• 2025/08/11 掲載

「習慣化は意志の強さ」という大ウソ、脳科学でわかった「続ける人」の共通点(2/2)

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ベストセラー著者が提案する、新たな習慣がすぐ身につく方法



 皆さんには、すでにいくつかの習慣化された日々のアクションがあるはずです。

 たとえば、目覚めたらコーヒーを飲む、眠る前に歯磨きをするなどです。

 現在自分に身についている習慣に「行動を追加」して、新しい習慣をつくり出す。

 ──これが2つ目の「すでに備わっている習慣にくっつける」です。

 ベストセラー本『Habit Stacking: 97 Small Life Changes That Take Five Minutes or Less』の著者として知られるS・J・スコットによって提案されたこのアプローチは、「ハビット・スタッキング」と呼ばれています。

 つまり、すでに備わっているハビット(習慣)に新しい行動をスタッキング(くっつける)することで、精神的な負担を少なくしながら、新たな習慣をすぐにつくることができると言うわけです。

例)
  • 既存の習慣:朝コーヒーを入れる
  • 新しい習慣:コーヒーを入れたら、今日のTo-Doリストを1つやる

例)
  • 既存の習慣:眠る前の歯磨き
  • 新しい習慣:歯磨きをしながら英単語を5つ覚える

 このように既存の習慣をきっかけとして活用することで、新しい習慣を定着させやすくするというわけです。

 行動科学者であり、『Tiny Habits: The Small Changes That Change Everything』のベストセラー著者でもあるスタンフォード大学のBJ・フォッグは、「ハビット・スタッキング」の第一歩は、日々のルーティンを充実させるために具体的にどのような行動をとりたいかを自分自身で明確にすることが大切だと述べています。

 目標を明確にすることで、効果的な「ハビット・スタッキング」の基盤が築かれ、目標達成に向けた具体的なステップに集中できるようになるとも言っています。

 つまり、漠然と既存の習慣に新しい行動を紐づけるのではなく、「時間を効果的に使うことができる生活をしたい」という目標があるなら、それを実現するための新しい行動を、既存の習慣に組み込んでみる。

 あるいは、「健康的な生活を心がけたい」と考えているならば、それが叶うような新しい行動を、すでに行っている習慣に紐づけるという具合です。

 また、既存の習慣には、

  • 「毎日行うこと」…コーヒーを飲む、シャワーを浴びる、電車に乗るなど
  • 「毎日起こる身のまわりの出来事」…朝日が昇る、電話が鳴る、お腹が空くなど

の2つのタイプがあり、それぞれをリスト化した上で新たな習慣とのマッチングを考えると効果的だと触れています。

 研究によると、人生を変えるには、練習時間以上に練習の継続のほうが効果的だということもわかったということです。

 つまり、週に一度30分練習するよりも、毎日5分練習するほうが、持続的な変化をもたらす可能性が高くなります。

 寝る前の歯磨きに英単語の暗記を紐づけるという持続的なクセをつけるだけで、1年後、3年後の自分はまったく変わってくるのです。

 もし、どんな習慣を身につけたいかわからないという人は、生活のさまざまな側面を書き出し、体の健康、精神的な健康、キャリア形成、人間関係の強化、スキルアップなどに分けてみるといいでしょう。

 視認化されることで、自分が必要としている習慣を導きやすくなるはずです。

飲食店のトイレにある「貼り紙」がもたらす不思議な影響


 そして、最後が「環境を利用する」ことです。

 人間の意思決定は、環境に左右されるところがとても大きいものです。某ファーストフード店のイスは、意図的に硬く、座りづらいデザインにしてあるといいます。なぜなら、居心地がいいと、人はそこに居座りつづけてしまうからです。

 また、ごみ箱の横などに「家庭ごみのもち込み禁止 監視カメラ作動中」といった貼り紙があるだけで、家庭ごみをもち込む人が激減したといったケースもあります。

 車を運転していてコンビニに寄ろうとするとき、なんとなく車を止めやすいコンビニに入ろうと思ったりしませんか?

 高い月謝を払ったからには、英会話やスポーツジムに多く通いたいと思いませんか?

 このように、人間の意思決定は、私たちが考えている以上に環境に「依存」し、「最善の妥協」をする形で行われています。

 裏を返せば、環境が人間の意思決定を左右するということは、意志の強さ・弱さとは無関係に、人間の行動は環境によって変えることができるということです。

 「今日は飲まない」と決めたはずだった意思も、冷蔵庫の中にビールや発泡酒があれば、ゆらいでしまう可能性が高くなってしまいます。環境をコントロールすることは、そのまま自分の意思決定をコントロールすることにつながるのです。

 アメリカの行動経済学者リチャード・セイラーが2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで広く知られるようになった、「ナッジ」という行動経済学の用語があります。

 端的に説明するなら、「行動科学の知見を利用し、人々の選択の自由を損なうことなく、環境を整えることで本人や社会にとって好ましい行動を実現させる方法」を意味します。実際、私たちの生活には、「ナッジ」がたくさん導入されています。

 たとえば、飲食店のトイレに貼ってある「いつもきれいに使っていただいて、ありがとうございます」という貼り紙。こうした貼り紙を見ると、不思議と「きれいに使わなければいけない」と感じてしまうのは、まさに「ナッジ」を活用した事例です。

 また、コロナ禍の際に、ソーシャルディスタンスを保つために足元に靴のマークが描かれていることが多々ありましたが、皆さん、無意識にマークに足を置いたはずです。

 このように「ナッジ」は、意図的に環境を整備することで、人間の意思決定や行動をよりよい方向へと導くことが可能となるのです。

 習慣づくりは、自分の意志だけで成し遂げようとすると、どこかでストレスを感じ、疲れてしまいます。「私は〇〇をはじめるんだ!」とどれだけ意気込んでも、なかなか脳はその通りには動いてくれません。

 無理なく前向きに続けるには、ここで説明した3つのポイントを忘れないようにすること。この仕組みさえ理解すれば、心身に負荷をかけずに新しい習慣が身につきやすくなるはずです。

※本記事は『ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科 人生が変わるテクニック112個集めました』を再構成したものです。

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