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- 2009/02/21 掲載
【インタビュー】2008年のIT市場トレンドを読み解く
IDC Japan セキュリティ リサーチ マネージャー 花岡秀樹氏
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IDC Japan セキュリティ リサーチ マネージャー 花岡秀樹氏 |
続いて2008年のトレンドを占う上で重大な項目を、10項目に渡って挙げた。最も関心の高い話題として挙げたのは、M&Aによる業界再編の加速。メッセージセキュリティ分野の伸びが大きく、大企業や既存ブランドによるメッセージセキュリティ企業の買収が進むのではないかと花岡氏は予想する。参加するプレイヤーもITベンダばかりとは限らない。セキュリティ機能を既存サービスに組み入れるために、ITベンダ以外の企業がM&Aに参入してくることが考えられると指摘。第2のポイントとして挙げたのは、ボットネットマーケットの拡大。高機能化するだけではなく、個人の愉快犯から金銭目的の組織犯罪へと発展しているのも昨今の傾向だ。ターゲットも、オンラインでのみ利用できるポイントなどのバーチャルマネーや、アフィリエイトシステムなど、オンライン犯罪ならではの被害が増えている。
第3のポイント以降には、内部統制に関連する話題が多く挙げられた。日本版SOX法実施により、企業はさまざまな対応を求められることになる。対応により直接生じる影響と、それへの対処が生み出す2次的影響を含め、企業にもIT業界にも大きな影響を及ぼすことが予想される。中でも花岡氏が懸念を示すのが、IT統制など各種の制約が設けられることによるビジネススピードの低下だ。直接的には生産性低下という形で、2次的には新しいビジネスプロセスになじめない従業員による内部エラーという形で影響が現れるだろうと予想する。
日本版SOX法により内部統制を求められるのは、上場企業約3800社とその連結子会社数万社に上る。完全な対応ができている企業は少ないのだが、達成できていないことに対して罰則があるのではない。しかし、虚偽の報告をすれば罰則があるので、できていない現状を報告し、改善策を示すという企業が続出するだろう。内部統制は、予防的コントロールと発見的コントロールに分けられる。予防的コントロールを実現するためには、職務分掌を進めなければならないが、職務の数だけの人員を確保できないだろうと考えられる。発見的コントロールの実践にはログ記録や管理のために多大なコストが必要となり、そこにセキュリティソリューション活用の機会がある。もちろん、それに対応するためのアプライアンスやサービスも続々と現れるに違いない。一見、IT業界への特需となりそうな話題だが、喜ばしいことばかりでもないと花岡氏は言う。
「対象となる企業のうち、多くの数を占めているのは連結子会社です。ほとんどは中小企業であり、予算規模も大きくはありません。その市場へ製品やサービスを提供していくためには、単価の低下は避けられないでしょう。」
また、管理要員を潤沢に確保できない中小企業では、アプライアンスやセキュリティサービスを選択する傾向にある。より容易に利用できるよう、各ソリューションのアプライアンス化やパッケージサービス化も進むと見られている。
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IDC Japan セキュリティ リサーチ マネージャー 花岡秀樹氏 |
単体で導入できるアプライアンス製品が人気を集めているが、その中でも特に注目されているのはアンチスパムなどのメッセージセキュリティ製品群だ。エンドユーザーやITに疎い経営層でも効果がわかりやすく、導入を決定しやすいためだと花岡氏は説明する。これは新たなトレンドというよりも、IT投資の歴史の中で常に言われてきたことだが、効果を説明しづらいソリューションは社内での理解を得にくく、導入が難しい。一方で、内部統制という追い風があるとはいえ、アイデンティティ管理のような基盤システムの導入も広まりつつある。システム構築に多くの時間と費用を要するシステムでも、必要性が理解されれば投資対象になるという一例だろう。IT部門やシステムを提案するシステムインテグレーターとしては、企業のIT化を進めるためにいかに効果を感じてもらうかを考えていく必要がある。
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