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- 2025/05/28 掲載
もう過去データに価値はない、スタートアップの成功予測「95%」のAIの仕組み
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

スタートアップの成功予測分析、既存のアプローチ
スタートアップの成功予測は、投資家や起業家、政策立案者にとって重要な課題である。しかし、設立から5年以内に約90%のスタートアップが姿を消すという現実は、過去数十年にわたって大きな変化がない。こうした状況に一石を投じようと、これまでさまざまな取り組みが実施されてきた。直近で最も注目されているのは、スタートアップデータベースを提供するCrunchbaseの取り組みだ。同社は、リアルタイムの動きを追跡することで、高精度でスタートアップの成功を予測するシステムを構築したという。
独自の強みである過去データに加え、投資家の行動データを活用している点が特徴だ。どのような予測システムなのか、その詳細を解説する前に、これまで主流となってきた、過去データのみを使ったアプローチについてみていきたい。
その1つとして挙げられるのが2023年9月にマーク・ポタニン氏らの研究グループが発表したアプローチだ。
ポタニン氏らの研究グループは、Crunchbaseの3万4470社のデータを用いて、資金調達、創業者の特徴、業界カテゴリーなどの多様な要因を統合したディープラーニングモデルを開発。シリーズBおよびシリーズC投資段階にあるスタートアップを対象に、IPO(新規株式公開)、ユニコーン企業化、M&A(合併・買収)といった主要な成功指標を予測することに成功した。
このモデルの予測精度はかなり高いものとなった。ベンチャーキャピタル投資プロセスをシミュレートする包括的なバックテストアルゴリズムを用いた検証では、14倍の資本成長を達成。シリーズBラウンドで、Revolut、DigitalOcean、Klarna、GitHubなどの高成長スタートアップを的確に識別できたとされる。
機械学習の評価指標でみると、このモデルは正確な予測を86%の確率で行うことに成功。また、時間の経過による予測精度の変化を検証したところ、スタートアップが成功するケースを92%の確率で言い当てることができた。一方、成功するスタートアップを見逃す確率は36%に抑えられている。これは投資の現場を考慮したモデル設計といえる。というのも、有望なスタートアップへの投資機会を逃すことは、投資家にとって大きな機会損失となるためだ。
こうしたディープラーニングベースの予測モデルは、投資判断プロセスに寄与する可能性を持つ。しかし同時に、企業の過去データに基づく予測の限界も指摘されている。スタートアップのエコシステムは急速に変化しており、過去のパターンが必ずしも将来の成功を保証するわけではないためだ。
この課題に対して、Crunchbaseが示すのは、投資家・VCの注目点なども考慮に入れた、より包括的な予測モデルだ。次からその詳細に迫っていこう。
データプロバイダーから予測エンジンへ、Crunchbaseの刷新
Crunchbaseは2025年2月19日、データプロバイダーとしての立ち位置から、AIを活用した予測エンジンへと大きく舵を切ることを正式に発表した。同社は、スタートアップの資金調達、買収、成長軌道を最大95%の精度で予測できるAIモデルを開発したと主張。これを軸に、予測サービスを展開する構えだ。
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