- 2025/09/24 掲載
転落かっぱ寿司と何が違う…?スシローを「1兆円企業」に押し上げた“あの商品”(2/2)
イメージアップにつながり集客に貢献した「あのメニュー」
スシローは以前、黄色・赤色・黒色の3色皿で提供し、最低価格もそれぞれ税込み120円・180円・360円に設定していたが、2023年5月に時価で変化する「白皿」を導入し、黒皿を260円に値下げした。現在では商品によって価格のばらつきがあり、柔軟な価格設定となっている。フェアで高価格帯の商品を提供するのも恒例だ。2025年1月には1,120円~の「豊洲 天然本鮪6貫盛り」や880円~の「江戸前の匠すし5種盛り」を販売した。現在でも1,000円超の本鮪6貫盛りや500円超のえび4種盛りなどを提供している。
通常の握りは回転寿司らしい小さいサイズだが、高価格帯のメニューは”普通”のサイズだ。高価格帯メニューは集客効果だけでなく、品質イメージのアップにも貢献している。なお、税抜き100円商品の提供は2022年に終了した。現在でも100円で提供しているのは、はま寿司とかっぱ寿司である。
システム面では、2023年1月に発生した迷惑動画事件以降、回転レーンでの寿司の陳列を廃止した。同事件では、男性客がしょうゆ差しの注ぎ口をなめる様子を撮影した動画がSNSで拡散された。業界ではコロナ禍以降、寿司レーンでの陳列を廃止する流れが起きていたが、事件以降に加速した。スシローではタッチパネル注文を基本とし、大型パネルで回転寿司を再現した「デジロー」の導入も進めている。
海外でも出店数最多。現地で高評価を得ている理由とは
海外店舗数も4社の中では最も多く、2025年6月末時点で「スシロー」ブランドの店舗を212店展開している。2011年に海外1号店を韓国に出店し、2018・2019年に台湾、香港、シンガポールに進出。2021年には中国本土やタイにも進出した。その後、インドネシアやマレーシアにも出店している。海外店のおよそ7割が中華圏に集中している。中華圏での価格設定は日本よりやや高めだ。台湾では握り1皿の最低価格を40台湾ドル(195円)に、中国本土では10元(207円)に設定している。中国における客単価は2,000円程度で、同じく現地に進出している元気寿司やはま寿司より2割程度高い。200店舗超を展開する現地企業のチェーンがいくつか存在するが、彼らよりも2~3倍程度高めだ。スシローは中華圏で国内と同様、品質や品質に対するコスパの良さが評価されており、高価格設定が強みとなっている。
時価総額1兆円の回復は…「〇〇次第」
国内外で店舗数トップのスシローだが、国内の店舗数は「はま寿司」に追い抜かれようとしている。前述の通り、はま寿司は一部メニューで税抜き100円をキープしており、割安感が注目されたと思われる。スシローは品質面が評価されているが、低価格帯のメニューではま寿司との差が感じられない。国内は今期6店舗しか増えておらず、出店の余地が残っていないことが分かる。2025年9月期は値上げによる客単価の増加で増収増益の見込みだが、近い将来に人口減少が足かせとなるだろう。
今後を占う上で、やはり海外事業の動向が業績と株価を左右することになる。中華圏では品質面が評価されているが、現地勢のライバルが多く景気が不安定である。購買力などのポテンシャルが大きいのは北米だ。スシローは現時点で北米に進出しておらず、近い将来に出店する方針だ。競合のくら寿司は中国本土から撤退する方針だが、北米ではすでに70店舗超を展開しており、売上の10%強を占める。スシローの時価総額が再び1兆円を超えるかどうかは、北米事業次第と言えるかもしれない。
流通・小売業界のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR