- 2025/07/13 掲載
人は1日3万5000回も「決断」している。現代人が知るべき「意思決定」の複雑性とは(3/3)
「この新規事業でいくら儲かるの?」という質問は…危うい
VUCA時代に直面するのは、「正解のない意思決定」、すなわち3. の「複雑な問題」が中心になります。2. の「複合的な問題」についても、必ずしも予測できる変数ばかりではないため、範囲に含まれると言えるでしょう。実際に日々のさまざまな課題に向き合っていると、このように綺麗に分類して戦略を練るというのはなかなか難しいかもしれません。しかし、次々と起こる問題や複雑な状況に対しその都度一貫した指針なく闇雲に意思決定しようとしていると、決断の認知負荷が高まり、意思決定の質は低下していきます。
その結果、本当は検知できたはずの創発現象に対応しきれないといったリスクを抱えることになります。最も気をつけなくてはならないことは、3. のように複雑性が高く実験や試行錯誤を要する問題であるにもかかわらず、あたかも1. の単純な問題であるかのように扱ってしまうことです。
「この新規事業でいくら儲かるの?」「このリーダーシップ研修を導入したら、売上にどのように影響を与えるの?」といった質問が時折なされるのは、意思決定の複雑性を捉えきれていない証左だと言えるでしょう。意思決定の複雑性とそれに対して必要な思考的柔軟性は比例します。リーダーとして、意思決定を求められている問題のプロファイリングを少なくとも自分の中で整理しておくことは極めて重要なことだと言えます。
「この意思決定は正しい」と断言することは不可能に近い

私がアメリカの大学院で組織論を学んでいたとき、ある教授から言われた「『正しかった意思決定』はあるが、『正しい意思決定』はない」という言葉を今でも鮮明に覚えています。
つまり、結果として物事が意図したとおりに運んだので「あの意思決定は正しかった」と振り返ることはできるが、その決断の瞬間に「この意思決定は正しいです」と断言することは複雑系システムにおいては不可能に近い、という意味です。これは本当にそのとおりだと今でも思います。
しかし、かといって行き当たりばったりで、直感のみにしたがって闇雲に決断すればいいわけではありません。教授の話は続きます。
「しかし、『良い意思決定』は可能だ。自分の認知の範囲を広げ、知覚しえる範囲でその意思決定をめぐるあらゆるファクターを謙虚に考慮し、善意を持って最良の意思決定を下そうとするのは、リーダーの役割である」
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