- 2025/09/01 掲載
15年赤字続きだった米ユニクロ…認知度と好感度が爆上がりした奇跡の「逆転劇」
株式会社UNLOCK POTENTIAL/リード・ザ・ジブン合同会社CEO
ISL(Institute for Strategic Leadership)プログラムディレクター/大学院大学至善館教授。東京大学経済学部卒業。ハーバード大学ケネディ大学院修了(政策学修士)。アーサー・D・リトル経営大学院修了(経営学修士、首席)。
1985年に東京海上に入社。米国留学を経て、戦略コンサルティング業界へ。ボストン コンサルティング グループ(BCG)ではパートナー、組織プラクティスの日本の責任者を務め、Organization Practice Awardを受賞。その後、シグマクシスを経て、2012年から2016年の間、ファーストリテイリングの経営者育成機関FRMIC担当役員を務めた。
その後アクセンチュアの人材組織変革プラクティスのジャパン全体の責任者を経て、リード・ザ・ジブンを起点にした人材組織変革を手掛けるUNLOCK POTENTIAL(「人と組織の可能性を解き放つ」の意味)を設立。デジタルトランスフォーメーションにともなう人材組織変革、経営者人材育成、経営チーム変革、組織風土変革、新規事業創出等のコンサルティングおよび研修・講演を行なっている。
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15年間も赤字が続いたユニクロUSの復活劇
ユニクロのアメリカ市場における苦闘と復活の物語は、海外戦略における粘り強さとともに、戦略転換の重要性を示す象徴的な事例です。アメリカ市場は2005年9月にニュージャージー州のショッピングモールに1号店を出店しましたが、なかなか軌道に乗りませんでした。2016年までの20カ月間に5店舗を閉鎖するという危機的状況にも見舞われました。しかし、15年間の赤字期間を経て2022年8月期にようやく黒字化を達成し、2025年限在では全米50州に120店舗を展開するまでに成長を遂げています。
この復活の鍵となったのが、SNS戦略の革新です。特にTikTokを中心としたデジタルマーケティングが起爆剤となりました。2023年、英国人女性が投稿した「ラウンドミニショルダーバッグ」のスタイリング動画が2000万回再生を突破し、同商品が全米で品切れ続出となる現象が発生しました。これは「令和のバーキン」と呼ばれるほどの人気につながっています。これを契機に、ユニクロは米国向けSNS戦略を全面刷新しています。
たとえば、Instagramでは「#UniqloUSStyle」キャンペーンを展開し、一般消費者からの投稿を積極的に採用しました。2024年にはユーザー生成コンテンツ(UGC)が公式投稿の40%を占めるまでになりました。TikTokではZ世代向けに「Style Challenge」を週次開催し、一着3スタイリングの提案動画が瞬く間に累計5億回再生を突破しています。
これらのマーケティング強化の取り組みは、コロナ禍において競合他社が広告やマーケティング費用を削減する中で、あえて正規価格での販売を維持しながらマーケティング投資を継続するという、一見すると逆説的にも思える戦略でした。東海岸や西海岸、カナダの主要都市ごとにマーケティング目標を設定し、新聞広告、ケーブルテレビのCM、SNSでの情報発信を増やし、「Life Wear」というブランドコンセプトの浸透を図るとともに、従業員にも自社の存在意義の理解を促す取り組みが行われました。
この差別化戦略が功を奏し、ブランドの認知度と好感度が大幅に向上することとなりました。米国の主要都市でのブランド認知度が向上し、好感度も着実に高まり、「GAPの上位互換」とも言われています。
【次ページ】収益率を劇的に改善させた、大胆すぎる構造改革
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