- 2025/10/27 掲載
もはや「話し方」にもAI格差が……進化した“AIコーチ”でプレゼン・面接も怖くない(2/3)
会議中にAIが“こっそり指導”、リアルタイムで直せるAIコーチ
個人練習型のVocal Imageに続き、次に注目されているのは、グーグル出身×アップル出身エンジニアが開発した“会議の最中にこっそり指導してくれる”AIツールだ。個人練習型のVocal Imageに対し、シアトルのスタートアップYoodliは「実戦での改善」という別のアプローチを取る。
2021年にグーグルの研究開発部門出身のヴァルン・プリ氏(同社CEO)とアップル出身のエシャ・ジョシ氏が開発したこのツールは、“会議中の秘密コーチ”として機能する。
最大の特徴は、実際のオンライン会議を録画し、即座にフィードバックを得られる「インスタントリプレイ」機能だ。Zoomなどでの1対1コーチングやプレゼンテーションを録画すると、終了後すぐにAIが分析結果を提示。ボディランゲージ、言葉選び、話すペース、「えー」「あのー」といったフィラーワードの使用頻度など、詳細な統計データとともに改善点を確認できる。
また2025年8月にはさらに革新的な「マルチプレイヤーモード」を発表した。AIが生成する顧客役やチームメイト役と一緒に、複雑な商談シナリオを練習する機能で、チーム全体での営業ロールプレイが可能になる。
分析項目は多岐にわたる。フィラーワードの使用頻度、話すスピード、声の明瞭さ、アイコンタクトの頻度、身振り手振りまで、AIが総合的にチェック。特に日本人ビジネスパーソンが苦手とする「間の取り方」や「抑揚の付け方」についても具体的な改善提案を行う。
企業での導入も進んでいる。Databricks、RingCentral、Snowflakeといった大手テック企業が営業チームの研修に活用。AIが生成するペルソナと会話練習を重ねることで、実際の商談での成功率向上を図っている。
2025年5月には1,370万ドル(約20億円)の資金調達に成功し、AIロールプレイ分野のリーダーとしての存在感を強めている。パブリックスピーキング団体のToastmasters Internationalやコンサルティング大手Korn Ferryとの提携も、その信頼性を裏付ける。
料金体系も明確だ。基本機能は無料で利用でき、より高度な分析や無制限の練習セッションを求めるユーザー向けには有料プランが用意されている。TEDxスピーカーや企業の幹部コーチなど、プロフェッショナルからの支持も厚い。Forbes、TechCrunch、NPRなど主要メディアでも取り上げられ、グローバルでの認知度も急上昇中だ。
日本発!「日本式面接」を熟知したAIコーチ
AIコーチング市場では、日本からも本格的なプレイヤーが登場している。教育研修事業を手掛けるジェイックが子会社エフィシエントと共同開発した「steach(スティーチ)」は、2022年5月のリリースから約3年で6万ダウンロードを突破。日本の就活事情に特化したアプローチで存在感を示す。
最大の特徴は、20年にわたる就職支援実績から生まれた「日本式面接」への深い理解である。「自信」「笑顔」「ボディランゲージ」「声の大きさ」「話すスピード」「伝わりやすさ」の6項目を5段階で評価するシステムは、日本企業が重視する要素を的確に捉えている。
使い方も直感的だ。アプリ内の質問に対して動画で回答すると、AIが音声と表情を同時に解析する。単に個人のスコアを表示するだけでなく、全利用者の平均ラインと合格ラインも示される。自分の立ち位置を客観的に把握できる仕組みは、相対評価を重視する日本の採用文化に合致したものだ。
「1人で気軽に面接練習ができて、客観的な評価がもらえる」というコンセプトも秀逸だ。日本の就活生が抱える「練習相手がいない」「恥ずかしくて人前で練習できない」という悩みに真正面から応えている。サービス開始から実施された練習回数は、65万回以上に達するという。
技術面でも着実な進化を遂げている。2023年には「平均・合格ライン診断」「スコアメダル表示」機能を追加。2024年には「自信解析AIエンジン」を実装し、より人間の感覚に近い評価を実現した。音声認識による文字起こし機能や、回答メモの表示機能など、実用的な機能も充実している。
メディアからの注目度も高い。2024年7月の「日経MJ」では「就活AI VS. 採用AI」という特集で取り上げられ、2025年6月の「読売新聞」でも「AIと就活」をテーマにした記事で紹介された。AIを活用した就職支援の代表例として認知が広がっている。 【次ページ】最新技術で表情も声も丸ごと解析、印象評価をしてくれるAIコーチ
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