- 2025/09/01 掲載
15年赤字続きだった米ユニクロ…認知度と好感度が爆上がりした奇跡の「逆転劇」(2/3)
収益率を劇的に改善させた、大胆すぎる構造改革
アメリカ事業の黒字化を支えたのは、デジタル技術を駆使したサプライチェーン改革と固定費削減です。コロナ禍を契機に、現在ユニクロの社長を務める塚越大介氏はアメリカ事業の構造改革を断行しました。まず不採算店舗を大胆に閉鎖しました。長年課題となっていた不採算店舗の前倒し閉店に取り組み、既存店舗の賃料も交渉により見直しました。アメリカでは賃貸契約の変更は非常に困難とされていましたが、この緊急事態を好機と捉えた交渉により成功しています。
さらに店舗運営の効率化も進めました。セルフレジやICタグの導入により、人件費削減と在庫管理の効率化を実現しました。こうした取り組みにより、粗利益率はコロナ禍前の2019年8月期に比べて8ポイント改善し、販売管理費も20%削減されています。
並行して不良在庫処分を進め、発注や販売期間の管理を強化しました。航空便を活用した売れ筋商品の追加投入による販売機会ロス低減にも取り組みました。
情報をうまく活用し、効率化して固定費を下げることで、収益率が劇的に改善したわけです。
その後、収益率を高められる基盤の整備によって、黒字を継続的に出していける体制が整ったと判断し、積極的な出店攻勢に出ています。
2022年2月時点でカナダに14店舗、米国に43店舗あった店舗数を、年30店の出店によって、5年後には200店舗に増やすという野心的な計画を掲げています。東海岸、西海岸の有力ショッピングセンターへの出店、グローバル旗艦店開設を進め、未出店の都市にも展開しブランドの存在感を高める戦略です。
さらに、店舗とECの連携も強化し、個別の顧客ニーズに沿った商品やサービスが提供できる環境整備も進めています。最終的には2027年8月期の売上高3,000億円、営業利益率20%を目指すという目標を設定しています。
この米国での成功体験は、「ブランディングの徹底とマーケティング強化」と「情報活用による固定費削減」という2つの柱を両立させることの重要性を示しています。トップラインの成長とボトムラインの改善を同時に追求するという、ユニクロの経営手法の有効性を示すものでした。そして、この実績が評価されて塚越氏はユニクロの社長に抜擢されることとなりました。
姉妹ブランド「GU」もユニクロと同じ戦略を取った結果…
米国市場の成功は、ユニクロの姉妹ブランドである「ジーユー(GU)」の海外展開にも影響を与えています。2024年9月にGUはニューヨークのソーホー地区に初の海外旗艦店をオープンし、約150人もの来店客が行列をつくる盛況ぶりを見せました。GUの柚木治社長は「ニューヨークで最も競争が激しいソーホーで認められれば、他の地域でも通用するはず」と展望しています。GUもユニクロと同じように、情報を徹底的に集め、活用する戦略を取っています。2022年10月から2024年7月まで期間限定店を営業してから、その結果を見て、2024年9月にオープンさせたのです。
期間限定店では当初、アジア人の来店客が多かったそうですが、2023年春から商品を欧米人向けのシルエットに切り替え始め、毎シーズン、フィッティングを繰り返して欧米人の体型に合うように調整した結果、来店客の人種に偏りがなくなったと言います。また、型数を数年前に比べて半数強に絞り込むことで、選びやすく組み合わせやすい環境を整えました。ムダなく、いいものを作ることで環境負荷の低減にもつなげています。
GUの米国進出はユニクロの経験から多くを学びつつも、より積極的なペースで進められています。柳井さんは「(米国では)ユニクロの10倍のスピードで成長してほしい」と期待を寄せており、今後の店舗拡大やブランド浸透が注目されています。 【次ページ】避けては通れないユニクロの海外展開、今後の課題は
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