• 2025/08/23 掲載

AIで消費者の本音を丸裸に!競合ゼロの市場を作りまくるユニクロの「常識破り戦略」(3/3)

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単なるインナーウェアの枠を超えた「エアリズム」のすごさ

 ユニクロの代表的な商品の1つであるエアリズムは、繊維の極細化により空気のように軽く、快適な着心地を実現したインナーです。これも未充足ニーズを見事に捉えた例です。

 エアリズムは「汗をかいてもさらっとした着心地でいたい」というニーズに応える画期的な商品でした。従来の肌着やインナーは、汗をかくとすぐに肌に張り付き、不快な着心地になりがちでした。そのため、「下着を着ないで、シャツを肌の上に直接着る」という選択をする人も少なくありませんでした。ただ、それではシャツが汗などで傷みやすいデメリットがありました。

 エアリズムは2013年に初めて発売されました。名前の「エアリズム(AIRism)」は「空気(Air)」と「主義・理念(ism)」を組み合わせた造語で、「空気のように重さを感じない着心地」を追求した商品コンセプトを表しています。

 最大の特徴は、その独自の繊維構造にあります。髪の毛の約1/10~1/12という極細繊維を高密度に織り込み、「吸汗速乾」「接触冷感」「抗菌防臭」という3つの基本機能を実現しています。

 汗を迅速に吸収して素早く乾かす機能により、汗をかいてもべたつかず、着た瞬間にひんやりとした感覚を与える接触冷感素材で、暑い季節でも快適に過ごせる設計になっています。なめらかで摩擦が少ない素材のため肌にも優しく、寒暖差のある季節から初夏にかけて特に活躍します。

 また、エアリズムの生地は非常に薄く、一般的なコットンTシャツの約半分の厚さしかありません。このため、アウターに響きにくく、スーツや制服の下に着ても目立たないというメリットがあります。さらに、伸縮性にも優れているため、体の動きを妨げず、ストレスフリーな着心地を実現しています。実用性とデザイン性を両立させたのです。

 ユニクロは東レと共同で、エアリズムの素材開発に約4年の歳月をかけました。

 その独自技術は特許も取得しており、「微細孔構造」と呼ばれる特殊な繊維構造により、汗や湿気を素早く拡散させ、衣服内の温度と湿度を最適に保つ仕組みになっています。この技術は単に「さらっとした着心地」というだけでなく、体温調節という人間の基本的な生理機能をサポートする画期的なものでした。

 「暑さ対策」というと、一般的に「汗を吸う」「涼しく感じさせる」といった受動的な機能が注目されがちですが、エアリズムの真の革新性は「快適な着心地を能動的に創る」という発想にありました。

 特に日本のような高温多湿の環境では、汗をかくことは避けられません。汗をかくこと自体は体温調節のための自然な生理現象ですが、その後の不快感をいかに軽減するかがポイントです。エアリズムは「汗をかいた後も快適でいたい」という普遍的なニーズを満たした画期的商品と言えるでしょう。

 エアリズムは夏用のインナーウェアとして開発されましたが、現在では1年中着用できる商品ラインアップに拡大しています。男性用・女性用・子供用など、あらゆる年齢層、性別向けに展開され、Tシャツ、タンクトップ、ポロシャツ、ブラトップ、ボクサーブリーフ、レギンスなど多様な形状で提供されています。ここにも「10代女性」も「70代男性」も同じニーズを持っているというユニクロ独自の視点が表れています。汗をかいたときにさらっとした着心地でいたいというニーズは、年齢や性別を問わず共通のものであり、それに応える商品は幅広い支持を集めています。

 素材も「コットンライク」「シームレス」「UVカット」「ソフトクール」など、用途に合わせて選べるように、バリエーションが豊富です。価格も1,290円と、高機能ながら手頃な価格設定になっています。

画像
ユニクロの戦略』をクリックすると購入ページに移動します
 エアリズムの成功は、ユニクロのグローバル展開にも貢献しています。高温多湿のアジア地域では、エアリズムの機能性が高く評価され、ユニクロのブランド認知度向上に大きく貢献しました。また、近年の温暖化による猛暑日の増加に伴い、欧米諸国でもその需要は年々高まっています。

 さらに2020年には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて「エアリズムマスク」を開発・販売。その高い通気性と洗える利便性が評価され、発売初日に約100万枚が即日完売するという驚異的な人気となりました。このように、ユニクロのエアリズムは単なるインナーウェアの枠を超え、人々の生活における「快適さ」を追求する象徴的な存在となっているのです。

 エアリズムの開発において特筆すべきは、「これまで世の中になかったものを作った」という点です。ヒートテックやフリースが既存製品のイメージ転換や改良だったのに対し、エアリズムはより革新的な新商品の開発と位置づけられます。

※本記事は『ユニクロの戦略』を再構成したものです。

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