアプライアンスやサービスも続々と現れるに違いない。一見、IT業界への特需となりそうな話題だが、喜ばしいことばかりでもないと花岡氏は言う。

「対象となる企業のうち、多くの数を占めているのは連結子会社です。ほとんどは中小企業であり、予算規模も大きくはありません。その市場へ製品やサービスを提供していくためには、単価の低下は避けられないでしょう。」

 また、管理要員を潤沢に確保できない中小企業では、アプライアンスやセキュリティサービスを選択する傾向にある。より容易に利用できるよう、各ソリューションのアプライアンス化やパッケージサービス化も進むと見られている。


セキュリティ投資の最新トレンドは全体への浸透

【セキュリティ】2008年のIT市場トレンドを読み解く
IDC Japan
セキュリティ リサーチ マネージャー
花岡秀樹氏
 セキュリティ投資は、一部の先進的な企業以外では明確な意思をもって予算運用されていないと花岡氏は指摘。次に何が問題となるか先を予想しづらい問題でもあり、必要性が生じればしかたなく対応するという受動的な出資が一般化している。注目される潮流は単体で容易に導入できるアプライアンス製品への人気集中と、関連サービスへのセキュリティ機能の浸透だ。特にオンラインサービスなどでは、セキュリティ機能を組み込まないサービス設計は考えられないほど浸透している。あらゆるサービスやネットワーク機器にセキュリティ機能が浸透し、セキュリティへの投資を明確に分類しにくい状況が生まれつつある。

 単体で導入できるアプライアンス製品が人気を集めているが、その中でも特に注目されているのはアンチスパムなどのメッセージセキュリティ製品群だ。エンドユーザーやITに疎い経営層でも効果がわかりやすく、導入を決定しやすいためだと花岡氏は説明する。これは新たなトレンドというよりも、IT投資の歴史の中で常に言われてきたことだが、効果を説明しづらいソリューションは社内での理解を得にくく、導入が難しい。一方で、内部統制という追い風があるとはいえ、アイデンティティ管理のような基盤システムの導入も広まりつつある。システム構築に多くの時間と費用を要するシステムでも、必要性が理解されれば投資対象になるという一例だろう。IT部門やシステムを提案するシステムインテグレーターとしては、企業のIT化を進めるためにいかに効果を感じてもらうかを考えていく必要がある。

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