- 2025/06/14 掲載
コロナ禍が暴いた「会社の本音」──社員の心が一気に離れていったワケ(3/3)
会社の“本音”が見えてしまったコロナ禍の対応
こうして今の会社のあり方、企業社会のあり方に疑問や違和感を持っていた人たち、さらにコロナ禍で距離を置いて会社や仕事との関係を見つめ直すことになった人たちは、今まで以上に会社からのメッセージ、会社の姿勢に敏感になっています。この会社は本当に自分にとって望ましい場所なのか、居続けたい場所なのかということを見極めようとしている人も増えています。
コロナ禍が始まった当初、会社による対応の違いが話題になりました。
すぐに健康と命が最優先だと言って、リモート勤務に切り替えた会社。逆に、売上をどう維持するか、むしろその確保のために社員にこれまで以上に働くことを強いた会社。
正規社員か非正規社員かによって、対応を変えなかった会社。お詫びも説明もなく、当たり前のように非正規社員をすぐに解雇した会社。
コロナ禍でも出社しなければならない社員への配慮、健康面でのフォローを徹底した会社。出社するのが当たり前の仕事だからと何もフォローしなかった会社。
家族のことも考え、出社するのは不安だと訴える社員がいても、あなただけ勝手を許すわけにはいかないと突き放した会社。1人ひとりの事情をしっかり聴き、話し合った会社。
会社の業績が悪いということで、社員の給与は下げたのに、上の人たちの給与はどうなっているのかわからない会社。経営者から社員までが一緒に痛みを共有した会社。
こうした会社の対応の1つひとつから、会社は社員のことを本当に大切な存在だと思っているのか、単なる業績を上げるための手段としてしか見ていないのか、会社の姿勢、会社の本音が見えてしまった。
そうなると、ますます社員は会社を客観的に見るようになる。この会社は何を大切にしているのか、働く人たちのことを何よりも大切に思ってくれているのか。その中でもどう乗り切ろうとしているのか、その変化に耐えられる会社なのか。その中で、社員よりも会社を優先している、経営の論理が優先されていると思ったとき、社員の心理的距離感が一気に広がったのではないでしょうか。
このままなら日本企業はますます活力を失い、衰退する恐れ
アフターコロナ、コロナ後の会社の対応にも、いろいろな違いが出てきました。コロナ禍が終わったので、全員出社に戻しますということが当たり前のように伝えられた会社。それに対して社員が不安、不満を言っても、会社が決めたことだから従ってくださいとだけ伝える人事や管理職。
逆にこれを機に、オフィスを最小限にして、どこに住むか、どのくらい出社するかも個々人の裁量に任せますということを明確にした会社。
急に人が足りないからと、一度切った非正規社員にお詫びもなく、再雇用しますという通知だけを送る会社。
全員出社にすべきか、逆にここで経験したことを受けてさらにリモートワークを進めるべきか、ハイブリッドワークという新しい働き方を見つけるべきか。何が正しいとは簡単にはいえません。
でもこのとき、社員の感情と向き合ったのか、社員にその意図を十分説明したのか。それでも事情を抱えている人、変えたくない人と、しっかり話し合ったのか。
特にリモートワークをした人の中には、そこで自分らしい働き方、生活とのバランスのとり方が見えてきた人、それが前向きな気持ちを生んでいた人もいます。でもそれが一方的に廃止になり、自分の気持ちや事情には寄り添ってくれないと思ったとき、ますます心が離れていくという現象を起こしたのではないでしょうか。
一方で、ここでまた全員が出社して、顔を合わせることで、気づき合い、フォローし合える関係を取り戻したいという考え方は大切なことだと思います。問題はその思い、必要性を、社員が受け入れる、むしろ自分たちも大切だと思えるかどうかです。
コロナ禍をめぐる会社の対応は、会社が、経営者が、社員をどれだけ大切にしているのか、社員の気持ちにどれだけ寄り添うことができる人たちなのかを判断するリトマス試験紙のようになっていました。それは今まであいまいな中で、それでも会社という存在から離れられないと思っていた人たちに、本当にそれでいいのかと問いかけるものになったのです。そして、多くの会社で、心が通わない一方的なやり取りが行われ、結果として心が離れていく社員を増やしていく。そんなことが起きたのではないでしょうか。
心が離れていく社員が増えていくことは、会社の存続にとって大きなリスクですが、逆に個人と会社との関係を根幹から変えていく大きなチャンスにもなります。

でも、もしこのままなんとなく心が離れ、適度な関わり方をすることで自分を守る人ばかりになったら、どうなるのでしょうか。日本企業はますます活力を失い、変化できずに、停滞、衰退へと向かうかもしれません。それは同時に、静かに関わり続けようと割り切った人たちの雇用と生活を奪うことにもなる。
私たちは今、冷静に仕事、職場、会社との関係を見直し、その中で関わる人たちが互いに幸せになるための新たな論理を必要としています。そこに真剣に、真摯に向き合えるのか、それが個人にも会社にも求められているのではないでしょうか。
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