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- 2025/10/27 掲載
もはや「話し方」にもAI格差が……進化した“AIコーチ”でプレゼン・面接も怖くない
英大学院修了後、RPA企業に勤務。大手通信社シンガポール支局で経済・テクノロジーの取材・執筆を担当。その後、Livit Singaporeでクライアント企業のメディア戦略とコンテンツ制作を支援(主にドローン/AI領域)。2026年2月、シンガポールで「SimplyPNG」を設立し、AI画像編集のモデル運用とGPUコスト最適化を手がける。主にEC向け画像処理ワークフローの設計・運用自動化に注力。
スピーチ恐怖症は死や蜘蛛、高所恐怖症を上回る悩み
「グロッソフォビア(Glossophobia)」、通称パブリックスピーキング恐怖症(=スピーチ恐怖症)は、世界人口の15~30%が何らかの形で抱えている恐怖症の1つ。これは、死や蜘蛛、高所恐怖症を上回る数値だ。また、英国の学生を対象とした調査では、実に80%が口頭発表を「社会不安の原因」として挙げている。さらに、パブリックスピーキング恐怖症を抱える10%が「日常生活や仕事、社会的機能に支障をきたすレベル」にある状況も無視できない。職場でのプレゼンテーション、授業での質問応答、知らない相手への電話、自己紹介など、日常の場面で緊張してしまう人にとっても、対策は欠かせない。
そんな中で注目されているのがAIだ。エストニア発のスタートアップから日本の就活支援企業まで、さまざまなアプローチでコミュニケーション改善を支援するAIツールが登場している。
しかも最近のAIは、ただ声を録音して壁打ち練習するだけじゃない。声の震えや話すスピード、間の取り方まで分析してくれたり、オンライン会議の最中にこっそりアドバイスしてくれたりと、「そんなことまで?」と思うようなツールが次々と登場しているのだ。
声の“自信度”を数値化!16万人が使うAIコーチ
まず、この分野の注目株の1つはエストニア・タリンから生まれたAI音声コーチングアプリ「Vocal Image」だ。400万ダウンロードを達成し、月間アクティブユーザーは16万人。従来の高額な個人レッスンに代わる選択肢として急成長を遂げている。創業者でCEOのニック・ラホイカ氏自身の体験が、このサービスの原点にある。「学校で滑舌が悪いといじめられていた」というラホイカ氏は、20代前半の頃、ボイスコーチのマリーナ・シュキウラヴァ氏との出会いで人生が変わった。「声とコミュニケーションは訓練できる」。この気づきが、後に多くの人を救うアプリへと結実する。
使い方はシンプルだ。まず30~60秒の音声を録音すると、AIが音程、音量、明瞭さ、自信度などを分析。100万件以上の音声データベースと比較し、「聴衆の何%があなたの声を『自信がある』と感じるか」を数値化する。その後、個人に最適化された5~10の短いレッスンが日々提供される仕組みだ。
舌のエクササイズ、呼吸法、姿勢指導、ジェスチャーのヒントなど、内容は多岐にわたる。各レッスンはリアルタイムのフィードバックを組み込んでおり、特定の発声目標を達成しないと次に進めない設計となっている。「自宅で変な動きや音を出しても安全」というラホイカ氏の言葉通り、周りの目を気にせず練習できる環境を実現した。
同アプリの「Voice Rating」というコミュニティ機能も特徴の1つ。ユーザーが音声を投稿し、ほかのユーザーが「自信がある」「子供っぽい」などの評価を付ける機能だ。毎日3万5000件の録音がこの方法でラベル付けされ、AIモデルの精度向上に貢献している。
対面レッスンに比べコストを大幅に抑えられる点は特筆に値する。7日間の無料トライアル後、月額12.99ドル(約2,000円)または年額79ドル(約1万1,700円)の有料プランに移行。現在、5万人の有料ユーザーが年間平均240ドル(約3万6,000円)を支払い、年間売上高は1,200万ドル(約18億円)に達しているという。
リーダーシップ向上、アクセント矯正、声の女性化・男性化、脳卒中からの回復支援など、提供プログラムは幅広い。2025年8月にはフランスのエドテック投資会社Educapitalが主導する360万ドル(約5億4,000万円)の資金調達に成功し、さらなる成長を目指す。
もちろん、AIを活用したコーチングアプリはこれだけではない。1人で練習するだけではなく、実際の会議中にあなたの話し方を“こっそり指導”してくれるAIも現れた。
【次ページ】会議中にAIが“こっそり指導”、リアルタイムで直せるAIコーチ
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