- 2025/08/23 掲載
AIで消費者の本音を丸裸に!競合ゼロの市場を作りまくるユニクロの「常識破り戦略」(2/3)
ユニクロは消費者の“〇〇〇ニーズ”に着目している
ユニクロのブルーオーシャン戦略の核心は、消費者の「未充足ニーズ」に着目し、それを満たす商品を開発することにあります。未充足ニーズとは、消費者が潜在的に持っているにもかかわらず、市場に適切な商品がないために満たされていないニーズのことです。たとえば、「寒さから身を守りたい」というニーズは誰もが持っていますが、従来のアパレル業界のアプローチでは「厚手の服を着る」ことでしかニーズを満たせませんでした。しかし、厚手の服はかさばり、動きにくく、おしゃれとは言いがたいという欠点がありました。ここにユニクロは着目し、「薄くても暖かい」という未充足ニーズを満たすヒートテックを開発しました。今の服では満たせていない未充足ニーズをテクノロジーの力で解決して、新しい市場をつくったのです。
このアプローチがユニクロの商品戦略の基本形です。「いまだ満たされていない潜在的ニーズを具現化する」ことで、多くの人々が共感する商品を生み出しています。
重要なのは、ユニクロが単に「機能だけ」を追求しているわけではないという点です。機能性と同時に、見た目の良さや着心地、使い勝手など、トータルな価値を提供することで、真に消費者の未充足ニーズを満たすことができます。
こうしたユニクロの商品開発手法は、従来のマーケティング戦略とは一線を画しています。多くの企業がターゲットセグメントを決め、そこに合わせた商品を開発するのに対し、ユニクロは人々に共通の未充足ニーズから出発し、それを満たす商品を開発しています。これこそ、「MADE FOR ALL」の考え方なのです。
こうした開発手法の成功は、製造から販売までのプロセスを一貫して行う製造小売業(SPA)モデルを先駆けて導入したことも大きな要因と言えるでしょう。すべてを自社で手掛ける仕組みにより、余分なコストをカットし、高品質の製品をより安く提供できる体制を確立しました。
常に新しい製品を開発、大量生産し、コストを下げ、安い値段で提供する。そこで得た収益を使って、さらに機能性を高めた商品を投入し、新たな需要を掘り起こし続けています。
実際、ヒートテック、シルキードライ、エアリズムなどの機能性衣類は今も進化し続けています。他社でも機能性衣類は販売されていますが、「ヒートテック」「エアリズム」などの認知度には及ばず、ユニクロは「機能性衣類=ユニクロ」という不動の優位性を保っています。
ユニクロのAI活用法が消費者の真のニーズを暴き出す
ユニクロが未充足ニーズを捉える上で重要な役割を果たしているのが、AIを活用したデータ分析です。これが「情報製造小売業」というストラテジーの具体的な実践となっています。ユニクロは年間数千万件に及ぶ顧客の声を収集し、それをAIで分析して、真のニーズを把握しようとしています。これには、店舗からのフィードバック、公式アプリでの評価、SNSでの言及、公式サイトのレビューなど、さまざまなチャネルからの情報が含まれます。
2018年7月には、AIによるチャット接客機能「UNIQLO IQ」を公式アプリに本格搭載し、「あなた専用のお買い物アシスタント」をコンセプトとした新たな購買体験の提供に乗り出しています。
このサービスの特徴は、FAQなどの質問対応だけでなく、おすすめのコーディネートの提案から、商品ページの閲覧、商品在庫の確認、最終的な商品の購入に至るまでのサポートをチャットで完結できる点です。着こなしや用途など利用シーンに関する相談、体型の悩み解決、トレンドについての質問など、ユーザーとAIの対話を通じて、適切な提案ができるよう工夫されています。つまり、悩みを相談しながら、自分自身に合った商品の購入までをプラットフォーム上で完結できるのです。
もちろん、そうした悩みもユニクロの次なる商品開発の重要なヒントになります。
こうして集められた膨大なデータは、AIによって分析され、パターンやトレンドが抽出されます。たとえば、特定の商品に対する評価が地域によって異なる場合、その背景にある要因(気候、経済環境の変化、文化的背景など)を分析することで、より適切な商品開発や品揃えの調整が可能になります。AIによる分析は、単に現在のニーズを把握するだけでなく、将来のニーズ予測にも役立てられています。
これらのデータ分析と現場からのフィードバックを組み合わせることで、ユニクロは消費者ニーズを精緻(せいち)に把握することができます。データだけでなく、人間の生の声も情報として活用し、AIに読み込ませて、トライアンドエラーを重ねます。そうすることで、さらに情報の精度を高められます。これが、ユニクロの情報活用の姿であり、より精度の高い商品開発を可能にしています。 【次ページ】単なるインナーウェアの枠を超えた「エアリズム」のすごさ
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