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  • 2023/05/12 掲載

『ファイナルファンタジー』が安定収益すぎる理由、ドラクエすら超える“商売の秘密”

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第11回)

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『ファイナルファンタジー(以下、FF)』と言えば、日本RPG史に残る名作である。累計出荷本数・ダウンロード数は約1.6億本と、スーパーマリオ・ポケットモンスター(約4億)に次いで日本では3位、世界では10位前後に入る超人気シリーズである。そんな本作の前には、常にライバルである『ドラゴンクエスト(以下、DQ)』の存在があった(現在はどちらの作品もスクウェア・エニックス)。今回は、追いかける立場にあったFFが、なぜDQを上回ることができたのか、そして今なお安定的に収益を上げることができているのか、その理由に迫りたい。

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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なぜ、ファイナルファンタジーは安定的に収益を出せているのか。作品の成功には、あらゆる要素が関係している
(Photo/Shutterstock.com)

FFの強敵「ドラクエ」の凄さ

 FFは、誕生してからこれまでの間、どのように販売実績を伸ばしてきたのだろうか。1987年に発売されたFF1は、初回出荷で30万本強を売り上げている。当時のファミコンカセットは1本あたり3,000円程度のROMカートリッジ代を開発会社が払い込み、事前に任天堂に生産委託する必要があった。

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あの有名キャラたちは、なぜ成功できたのか?本連載でまとめて解説する
 30万本と言えば、それだけで10億円、売れずに余れば当然ながら自社の死蔵在庫になる。ソフト開発費に数百万~数千万円がかかるという当時の開発規模から考えると、ゲームビジネスは開発や流通以上に「製造」が高リスクの商売であり、しかも発売半年前にはその本数を見込みで発注しなければならない制約も手伝い(売れたものを後から追加発注すると2~3カ月遅れになってしまう)、人気はあっても在庫切れになって結局売れなかったという事例も珍しくなかった。

 FF1の発売開始1年前の1986年末、DQ1(約150万本)によるRPG大ブームがあった。そうした後押しもあったとはいえ、当時のスクウェアの経営体力を考えれば、30万本という初回出荷本の用意は、かなりのチャレンジだったと考えられる。最終的には累計51万本の販売となったが、FF2が約133万本売れたことを考えると、それでも機会損失はあったのかもしれない。

 FF1と同時期に発売されたDQ2が240万本、1988年末のFF2の時には社会現象となったDQ3(約380万本)。300~400万部売れていた集英社の週刊少年ジャンプの『ドラゴンボール』作者の鳥山明氏と手を組んでいたDQは、常にトリプルスコアでFFを圧倒する“遠い背中”であった。

いつFFはDQを越えた? プレステ時代に起きた大変革

 それでは、FFにとって悲願のDQ越えはいつ達成できたのだろうか。それは、約328万本を売り上げたFF7(1997年)であり、DQ6(1995年)の320万本を超えた時期だ(DQ7は開発遅延を繰り返した2000年に406万本で記録を抜き返している)。また、同時にプレイステーション(以下、PS)が任天堂一強時代に終止符を打ち、ソニーグループが一大コンソールプラットフォーマーとしての地位を確立した時期でもある。

 PSが約1000万台出荷していた1997年1月、FF7が単体でまたたくまに300万本越えとなったのだ。PSがあったからFF7が売れたのか、FF7があったからPSが売れたのか分からないほどだ(その後、PSは1998年末には約3000万台弱まで到達)。

 実際に、ソニー・コンピュータ・エンターテイメント(以下、SCE)は「FF7、プレステで始動!」というテレビCMを発売の1年前から大量に投入するほどに乾坤一擲(けんこんいってき)の作品だったと言える。

 なお、このFF7がリリースになる1997年1月に、エニックス社はDQ次回作(DQ7)がNintendo64ではなく、PS向けに出されることが発表する。PS販売数1000万台突破記念パーティーの席上で挨拶を行ったSCE代表の丸山氏は、まるで大物アーティストが移籍してきたかのように、声を詰まらせて「ドラクエに来ていただいて…」と喜びを表していたという(山下敦史『プレイステーション 大ヒットの真実』日本能率マネジメントセンター1997)。

 また、『僕たちのゲーム史』(2012、星海社)の中でも、著者さやわか氏は「『長いゲームの歴史を、どこか一カ所で区切ってくれ」と言われたら、僕なら1997年を選びます』と語っている。

 それは、1997年がFF7という伝説的タイトルの誕生した年でもあることに加えて、DQまでもが参入してPSが盤石化した年であるからだろう。さらには任天堂が『NINTENDO64』を値下げ&それまでの流通の根幹となっていた初心会の解散を決定したほか、セガとバンダイの合併も表明されるなど、ゲーム業界大激変の年でもあったのだ。

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FFシリーズ歴代最大のヒット作とは?(次のページで詳しく解説します)
※映画:Box Office Mojo、家庭用:各作品の発表出荷本数、モバイル:上位20作品の他社パブリッシュのFFブランドアプリも含めた売上推測額(WebゲームはIRのモバイル売上推移よりアプリゲームの消費額から逆算して代入)、MMO:IR資料

 FF7が今を持ってなおFFシリーズ屈指の人気を誇るのは、純粋な物語やキャラクターだけでなく、こうした半世紀にわたるゲームの歴史における画期的な分岐を象徴する作品でもあった、という影響もあるかもしれない。 【次ページ】FFとドラクエは何が違う? なぜFFは安定収益型なのか

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